2007年01月25日

納豆ダイエットはなぜ祭りになった

納豆騒動も一段落つき、スーパーでは今まで3パックワンセットどころか今まで見たことのない4パックワンセットを見た。しかも値段は100円以下。納豆価格は急騰の後、急落して却って安くなった。
今にして思うと、なぜこんなに騒動が盛り上がったのか、不思議と言えば不思議だ。別に毎日納豆2パック食べたからといって、ただちに健康被害が出るとは思えない。少なくとも毎日、喫煙で1箱空けるとか、酒1瓶空けるとか、コーヒー5杯飲むとか、ラーメン2杯食べるとか、ケーキ3個食べるとか、に比べればはるかに健康的だろう。テレビで教えられなくても2パックぐらい日常的に食べている人ざらにいそうだ。少なくともチーズ毎日100g食べるより納豆2パック(約100g)食べた方がダイエットになりそうだ(笑)。別に嘘だと分かっても、本来なら「なーんだ、テレビはこれだから信用できん」程度ですんだような気がする。
実際、「あるある」を作ったプロダクションにしても、それほど罪の意識があったとは思えない。この手の健康番組は、同番組に限らず、おおむね和食・植物性食品推奨派で、戦後の行き過ぎた肉食・洋食に警鐘を鳴らすという使命感で番組を作っていたのかもしれない。あるいは日本の食糧自給率40%を憂い、(大豆だって輸入がほとんどだが)肉やチーズ食うより納豆食べさせた方がお国のためだ、と考えていたのかもしれない。だから、こんな騒動になって一番びっくりしたのは当の番組スタッフじゃなかろうか。「な、なんで???」。
彼らは「善意の煽り」をしていたのかもしれない。「善意」なら多少脚色してもかまわんだろう。ところが、「善意」は通じず、blogosphereにいたっては、科学者の倫理とか「エセ科学」問題にまで発展してしまった。UFOとか超能力とか占い(池田信夫blog)まで一部で槍玉に挙げられて論じられているのを見て笑ってしもうた。UFOとか超能力とか占いとかはテレビ的にはエンタメだというコンセンサスあるんじゃなかろうか。まあ、こういう例もあって問題を孕むケースもあるかもしれんが。飛躍の泰斗、弾さんがニュートンのプリンキピアまで出して来るのは、まあ、凄いと言えば凄いがワタシ的には想定の範囲内だが。
「平成の納豆あるある大事件と科学者の責任」(5号館のつぶやき)うーむ、これは「善意の捏造」であっても「科学の捏造」じゃないだろう。よって科学者の責任とは100%関係なさげな気がする。
それに「エセ科学」ですらないだろう。どっちかと言えば「煽りの科学」の問題であって。そのようなパブリックイメージが出来上がってきた原因には、テレビがあるのではないですか」(高木浩光@自宅の日記)と言われても、一般ピープルはめんどいことは、良いのか悪いのかといった二分法的思考、つまり「結局どーなんだよ、はっきりしろや」と言われるもんで。はっきり言うことは決して非科学的でもないし、悪いことじゃない。人は行動を起こすための確信を欲しがっているわけで、結局どっちなのか結論出ませんでしたじゃ、誰が見るか、そんなもん!
ついでに一番噴いたのは、大科学論にまでに発展したこれだ。
「放送された内容には間違いがあった」けれども、だからといってそれは「納豆にダイエット効果がない」ことを証明したわけではない。そういうレトリックの混同(意図的・無意識的のいずれであっても)は、事実から遠ざかることになる。
 ……と書いたら「松永は納豆にダイエット効果があると主張している!」と誤解する人が絶対いるので、念を押しておくが、そんな話は全然していない。(絵文録ことのは)

どう見ても誤解しているのは松永さんだと思うけど。誰か納豆にダイエット効果がないと言っている人いたのだろうか。言っている人もいるかもしれんが、それは「(番組で主張した意味での)ダイエット効果はなかった」と言っているだけで、何も一般的な命題「納豆にダイエット効果はないと証明された」と言っている人は1人もおらんと思うけど。それは「UFOは存在しないと証明された」と言っている人がいないと同じくらいいないと思う。蛇足だが豆乳も、牛乳よりわずかだがカロリーが高い。なのに牛乳ダイエットってあまり聞かない。
だけれども、これだけ盛り上がるのは、やはりネットの普及が根本原因にあるような。単にあの番組が放映されただけなら、たかが納豆2パックで夜も眠れずにはならなかったろう。石油ショック当時のトイレットペーパー騒動とは切実感においてわけが違う。ネットと携帯とダイエットというキーワードでもってあっという間に祭りが起きた。情報爆発力の問題であって、爆発的伝播は、熱のみならず光も発する。
祭りが起きたから納豆が払底し、それをマスコミが取り上げて更に納豆の糸がウェブのように拡大し、直接関係なさげな話にまで発展した。その結果、かなり面白いネタを短期間で味わえることになった。
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Posted by y0780121 at 22:08│Comments(6)TrackBack(1)clip!

