《現地調査・前編》
さて、ワタシが現地調査前に収拾した情報のあらましを記しておきます（これもネットで検索すると見つかります）。
この鋸南町にレジャーランドが出来たのが、１９５０（昭和２５）年ごろ。
当時、地元の観光協会町長だった平田未喜三氏が、その辣腕を奮って同地に勝山遊園地を開設しました。その後、水族館も併設、さらに小動物なども飼育するなど、順調に営業活動を展開していました。それに東海汽船が着目し、１９５３（昭和２８）年３月、同地にヘルスセンター、頼朝荘（同じ経営母体の宿泊施設。なお、勝山の海岸は源頼朝の上陸地点でも有名）などもオープンさせ、同社のフェリーもここに発着するなど、一大行楽施設となったのでした。
しかし、その後、海水浴・行楽客の動向の変化（船ではなく鉄道や観光バス、マイカーへの移行？）などにより徐々に客足が落ち、１９６０（昭和４０）年代に、その営業を終えたらしいのです（どの資料もオープンした年は記録されているんですが、閉鎖された正確な時期は未だに判明していません。この辺の推察は後述）。
また、ここの施設は、みな軽便な構造（移動遊園地と同様？）だったようで、現地で解体されたりして今では何も残されておらず、数年前まで頼朝荘だけが残っていた（？）ようです。
現地に到着しますと、思っていたより大きな砂浜が目に入りました。これが勝山海水浴場です。
すでに海水浴シーズンが終えていることもあって、その広さに反して、釣り客などを散見するだけで寂しい印象でした。
まず、遊園地の場所などを特定します。
遊園地があったと思われるのが、下の地図の薄い赤で囲った大黒山の北側のエリア。
現在は、道の両側に民宿やお土産屋さんなどが営業を続けているようですが、閉業したり空き家も目立ちます。
過去の航空写真を見ると、戦後間もなく（１９４６年米軍撮影）は大黒山と佐久間川の間には建物は無く、道も人が通る程度だったものだと推測されます。
その後、１９６８年の写真では、埋め立てと共に道路も整備され、その両側に現在の様な家並みが形成されていたようですが、年代的にココに移っている建物群は勝山遊園地の建物の可能性も否定できません。
と言うことは、竜宮城が閉鎖されてから埋め立てられて、家が建ち始めてきたということなんでしょうね。
何はともあれ、地元の年配者に聞くしかありません。
１人目は自転車に乗った初老の男性。
辛うじて当時のことを覚えていまして、プリントした写真を見せますと、観覧車の位置などを教えてくれました。
「観覧車がどこにあったか分かりますか」との問いに、「向こうに（大きな）橋が見えるだろ。あの向こう側にあったはずだよ」とのコトでした。
この時点では、内心「いきなり有力な情報を得られたので、これは幸先いいなぁ〜」と思っていたのです。
それに気を良くして、遊園地と併設されていた宿泊施設の「頼朝荘」の位置を訪ねると、「あそこに見える（大きな）橋を渡って行き止りになるから、そこを右に折れると、その先にあったはずだけどなぁ」と、おぼろげながら情報を聞き出すことが出来ました。
その後、写真��の位置を特定するべく、前出の見取り図の「小山」書かれているあたりにある、ちょっとした高台に登ろうとしました。
すると、その脇で初老の男性が一輪車のタイヤに空気を入れようとしていて、怪しい動きをしている（笑）ワタシたちに「何をしているんだい？」と声をかけてきました。
この人が２人目の聞き取り相手でした（結果的に、この方に偶然会えたことが、その後の調査の大きな収穫となったのでした）。
「この辺に、昔、遊園地があったと聞いて調べているんですが、何かご存知ですか？」
「ああ、知っているよ。昔は大勢の人が来て賑やかだったよ」
当時のコトを知っている様な返答だったので、単刀直入に「その遊園地に観覧車があったはずなんですが、何処ら辺にあったかご存知ですか？」
