「きみのほうはどんな一日だった?」
 セ?ネドラは険悪な目つきでガリオンを見つめた。「よくもそんな無神経なことがきけるわね」
 ガリオンは目をぱちくりさせた。
「さあ、教えて。いつわたしはお払い箱にされて、金髪の牝豚が後がまにすわり、はなたれのアローンのガキどもが城塞全体にみちあふれることになるの?」
「いったい――?」
01

「陛下はお忘れのようね、わたしたちが婚約したとき、わたしの首にかけてくれた贈物のことを。ベルダランの護符にどんな力があるかもお忘れのようだわ」
 ガリオンは急に思いだした。「あ、そうだった」
「おあいにくさま、護符ははずれませんからね」セ?ネドラはかみつくように言った。「次の奥さんにあげることはできないわよ――わたしの首をきりおとしでもしないかぎりはね」
「やめないか」
「おおせのとおりに。わたしを船でトルネドラに送り返すつもりだったの――それとも正門から雨のなかへ追い出されて、自分のことは自分でやれというわけ?」
「それじゃ、ぼくとブランドの話し合いをきいたんだね」
「あたりまえよ」
「一部をきいたのなら、全部最後まできいたんだろうな。ブランドはくだらない狂信者グループのばかげた考えによって、きみに危険がおよぶことを報告していただけじゃないか」
「かれの言うことに耳をかすべきじゃなかったんだわ」
「だれかがきみを殺そうとしているかもしれないと警告しようとしているのにか? セ?ネドラ、ふざけちゃいけない」
「つまりはこういうことでしょ、ガリオン」セ?ネドラは非難がましく言った。「いまやあなたはいつでも好きなときにわたしを追い出せるとわかったわけよ。長い金髪のおさげ髪に発育しすぎの胸をした、頭のからっぽなアローンの娘たちにあなたが色目をつかっているのを見たことがあるのよ。さあ、チャンス到来じゃない、ガリオン。どの子を選ぶの?」
「つっかかるのはそれでおしまいかい?」
 セ?ネドラの目が細まった。「わかったわ、わたしは子供ができないだけじゃなく、ヒステリーでもあるのよ」
「そうじゃないさ、きみはただときどき聞きわけがなくなるだけだ」
「聞きわけがなくなる?」
「だれでもたまにはそうなる」ガリオンは落ち着いて付け加えた。「それが人間というものだ。きみが物を投げつけていないのにはちょっとおどろいたくらいだよ」
 セ?ネドラは隅にちらばっているこわれた破片のほうを、うしろめたそうにすばやくながめた。
「そうか」ガリオンはその視線をたどった。「それはもうすんだんだ。ここにいなくてよかったよ。飛んでくる瀬戸物をよけたり、相手が金切り声で悪態をついたりしているときに、相手をなだめようとするのはむずかしいからね」
 セ?ネドラはちょっと赤くなった。
「悪態もついたんだな? あんな言葉をどこでおぼえたのかとときどきふしぎに思うよ。どうやってああいう言葉の意味をつきとめた?」
「あなたはしょっちゅう悪態をついてるじゃないの」
「わかってる」ガリオンはすなおに言った。「たしかに不公平だ。ぼくはいいのに、きみはいけないというのはね」
「だれがそんなルールをつくったのか知りたいもんだわ」セ?ネドラは言いかけて、目を細めた。「話題を変えようとしているわね」
「いや、セ?ネドラ、ほかの話をしてもはじまらない。きみは不妊症じゃないし、ぼくはきみと離婚するつもりはない、ほかのだに長くても、どんなに胸が――いや、なんでもない」
 セ?ネドラはガリオンを見た。「ああ、ガリオン、もしそうだったら?」彼女は小さな声で言った。「つまり、子供のできない体だったら?」
「ばかばかしい、セ?ネドラ。その話はもうよそう」
 しかしリヴァの王妃の目に浮かんでいる疑念は、たとえかれらがその話をしなくても、彼女がそれを気にしつづけることをきわめて明瞭に物語っていた。