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松永氏の主張は論理的には間違っていない。 だが、太りすぎに悩む消費者が「納豆を買おうかどうしようか」と迷ったとき役に立つものではない。 絵文録ことのは:あるある大事典の「実験捏造」は「納豆ダイエットに効果がない」を意味しない たとえば「納豆のダイエット効力...
納豆のダイエット効果は期待できないと見なしてよい【玄倉川の岸辺】at 2007年01月26日 01:31
この記事へのコメント
>誰か納豆にダイエット効果がないと言っている人いたのだろうか。言っている人もいるかもしれんが、それは「(番組で主張した意味での)ダイエット効果はなかった」と言っているだけで、何も一般的な命題「納豆にダイエット効果はないと証明された」と言っている人は1人もおらんと思うけど。

山ほどいます。たとえば、この上の「玄倉川」さんは、そういう風に考えるべきだ、そうでなければ疑似科学だ、とまで言っていますし、またブックマークでもそういう発言が多数見られます。
一人もおらんどころか、多数いるところに、病理を感じました。

ちなみに、豆乳ダイエットはあります。かなり効果があるという実体験もよくききます(mixi豆乳組の書き込みより)。というのは、最初に豆乳を飲むと満腹感が得られるので、食事が小食で済むようになるという効果ですね。DHEAはどうでもいいみたいです。
Posted by 松永 at 2007年01月26日 09:22
玄倉川さんは、あの番組が捏造だったから日常生活一般で常識的に取る態度としてダイエット効果がないと見なすべきだと主張されているだけで、非科学的でもなんでもありませんよ。ほかの人もそうです。思考の次元が違うんですから。
豆乳ダイエットはありますけど、実行して実際に効果があれば効いたと言えるし、そうでなかった場合は効果がなかったとしか言いようがない。科学的に一般化すべきものではそもそもないんです。満腹感が根拠ならただの水でもコンニャクでも効果ありそうな気がしますし。
Posted by 佐藤秀 at 2007年01月26日 11:53
 TBありがとうございました。おおむね世間の感想は「この件について科学者に責任はない」とのことだと理解はしていますが、科学者および教育者として、このような「科学もどき」をもてあそぶ放送局と、それを簡単に受け入れる視聴者が育ってしまった今の日本の状況に無力感を感じているというわけです。逆に我々には責任がないとなると、「あんた達にはそこまで期待していない」と言われているようで、それもまた脱力してしまいます。なんとか、科学者・教育者がもう少し存在感のある状況になりたいというのが言いたいことでもありました。
Posted by 5号館のつぶやき at 2007年01月26日 12:21
>それを簡単に受け入れる視聴者が育ってしまった今の日本の状況に無力感を感じているというわけです。

いや、昔だってそうだったと思いますよ。ただ情報の伝播力が格段に違うだけじゃないかと。
Posted by 佐藤秀 at 2007年01月26日 21:29
 なるほど、でも昔は今とは比べものにならないくらい科学が素朴だったのも事実ですよね。特に医学・生物学の進歩はめざましいです。健康食品がはやり始めたのは明らかに医学・生物学の進歩と関係していると思います。だから、人々は昔と同じところにとどまっていたら、簡単にだまされる構造になっています。アリスの赤の女王の国と同じで、人々も科学の進歩にある程度ついていけるように「走り」続けなければいけない時代になっているのではないでしょうか。
Posted by 5号館のつぶやき at 2007年01月26日 21:48
>健康食品がはやり始めたのは明らかに医学・生物学の進歩と関係していると思います。

半分同意なんですけど、その進歩の成果がマーケティングに巧みに利用されているんだと思います。私が知った限り、お茶も紅茶もウーロン茶もコーヒーもバナナも海草も蜜柑もチーズもがん予防に効果があるらしいですけど、じゃあ要するに普通に食べてればいいってことになってしまいそうで。ちなみに、うちの父親も私の子供のころから健康食品・健康器具マニアでしたよ。ほとんど長続きませんでしたが。
Posted by 佐藤秀 at 2007年01月27日 22:06