「今、クルマが停まっているだろ、そこら辺にあったはずだよ」と、目の前の空き地を指差しました。
でも、１人目の男性は「橋の向こう側にあった」と言っていたのですが…！？
で、写真��と写真��を見せて、小高い岩の右側に観覧車が写っていることを質すと「いや、橋の向こうには無かったよ。この辺で間違いない」と念を押されてしまいました。
仮に、この２人目の男性の言うコトが正しければ写真��、写真��と写真��との観覧車との位置の整合性が無くなる…！？
と言うか、２人の話を真に受ければ、観覧車が２カ所に存在したことになります。
う〜む、謎は解けるどころか深まってしまった…。
そんなワタシの内心の葛藤をよそに、男性は、なおも話し続けます。
「（竜宮城）水族館は、ほらあそこ。軽自動車が停まっているだろ（と、道路の北東方面を指し示しました。前出の地図参照）。あの右側にあったんだよ。その跡地はウチが使っているけどね。中に水族館の面影が残っているけど見るかい？」
なっ、なんと！！！
願ってもない申し出に２人で「お願いします」。
鍵を取ってくると言うので、２人で倉庫兼作業場になっているトコロまで移動。
すると道の脇に鋸南町が建てたと思われる観光案内板を発見。
看板自体は小さくて、徒歩でないと見逃しそう。
何が書いてあるかは写真を参照していただくとして、しっかり竜宮城のイラストも彫られていました。
それを繁々と見ていたら、さっきの男性が「あぁ、この看板な。３〜４年前に町が建てたんだよ。でも看板を立てただけで、あとはほったらかしだなぁ〜」と教えてくれました。
そして、倉庫兼作業場までの道すがら「オレは元々東京の出なんだけど、こっちに会社があったから若いころから、よくこっちに来ていたんだ。一番の最盛期だったのが（昭和）３０年代中頃だったらしいよ。なにしろ海水浴客が多くて、物凄い人出だったって。その後、東海汽船も経営に加わったから、もっと規模がでかくなった。あの森永（製菓？）とかも、ココに出資していたって聞いたよ。でも、海水浴って今はそう行かないだろ。昔もそうさ。だんだん客足が落ちてきてね…。夏は良いんだよ、黙っても客が来るからさ。でも冬は全然だめ。だから、せっかくの遊具施設も使わないから、次のシーズンには錆びて動かなくなっちゃう。海風で錆だらけ。で、結局、翌年のシーズン前に機械そのものを更新するとか、補修をするんだけど、収入に見合わないから無くなるものも出て来て、年を追う毎に施設の規模が小さくなってくる。だからまた客が来なくなる…。そんな感じさ」と問わず語りで話してくれました。
３人は問題の物件の前に到着。
さっきこの前を通過したのですが、よもや、こんなトコロに遺跡が残されていたとは…！！！
男性のあとに続き、階段を上がりドアのカギを開けてもらい、中に入れていただきました。
倉庫兼作業場は（失礼ながら、かなり雑然とした感じ）足の踏み場にも困るほどでしたが、まず男性が指し示したのが右手にあった作業台（？）。
「これが、魚なんかを入れてあった水槽の土台」と男性。
「？？？？？？？」
「等間隔に間仕切りの様なモノがあるだろ。そこにガラスが入っていて、お客に見せていたみたいだよ」と男性。
確かに正面にガラスを入れれば、水槽に見えなくもありません。
また水槽の脇には海水を出し入れしていたと言う配管跡も僅かに残っていました。
「地元の漁師の協力で、珍しい魚が捕れたらココに入れるようになっていたらしいよ。でも、昔は海水用のポンプが無くて、淡水用で間に合わせていたから錆びて直ぐにダメになっちゃう。で、結局上に大きな海水タンクを作って、毎日運んで来て循環させていたんだ」。
そして「ほら、これ」と教えてくれたのが、水槽の柱に残っていた瘡蓋みたいなもの。
「なんですか、コレ？」
