僕は、手のひらに空気栓を持っている。
ビーチボールとか浮き輪についている、空気を吹き込むためのアレだ。

この小っちゃいのが、僕の願いを叶えてくれるらしい。



「あなた、他人が羨ましいと思ったことはありませんか?」

道を歩いていて、男に声をかけられた。
恰幅がよく、黒いスーツを着ていて、やけに(悪いほうに)印象に残るニヤニヤ笑い。
年齢は・・・若くはないようだけど、見た目からではよくわからなかった。

「ウホホーッホッホッ、いいんですよみなまで言わなくても。
これを差し上げます。
きっとあなたの役に立つでしょう」

そういって、なにやら小さいものを僕の手に乗せた。
・・・空気栓?

「服の上からではダメですよ、直接肌に付けてくださいね。
ではごきげんよう」

使い方の説明だろうか。
それだけ言って、男が立ち去ろうとする。

お代は?と聞くと、

「次に会ったときで結構ですよ」

とのことだ。
次なんて、いつ会えるかわかんないのに。

使い方は聞いたけど、使うとどうなるかは聞きそびれてしまった。
まあこんなもの、普通に考えればイタズラかなにかなんだろうけど、妙に気になる。
棄ててもいいんだけど、それは試してからでもいいか。


公園の前を通りかかる。
遊具も何もない、座るところがあるだけの狭い空間だ。
普段は人気など全然ない寂れたところだが、今日は一人の若い女がいた。

女っていいよな、顔が可愛ければいろいろと得だろうし・・・。

そこでさっきの男のセリフを思い出す。

『他人が羨ましいと思ったら、ちょっと代わってもらえばいいんですよ』

手にした空気栓見つめる。
これを使えば、代わってもらえるのか・・・?

僕は、何とはなしにそちらに足を向けた。
使えば何が起こるのかも知りたい。

彼女は膝丈くらいの円柱型のオブジェに腰掛け、タバコを吹かしている。
ローライズのパンツを穿き、前かがみになっているので、腰が丸見えだった。
ちら、と下着も見えている。

公園の奥のゴミ箱に向かうふりをして、彼女の横を通り過ぎた。
彼女は一瞥をくれたが、すぐに視線を戻す。

僕はそのスキに、彼女の腰に空気栓を取り付けた。

ぺと

すぐさま栓を抜く。

シュッ

空気が漏れる音がした。

何かされたと気づいた彼女が、こちらをキッと睨み、抗議する。
「ちょっとあんた、今なにかした!?」
「え・・・いや、別になにも・・・」
「痴漢なら、ケーサツに突き出すからね」

