香港のパンチョ先生の企画『みんなでブログを書こう!』第二弾に参加します。

台湾に来て早9年。振り返ってみると、一番頑張ってきたのは「台湾における日本語ディベートの普及」ということになるでしょうか。

台湾に来たときにはディベートのDの字も知らなかったのですが、勤務校が主催する日本語ディベート大会のしきりを担当することになってから、どっぷりとディベートにはまることになりました。その後は全國大專校院日語辯論比賽の立ち上げに協力したり、台湾南部の学生向けに一日辯論營を開催したり、日本人学校の中学生とディベート交流戦を行ったりと、一年の半分はディベート漬けの生活です。

ディベートの教育効果としては、「読む・書く・聞く・話す」という語学の四技能を総合的に伸ばす、論理的思考能力を育てる、文献調査能力を身に付ける、といった項目がよく挙げられます。しかし、ディベートにはもっと大きな魅力があります。それは、団体戦であるという点と、学習者の成長がわかりやすいという点です。

台湾では中学生や高校生の部活動が日本ほど盛んではありません。そのため、グループで長期間一つのことに取り組み、問題を解決していく、という経験を持つ学生は少数派です。台湾で行っている日本語ディベートは団体戦ですから、学生たちはその準備期間を通して「努力・友情・勝利」という某漫画雑誌のモットーのような熱血の世界を体験することができます。時には、練習試合や大会を通じて他校の選手と仲良くなり、負けたチームが「俺たちの分も闘ってくれ」と自分たちの資料を託す、といったような「好敵手と書いて“とも”と読む」みたいな場面も見られます。こういうシーンを見ると、元体育会系の一日本語教師は胸が熱くなったりするわけです。

また、ディベートの試合中というのは一種の極限状態でもあります。一度ディベートの試合を経験してみるとわかりますが、対戦相手の話を聞き取り、メモし、限られた時間の中で最も効果的な反駁を見つけ出す作業をしていると、自分の脳のクロック数がグッと上がるのを感じることができます。そして、極限状態は人を成長させます。一日辯論營では、各学生に最低二回はディベートの試合を体験させるのですが、一試合目と二試合目ではまるで別人のようにディベートが上手くなっています。学習者がみるみるうちに成長する、という体験は、ディベート以外になかなか見ることができるものではありません。

昨日をもって、今学年度の台湾のディベートシーズンは終了しました。台湾の日本語ディベート指導者は、来年に向けて暫しの休息です。一方、韓国では満を持して日本語ディベート大会が始まるそうです。これまで台湾以外ではほとんど行われることのなかった日本語学習者によるディベートですが、世界中の学習者が一堂に会して日本語で舌戦を繰り広げる日が来るのもそう遠くないかもしれません。精進しなければ。