「ほら、水槽だから、海の感じを演出したくて水色に塗ったんだろうね。そのペンキが残っているんだよ、あちこちに」。
確かに、ボロボロだけど青系のペンキの欠けらで、水槽のそこかしこに残されていました。
いちいち感嘆の声を上げているワタシたちを尻目に、男性は「この天井の梁もコンクリート製で、当時のものだよ。あまり良いセメントを使っていないから、ここで作業をしているとボロボロ落ちてくるんだ。砂も海砂かも知れないなぁ」と苦笑い。
その水槽の奥には、水槽の上にある海水タンクへ上がるため（？）の階段（岩肌を直接彫り込んだ）も残されていました。
さらに左手の作業台を指差して、「こっちにも水槽があってね。水槽と言っても家庭用のガラス製の特大のヤツだけどね。それが幾つも置いてあったんだってさ」。
当然、ここにもペンキの跡がしっかり残っていました。
実は、この倉庫と作業所は借り受けているそうです。
なぜかと言えば、この一帯は国定公園に指定されていまして、国定公園の法律の施行前の建築物は事実上容認されていますが、新築することは許されなくて、結局、元の構造物を活かしつつ補修するしかないとの由。
だから、コンクリートで出来た水族館跡が倉庫兼作業所に形を変えて、今もなお生き永らえたのかも知れません。
ちなみに、この水族館跡が立っている区域は「大黒山海蝕洞窟」と言うことで、見上げると山の岩肌が大きくえぐれていまして、その地勢を上手く使って海底のイメージを連想させたのでしょうね。
また水族館があった頃は、今のように藤の蔦などに覆われておらず、岩肌がもっと良く見えたそうです。
話は逸れますが、その後、鋸南町の図書館で資料を探した際、『目で見る館山・鴨川・安房の１００年』と言う書籍のなかに掲載されていた写真がコレです（写真は同書から複写）。
撮影は１９６０（昭和３０）年ごろ。
竜宮城（水族館の入口）の後ろには、大きくえぐられた岩盤がハッキリと写っていました。これによれば水族館のすぐ前を細い道路が通っていて、海岸線も間近にあったようです。
写真のキャプションには「大黒山海蝕洞窟にあった水族館（鋸南町・昭和３０年ごろ）」とありました。
この写真と、さっきの倉庫の入り口の写真とを見比べると、かつてここに竜宮城の建物があったことが分かると思います。
ここまでの情報を整理したのが、以下の見取り図です。
この時点では観覧車が２カ所に存在したことになっています（笑。
承前。
で…男性の好意で、水族館跡の上に残っていると言う海水の貯水槽も見せてくれると言うので、迷路の様な階段を上がって最上階（？）へ。
海水貯水槽跡には、バケツなどの荷物が入っていて全貌は明らかになりませんでしたが、男性は「タンクと言っても小さくて、１トンぐらいしか入らないんじゃないかな。ほら配管を見てみな、鉄製で錆びているだろ。当時は塩ビ管なんてなかったんだろうね。ポンプもダメ、配管もダメなんじゃ、直ぐ水も汲めなくなっちゃう」と笑っていました。
そして「この後ろにある自然窟も当時は出入りできたみたいだよ。崩落防止のネットも無かったから、見通しは良かったはずだ」と、小さな素掘りトンネルを指し示しました。
ａｔｔａｎさんも覗いていましたが、「確かに向こう（勝山漁港側）の海が見えた」と申しておりました。
また柱には、見学の順路を示したのでしょうか？
矢印の跡（？）も残されていました。
当初、何も現地には残っていないと思い込んでいたのですが、２人は、この予想もしていなかった遺構の発見にちょっと喜色ばんでいました。
すると、「実は、遊園地関係の施設の遺構が残っているのは、この水族館跡だけじゃないんだ…」と、男性がポツリと言いました。
Ｔｏ ｂｅ ｃｏｎｔｉｎｕｅｄ…