僕は彼女の剣幕をかわしながら観察する。
彼女の腰を見て、そこに釘付けになった。

腰の肉がたるんでる・・・?
いや、その部分の空気が抜けて、しぼんでるのだ。

ガクッ
「うぁ!?」

支えきれなくなり、彼女が崩れる。
「え、なに?あんた何をしたの!?」

そう言いながら、腰に手を伸ばす。

僕は栓を取られないよう、その手を掴む。
そして、手のひらから肘にかけて、一気にしごいた。

ぺしゃ、とその手が潰れて平べったくなる。
そのかわり、その分の空気が二の腕に移ってプクッと膨れた。

「いやぁ!」
それを見てびっくりした彼女が声を上げる

僕は構わず、もう片方の腕にも同じことをした。

潰れた腕は、力が入らないらしく、自由に動かせなくなる。
これで邪魔はできまい。

「ちょっと、どうなってるの?
・・・何が起きてるの?」

それには答えず、今度は彼女の頭を掴む。
そして押し潰した。

シゥ・・・ゥ・・・

「あ・・・ちょっとやだ、やめ・・・ぇ・・・・・・ぁ・・・・・・」

彼女の頭の空気を抜く。
くしゃくしゃになる頃には、静かになった。

あとは体に残ってる空気を抜くだけだ。
僕は彼女の体を折りたたみ、浮き輪から空気を抜く要領で抜く。

シュー・・・

漏れてくる空気は、女の子のいい匂いがした。

やがて全ての空気が抜け、彼女はくしゃくしゃになる。
僕はそれを丸めてカバンに入れ、何食わぬ顔をしてその場を離れた。


自宅に戻る。
丸めた彼女をカバンから取り出し、床に広げる。

彼女は、シワシワのペッタンコだ。

他人が羨ましいなら代わってもらえ・・・。

あの男はそう言った。
僕が、この女の子に代わってもらえるということだろう。

この状況からして、この皮を着れば僕はこの女の子になれるということだ。

早速、彼女から服を剥ぎ、皮をつぶさに観察する。
しかし、どうやって着るのかわからない。
切れ目とか穴とか、体を入れるところがないのだ。

一番大きい穴といえば・・・口かな。
僕は彼女の口に指をかけ、左右に引っ張ってみた。

思いのほか皮が伸び、びろーんと広がる。
人が入るのに十分なサイズだ。

ただ、ここから足を入れるにしても、首のところが細く、文字通りネックとなっていて着づらそうだった。

なにより、大口を開けた女の子はみっともない。

すると・・・やはり下の口かな。

今度はあそこに指を入れ、ぐいっと広げる。
果たして、穴が大きく開き、ここからも入れそうだ。

ああ、こっちからのほうが着やすそうだな。
じゃあ、ここから入ろう。

僕は自分の服を脱ぎ、彼女の皮を手にとる。

そして、彼女の股間に頭を突っ込んだ。

最初は頭だ。
皮を手繰り寄せ、顔の部分を被る。
目、鼻、口の位置を合わせると外の景色が見えた。

次に腕を入れる。
見慣れた手ではない。
女の子の細い手になった。

さらに皮を引き下げ、腰を入れる。
脚も右、左と入れて、彼女を穿く。

これで完了だ。

僕は自分の体を見回し、もう元の自分でないことを確認する。
そして鏡に向かい、自分の顔を見た。

そこに映っていたのは、さっきの女の子だ。
僕は彼女に代わってもらえたのだ。

「すげー!」

ホントに女の子になっちゃった。
僕はほっぺをつねったり、頭をペタペタ触ったりする。

間違いない。女の子だ。
しかも、皮を被ってるという感覚は全然なく、まるっきり自分の体だ。

視線を落とすと、そこに胸が見える。
男の平べったい胸ではなく、女の子の丸い胸だ。

「乳首〜」
僕は乳首を弄ぶ。
手のひらで転がしたり、つねったり。

「はぅ、ぁ・・・ぁ・・・ぁ・・・」
男のそれより敏感に感覚を伝えてくる。

揉んでみた。
柔らかくも張りがあり、以外に弾力を感じる。

き、気持ちいい。
これが感じるってことかな。

股間に指を這わす。
すでにしっとりと濡れていて、トロトロだ。

中指を1本、入れてみた。

「んく」

ずぶ・・・ずぶ・・・

押し込むと、難なく根元まで入っていく。
中身は僕なのに・・・指が入るなんて・・・。

くにくにと、かき回してみる。
「あぅ、あ、はぁ、ん、ぅあ・・・っく」

これが・・・女の快感か・・・。

僕はそれに夢中になった。
思考力が落ちて朦朧としてくる。
やがて、ぐわっとこみ上げる感覚がきて・・・

「はあ!・・・ぅあああ・・・ぁ・・・」
イってしまった。

指を咥えたままのお口は、ひくひくと痙攣している。

