金融庁が“待った”  労金の全国合併延期
2010年12月24日 朝刊

 全国に十三ある労働金庫(労金)が、二〇一二年四月としていた全国合併の時期を延期したことが分かった。監督官庁である金融庁が、「合併後の将来像が明確でない」と合併の先送りを指導したことが理由だ。労金側によると、金融庁から「労働金庫法は全国一つの組織となることを想定しておらず、法改正が必要だ」との指摘も受けたといい、こちらもめどが立っていない。合併計画の実現に不透明感が増している。 (西尾玄司)

 労金が設立を計画していたのは「日本労働金庫(仮称)」。全国合併は、地方経済が落ち込み、合併による経営基盤の強化が不可欠と判断したためで、十三労金や全国労働金庫協会などは〇九年六月、合併準備委員会を設置し、協議を進めてきた。

 また、労金の主な利用者は労働組合員。各地の労金ごとに提供するサービスや商品が違うため、転勤などがあると、利用者が不便だったことも合併の理由という。

 同協会によると、法改正の必要性を金融庁から正式に指摘されたのは今年十一月。このため、同月下旬に開いた準備委で、合併を延期し継続協議とすることを決めた。次の合併時期は、全国合併を前提に構築しているコンピューターシステムを導入する一四年一月以降になるという。

 同協会は「法改正はなくても全国合併は可能だと考えてきた。専門家にも確認した」と戸惑う。

 これに対し、金融庁は「そもそも、合併後に目指す金融機関の将来像が明確ではない。そこが定まらない限り、どんな法改正が必要かも決まらない」とする。労金の融資の八割以上が住宅ローン向けだが、今後も同じビジネスモデルとするのかなど、はっきり示されていないという。

 全国合併すると、労金の預金残高は約十七兆円となり地銀トップの横浜銀行を上回るなど規模が拡大。労働者らの相互扶助が設立目的のため、税制上の優遇措置などがある現状の組織はそぐわない、と金融庁がみている可能性がある。

 また、ある労金幹部は「全国合併が実現すると、大手銀行の経営を圧迫しかねないことも、金融庁が横やりを入れてきた理由では」と推測する。

 労金は、もともと各都道府県単位で設立されていたが、経営効率化のため一九九八年から、近畿、東海、関東など地域単位で合併し、二〇〇三年に現在の十三労金となった経緯がある。

 愛知学泉大学の三村聡教授(協同組織金融論)は「現行法で地域統合を認めてきたのに、全国合併はだめというのはおかしい。合併の目的は、利用者の利便性向上と明確。金融庁が土壇場になって待ったをかけた理由が分からない」と話している。

 <労働金庫> 労働組合や消費生活協同組合など労働者団体が出資し、その組合員が主な利用者となる協同組織金融機関。労働金庫法に基づき、金融庁と厚生労働省が所管する。提供する商品やサービスは、銀行と変わらない。9地域と新潟、長野、静岡、沖縄各県に計13ある。13労金全体で、出資する団体などは約18万で、利用者は約1000万人。預金残高は16兆9803億円、貸出金残高は11兆3072億円(2010年10月末)。