当時、地元の観光協会町長だった平田未喜三氏が、その辣腕を奮って同地に勝山遊園地を開設しました。その後、水族館も併設、さらに小動物なども飼育するなど、順調に営業活動を展開していました。それに東海汽船が着目し、１９５３（昭和２８）年３月、同地にヘルスセンター、頼朝荘（同じ経営母体の宿泊施設。なお、勝山の海岸は源頼朝の上陸地点でも有名）などもオープンさせ、同社のフェリーもここに発着するなど、一大行楽施設となったのでした。
しかし、その後、海水浴・行楽客の動向の変化（船ではなく鉄道や観光バス、マイカーへの移行？）などにより徐々に客足が落ち、１９６０（昭和４０）年代に、その営業を終えたらしいのです（どの資料もオープンした年は記録されているんですが、閉鎖された正確な時期は未だに判明していません。この辺の推察は後述）。
また、ここの施設は、みな軽便な構造（移動遊園地と同様？）だったようで、現地で解体されたりして今では何も残されておらず、数年前まで頼朝荘だけが残っていた（？）ようです。
現地に到着しますと、思っていたより大きな砂浜が目に入りました。これが勝山海水浴場です。
すでに海水浴シーズンが終えていることもあって、その広さに反して、釣り客などを散見するだけで寂しい印象でした。
まず、遊園地の場所などを特定します。
遊園地があったと思われるのが、下の地図の薄い赤で囲った大黒山の北側のエリア。
現在は、道の両側に民宿やお土産屋さんなどが営業を続けているようですが、閉業したり空き家も目立ちます。
過去の航空写真を見ると、戦後間もなく（１９４６年米軍撮影）は大黒山と佐久間川の間には建物は無く、道も人が通る程度だったものだと推測されます。
その後、１９６８年の写真では、埋め立てと共に道路も整備され、その両側に現在の様な家並みが形成されていたようですが、年代的にココに移っている建物群は勝山遊園地の建物の可能性も否定できません。
と言うことは、竜宮城が閉鎖されてから埋め立てられて、家が建ち始めてきたということなんでしょうね。
何はともあれ、地元の年配者に聞くしかありません。
１人目は自転車に乗った初老の男性。
辛うじて当時のことを覚えていまして、プリントした写真を見せますと、観覧車の位置などを教えてくれました。
「観覧車がどこにあったか分かりますか」との問いに、「向こうに（大きな）橋が見えるだろ。あの向こう側にあったはずだよ」とのコトでした。
この時点では、内心「いきなり有力な情報を得られたので、これは幸先いいなぁ〜」と思っていたのです。
それに気を良くして、遊園地と併設されていた宿泊施設の「頼朝荘」の位置を訪ねると、「あそこに見える（大きな）橋を渡って行き止りになるから、そこを右に折れると、その先にあったはずだけどなぁ」と、おぼろげながら情報を聞き出すことが出来ました。
その後、写真��の位置を特定するべく、前出の見取り図の「小山」書かれているあたりにある、ちょっとした高台に登ろうとしました。
すると、その脇で初老の男性が一輪車のタイヤに空気を入れようとしていて、怪しい動きをしている（笑）ワタシたちに「何をしているんだい？」と声をかけてきました。
この人が２人目の聞き取り相手でした（結果的に、この方に偶然会えたことが、その後の調査の大きな収穫となったのでした）。
「この辺に、昔、遊園地があったと聞いて調べているんですが、何かご存知ですか？」
「ああ、知っているよ。昔は大勢の人が来て賑やかだったよ」
当時のコトを知っている様な返答だったので、単刀直入に「その遊園地に観覧車があったはずなんですが、何処ら辺にあったかご存知ですか？」
「今、クルマが停まっているだろ、そこら辺にあったはずだよ」と、目の前の空き地を指差しました。
でも、１人目の男性は「橋の向こう側にあった」と言っていたのですが…！？
で、写真��と写真��を見せて、小高い岩の右側に観覧車が写っていることを質すと「いや、橋の向こうには無かったよ。この辺で間違いない」と念を押されてしまいました。
