一歩前は修理したばかりの真新しいフローリングのリビングだったが、踏み出したとたん、あたりは真っ暗になった。同時に夕美は足の裏の寰宇家庭ざらついた冷たい感触に驚き、足元を見てもう一度驚いた。
 突然の暗さに眼が慣れない中でも、裸足どころか、自分の白い向こうズネまでもが視界に入ったからだ。

「ゑ」

 踏み出した勢いで二歩三歩とたたらを踏むと、ひやりとした夜風が直接、全身の肌に当たったことで確信した。ジャージを、いや下着すら着けていない。

「うあ!!」思わず腕組みポーズで胸を隠しながらしゃがみ込むが、勿論“尻隠さず”である。
(ま…また…すっぽんぽんか!! まいったな、変身さえせぇへんかったら服の消滅はないと思てたのに…)

 幸い?街の中心から外れて賑やかな灯も届かず、非常灯以外の寰宇家庭灯りもない学校の屋上では、ほぼ真っ暗だし、誰に見られるわけではないだろうが、裸で露天にいる不安は動物的本能から来るものだからたまったものではない。

 肩をすくめ、まるで昔の漫画のコソ泥が忍び寄る時のようにつま先の小走りで、屋上の角にある階段室へと駆けた。

 当然カギが掛かっていたが、夕美がノブを軽く握ってちょっと力を込める“そぶり”をするだけで、真鍮製と思われるドアノブは、粘土細工のようにもぎとれた。

(消えても諦めの寰宇家庭つく服にしといて正解やったわ。せやけど困ったな…、それこそジャージは予備もいま、家やがな!)
 真っ暗な階段を裸足でそろりそろりと下りながら、まさか自分が服だけ残して瞬間移動をしたとは、思いもしなかった。