8fef8e25.JPG講演中の五十嵐敬喜法政大学教授。(撮影:徳島達朗、12月12日) 【PJニュース 2009年12月13日】12月12日、福岡天神121ビルで、川のシンポジウム2009実行委員会主催の「変わる公共事業、変える公共事業」が開催された。講演、九州各県からのダム報告、パネルディスカッションという内容であった。
参加者は約80名。

講演は五十嵐敬喜氏(法政大学教授)、演題は「ダムはどうなるか」であった。同氏は冒頭、「週刊ゲンダイ」最新号(12月8日)を紹介した。その見出しは、「いつのまにか腰砕け 八ツ場ダム中止は風前の灯 もう官僚に取り込まれたか、前原大臣」というものである。

五十嵐氏の講演は、公共事業の歴史とシステムから、それを解き明かそうとするものであった。概略以下のような話であった。

話は田中角栄から始まる。田中角栄氏は貧農の子で、戦争で苦労し、帰国すると何も残っていない国土を見て、決心した。それは国土の再建である。彼は28歳で国会議員、54歳という若さで総理大臣となっている。

具体的には、住宅と道路だ。彼はこの分野の法整備のために、103件の議員立法を提案している。彼の構想する計画は、事業・規則・財政・組織からなるシステムであった。

全国総合開発法により、開発を開始する。その原型が住宅公団、住宅金融公庫であるが、これにより、国民の多くが恩恵を被っているはずである。いまのシステムは田中の個人的な努力に拠っていると言えよう。

高速道路、新幹線も進めたが、計画は閣議決定のみで、国会審議を行わないやりかたであった。その理由は、国会審議では「利権の争奪合戦になる」 という巧みな理屈をたてている。

各種公団は、官僚の天下り先を提供した。官僚主導の公共事業システムは田中角栄が構築した産物なのである。

その点で、前原大臣の就任記者会見での挨拶は従来と違って、官僚が用意した原稿を無視して自己の正直な挨拶をしたことは、異例である。そのことには一種の感動を覚えた。

しかし、事はそんなに簡単ではない。八ツ場ダム、川辺ダムは中止というのであるから、河川法による基本方針・整備計画・事業において、基本方針、計画計画を破棄し事業を中止しなくてはならない。田中角栄氏の築いたシステムを一から突き崩さないと前に進めないわけだ。

八ツ場ダムについては、官僚主導で進めてきたこともあり、60年もかかっている。そのことに官僚は責任も感じない。当初の役人は辞めており責任など負う必要もないからだ。それに住民の90%はダム賛成だ。関連都道府県は100%賛成だ。

例えば移転予定地で営業している旅館を例にとれば、観光の目玉のダムができなければ、今後の営業に期待は持てない。元の場所はといえば一面の畑で、旅館など成り立つはずも無い。

今回設立した有識者会議は大臣の私的諮問機関であり、構成メンバーは中立的と言うが、6対2、ないし5対3で建設賛成の結論になりそうな委員構成だ。

前原大臣の忙しさ、相談できる人が不在という不幸な状態の中で、週刊誌が報じたダム建設情報が当たっている事態になりつつある。中止に伴う倒産・失業も深刻だろう。

五十嵐氏の今後の展望として、公共事業評価法の作成が必要であると以下を強調した。

1.サンセットルールの確立:無駄な事業は強制的に止めさせること。
2. 費用対効果の導入:事業の右肩上がりを止めさせる。景観や生態系の観点を重要視する。【了】

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