仮に、この２人目の男性の言うコトが正しければ写真��、写真��と写真��との観覧車との位置の整合性が無くなる…！？
と言うか、２人の話を真に受ければ、観覧車が２カ所に存在したことになります。
う〜む、謎は解けるどころか深まってしまった…。
そんなワタシの内心の葛藤をよそに、男性は、なおも話し続けます。
「（竜宮城）水族館は、ほらあそこ。軽自動車が停まっているだろ（と、道路の北東方面を指し示しました。前出の地図参照）。あの右側にあったんだよ。その跡地はウチが使っているけどね。中に水族館の面影が残っているけど見るかい？」
なっ、なんと！！！
願ってもない申し出に２人で「お願いします」。
鍵を取ってくると言うので、２人で倉庫兼作業場になっているトコロまで移動。
すると道の脇に鋸南町が建てたと思われる観光案内板を発見。
看板自体は小さくて、徒歩でないと見逃しそう。
何が書いてあるかは写真を参照していただくとして、しっかり竜宮城のイラストも彫られていました。
それを繁々と見ていたら、さっきの男性が「あぁ、この看板な。３〜４年前に町が建てたんだよ。でも看板を立てただけで、あとはほったらかしだなぁ〜」と教えてくれました。
そして、倉庫兼作業場までの道すがら「オレは元々東京の出なんだけど、こっちに会社があったから若いころから、よくこっちに来ていたんだ。一番の最盛期だったのが（昭和）３０年代中頃だったらしいよ。なにしろ海水浴客が多くて、物凄い人出だったって。その後、東海汽船も経営に加わったから、もっと規模がでかくなった。あの森永（製菓？）とかも、ココに出資していたって聞いたよ。でも、海水浴って今はそう行かないだろ。昔もそうさ。だんだん客足が落ちてきてね…。夏は良いんだよ、黙っても客が来るからさ。でも冬は全然だめ。だから、せっかくの遊具施設も使わないから、次のシーズンには錆びて動かなくなっちゃう。海風で錆だらけ。で、結局、翌年のシーズン前に機械そのものを更新するとか、補修をするんだけど、収入に見合わないから無くなるものも出て来て、年を追う毎に施設の規模が小さくなってくる。だからまた客が来なくなる…。そんな感じさ」と問わず語りで話してくれました。
３人は問題の物件の前に到着。
さっきこの前を通過したのですが、よもや、こんなトコロに遺跡が残されていたとは…！！！
男性のあとに続き、階段を上がりドアのカギを開けてもらい、中に入れていただきました。
倉庫兼作業場は（失礼ながら、かなり雑然とした感じ）足の踏み場にも困るほどでしたが、まず男性が指し示したのが右手にあった作業台（？）。
「これが、魚なんかを入れてあった水槽の土台」と男性。
「？？？？？？？」
「等間隔に間仕切りの様なモノがあるだろ。そこにガラスが入っていて、お客に見せていたみたいだよ」と男性。
確かに正面にガラスを入れれば、水槽に見えなくもありません。
また水槽の脇には海水を出し入れしていたと言う配管跡も僅かに残っていました。
「地元の漁師の協力で、珍しい魚が捕れたらココに入れるようになっていたらしいよ。でも、昔は海水用のポンプが無くて、淡水用で間に合わせていたから錆びて直ぐにダメになっちゃう。で、結局上に大きな海水タンクを作って、毎日運んで来て循環させていたんだ」。
そして「ほら、これ」と教えてくれたのが、水槽の柱に残っていた瘡蓋みたいなもの。
「なんですか、コレ？」
「ほら、水槽だから、海の感じを演出したくて水色に塗ったんだろうね。そのペンキが残っているんだよ、あちこちに」。
確かに、ボロボロだけど青系のペンキの欠けらで、水槽のそこかしこに残されていました。