・・・気持ちよかった。
この女の子に代わってもらったのは、大正解だな。

「ふう」
人心地つく。

そういえば、この娘は誰なんだろう。

意識を集中して、なにかを思い出そうとする。
すると記憶が読めることを知った。

「・・・あ、夕方から知り合いと待ち合わせ!?」

彼女に用事があったことを知る。
時間を確認すると、まだ間に合いそうだが、すぐに出かけなくては。

じゃ、僕が代わりに行ってきてあげよう。

身支度を整え、家を飛び出した。


駅前の待ち合わせ場所。
急いだおかげで、時間に間に合った。
相手はまだ来てないみたいだな・・・。

そのとき、後ろから声をかけられた。

「センパイ!」

振り向くと、高校の制服を着た、コギャルっぽい女の子が寄ってきた。
頭に"マミ"という名前が浮かぶ。

「おう、マミ」
「すみません、わざわざ」
「ん」
軽く挨拶を済ませて、手近なサ店に入る。
彼女から、なにか相談事があるそうだ。

が、実際ほとんどの会話は雑談だった。
きっとこいつらに悩み事なんてないんだ。

それよりも、目の前にいる人物が、実は別人だなんて気づいていない様子。
僕はうまく化けられたことに、内心ほくそ笑んでいた。

「そういえばセンパイ、タバコ吸わないんですか?」
「え?ああ・・・」

いつもと違う点を指摘されたか、一瞬焦る。

タバコか・・・僕は吸わないな。
そういえばこの娘、公園で会ったとき吸ってたっけ。
マズイ、か・・・?

慌てて取り繕う。

「ちょっと本数を減らそうかと思って・・・」
「え〜、また新しい男の影響ですかぁ?」
「バッカ、そんなんじゃねぇよ」
「あはは、冗談ですよ、冗談」

なんとか誤魔化せたかな。

「そうですよね、タバコなんて吸わないほうがいいですよね」
「ん・・・」

なんとなく彼女に似つかわしくない、説教じみた言葉に、ピンとくるものがあった。

「それ・・・静の受け売りか?」

静というのは、マミの親友らしい。
僕の指摘は図星だったようで、マミは顔を真っ赤にして、半笑いでうつむいてしまった。


外に出る。
帰り道を二人で歩く。
辺りはすっかり暗くなっていた。

「すみません、ごちそうになっちゃって」
「ん、気にすんな」
僕のお金じゃないしね。

狭い路地に差し掛かる。
人通りも少なく、静かな道だ。

僕はチャンスを伺っていた。
手には例の空気栓を持っている。

周りに人の気配がないのを確認し、マミに近づいた。

後ろから髪をかきあげ、うなじに栓を取り付ける。
そして栓を抜くと、そこから空気が漏れはじめた。

「センパイ?」

振り向いた彼女の顔を、僕は無言で掴む。

シュー・・・ゥ・・・シゥ・・・

「え・・・ぁな・・・ぁ・・・・・・」

マミの顔が、しぼんでシワくちゃになる。
静かになったところで、体をほうを絞り、残りの空気を抜く。
抜けていく空気は、女の子のいい香りがした。

完全に潰れてしまう。

ごめんねマミちゃん、ちょっとあたしと代わって〜。

マミから服を剥ぎ、準備ができた。
そして自分も服を脱ぐ。

ガニ股になり、股間に指を入れてグッっと広げる。
口が大きく開き、そこから皮を脱ぐことができた。

・・・脱ぐときに粘液を被っちゃったけど、問題ない。

ぺしゃ

脱ぎ捨てたセンパイの皮を、地面に放る。
中身をなくした皮は、ペシャンコに潰れて横たわった。

「じゃ、マミちゃんよろしくね〜。
えへへ、女子高生だ」

僕はマミの皮を手にとって、股間を被る。
センパイのときと同じ要領で着込んだ。

皮を着終わったら、先ほど剥いだ服を着る。
これで僕は、どっからどうみてもマミになった。

「さて・・・」

センパイの処置だ。
自分の首筋についていた空気栓を取り、センパイの皮に取り付ける。
そして、

ふぅー、ふぅー

と、息を吹き込んだ。
元の大きさに膨らませれば、元に戻るらしい。

ふぅー、ふぅー、ふ・・・

あ・・・くらくらする。
酸欠になっちゃった。

やがて元の大きさに膨らませた彼女に、今度は服を着せる。
そして半身を起こして壁に寄りかからせた。
ほっといてもそのうち目を覚ますだろう。

ちょっと服が着崩れてるけど、勘弁してね。

「じゃ、いままで代わってくれてありがとう。
マミちゃん、いまからよろしくね」

入れ替わり成功だ。

僕は、今度はマミちゃんになって、その場を離れた。

ちょっとの間、マミを体験させてもらうために。