いちいち感嘆の声を上げているワタシたちを尻目に、男性は「この天井の梁もコンクリート製で、当時のものだよ。あまり良いセメントを使っていないから、ここで作業をしているとボロボロ落ちてくるんだ。砂も海砂かも知れないなぁ」と苦笑い。
その水槽の奥には、水槽の上にある海水タンクへ上がるため（？）の階段（岩肌を直接彫り込んだ）も残されていました。
さらに左手の作業台を指差して、「こっちにも水槽があってね。水槽と言っても家庭用のガラス製の特大のヤツだけどね。それが幾つも置いてあったんだってさ」。
当然、ここにもペンキの跡がしっかり残っていました。
実は、この倉庫と作業所は借り受けているそうです。
なぜかと言えば、この一帯は国定公園に指定されていまして、国定公園の法律の施行前の建築物は事実上容認されていますが、新築することは許されなくて、結局、元の構造物を活かしつつ補修するしかないとの由。
だから、コンクリートで出来た水族館跡が倉庫兼作業所に形を変えて、今もなお生き永らえたのかも知れません。
ちなみに、この水族館跡が立っている区域は「大黒山海蝕洞窟」と言うことで、見上げると山の岩肌が大きくえぐれていまして、その地勢を上手く使って海底のイメージを連想させたのでしょうね。
また水族館があった頃は、今のように藤の蔦などに覆われておらず、岩肌がもっと良く見えたそうです。
話は逸れますが、その後、鋸南町の図書館で資料を探した際、『目で見る館山・鴨川・安房の１００年』と言う書籍のなかに掲載されていた写真がコレです（写真は同書から複写）。
撮影は１９６０（昭和３０）年ごろ。
竜宮城（水族館の入口）の後ろには、大きくえぐられた岩盤がハッキリと写っていました。これによれば水族館のすぐ前を細い道路が通っていて、海岸線も間近にあったようです。
写真のキャプションには「大黒山海蝕洞窟にあった水族館（鋸南町・昭和３０年ごろ）」とありました。
この写真と、さっきの倉庫の入り口の写真とを見比べると、かつてここに竜宮城の建物があったことが分かると思います。
ここまでの情報を整理したのが、以下の見取り図です。
この時点では観覧車が２カ所に存在したことになっています（笑。
承前。
で…男性の好意で、水族館跡の上に残っていると言う海水の貯水槽も見せてくれると言うので、迷路の様な階段を上がって最上階（？）へ。
海水貯水槽跡には、バケツなどの荷物が入っていて全貌は明らかになりませんでしたが、男性は「タンクと言っても小さくて、１トンぐらいしか入らないんじゃないかな。ほら配管を見てみな、鉄製で錆びているだろ。当時は塩ビ管なんてなかったんだろうね。ポンプもダメ、配管もダメなんじゃ、直ぐ水も汲めなくなっちゃう」と笑っていました。
そして「この後ろにある自然窟も当時は出入りできたみたいだよ。崩落防止のネットも無かったから、見通しは良かったはずだ」と、小さな素掘りトンネルを指し示しました。
ａｔｔａｎさんも覗いていましたが、「確かに向こう（勝山漁港側）の海が見えた」と申しておりました。
また柱には、見学の順路を示したのでしょうか？
矢印の跡（？）も残されていました。
当初、何も現地には残っていないと思い込んでいたのですが、２人は、この予想もしていなかった遺構の発見にちょっと喜色ばんでいました。
すると、「実は、遊園地関係の施設の遺構が残っているのは、この水族館跡だけじゃないんだ…」と、男性がポツリと言いました。
Ｔｏ ｂｅ ｃｏｎｔｉｎｕｅｄ…
覚えているも何も、聞いた直後にまとめてあったからに他なりません。
今じゃ、ワタシもほとんど覚えていないっす（笑。
ワタシャ、話すのも好きですが、何気に聞き上手なんですよ。
それも年配者に好評なくらい（でも若いオネ〜ちゃんは相手にしてくれない…）ですから。
＞トンカツ…
別の情報提供者によると町内の蕎麦屋の主人も何気に詳しいとか…！？
やっぱり町ぐるみで画策しているのかも（爆。
でわでわ〜。