2009年06月01日

おと・な・り〜のストーカー5

otonari公式サイト。熊澤尚人監督、岡田准一、麻生久美子、谷村美月、岡田義徳、池内博之、市川実日子、とよた真帆、平田満、森本レオ。 タイトルは「音鳴り」と「お隣」をかけているが、原作の脚本「A/PART」もapart(離れ離れ)とapartment(アパート)をかけているようだ。リアリティに欠けるように見えるが、かなり観る側の想像力に委ねられていると思われる。ともに独身30歳の男女(写真)は、壁を隔てて対称に見えるが、実は痛切な非対称性が隠されている。
由緒ありそうだが、かなり古ぼけて隣の部屋の音が丸聞こえの、今では貧乏臭い武蔵野アパートメント。フラワーデザイナーを目指して花屋でアルバイトしている七緒(麻生久美子)が住んでいるのには違和感ない。一方のカメラマンの聡(岡田准一)は、売れっ子モデルのシンゴ(池内博之)の写真集を高校時代からの友人の誼ということで撮ったことから、一応サインを求められるくらいに出世した。その彼がいまだこのアパートの住人というのは仕事場兼用とはいえ違和感がある。シンゴのような小奇麗なマンションに移っていてしかるべきだろう。
2人は偶然お隣同士でいたわけではないのだ。偶然といえば、2人とも外国行きを計画していること。隣室からフランス語会話を練習する七緒の声が聞こえている。どこか対抗心、あるいは逆に追随したい気持ちが働いたように見える。
otonari3otonari42人は一度も顔を合わせた事がないことになっているのだが、一度顔を合わせるような事態に陥る。制御不能のシンゴの恋人茜(谷村美月)に部屋に闖入され、どうにもならなくなってあわや鉢合わせになる。裏返せば、聡は意識的に七緒と顔を合わせるのを避けていたのではないか。闖入した茜は早速窓越しに七緒と挨拶しているというのに。茜に「お隣の人結構カワイイなあ」と言われて困惑気味の聡は七緒の顔を知っていることを暗示している。この茜、曲者で、実は2人の微妙な関係をシンゴを通して知っているのか、何とか結び付けようとキューピッド役を担っているフシがある。
聡はモデルの撮影より風景写真を撮りたいと思っているが、その原点のような風景がラスト近くで現れる。コスモスの花が咲き乱れる故郷の風景。そのコスモスの花は自然と七緒の実家の花畑に連なる。故郷の風景はシンゴと「思い出」を共有する湖の撮影現場にも連なっていて、その写真はさりげなく七緒に見せるように花屋のお得意先の喫茶店にも飾られている。
聡は同級生の七緒を卒業してからも密かに思い続けていたのだ。そんな片思い体質は会社での人間関係で聡のKYな不器用さからも伺える。恐らく、在学中は声をかけるわけでもなく、七緒の方は感づいていなかっただろうし、聡の存在も忘れていたに違いないから、話しかけない限り気付かれる心配もなかったろう。恩師の謝恩会を誘う電話で「元気?」と意味深なサインを送られるまで。
otonari2そもそも聡がカメラマンという職業を志した原点も七緒であったことが伺える。恐らく聡は在学中、高嶺の花を見るように七緒を眺めていたに違いないし、「一方的に見るだけの人」にふさわしい職業ではある。七緒が一方的に見られるだけのフラワーデザイナーを目指したことと、聡が風景写真家を目指したこととは相補の関係にあり、それを補ったのはまるで盗聴のようなストーカー的コミュニケーションだ。隣室から聞こえる「基調音」は学校以来の七緒への思いそのものだ。あらゆる面で聡は七緒を追いかけていたのだ。
聡は映画で描かれていないところでストーカーのような色々な“工作”をしていたのだろう。ストーカーはコンビニだけではなく、お隣にいたのだ。
聡は、その後、茜を泊めたことをどう釈明したのか。釈明するまでもなく、大事な“音鳴り”がなかったことを七緒は承知していたに違いない。
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Posted by y0780121 at 22:12│Comments(4)TrackBack(20)clip!邦画オ | ★5

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この記事へのコメント
コスモスが咲いてるから10月位?
でも服装は真冬っぽいし…。
でもアパートの前では何かの花も咲いていた。
でも2人の部屋にはオイルヒーターがあった…。
どうも季節感が掴めませんでした…。
Posted by たかひょ at 2009年06月03日 05:24
アパートの前にパンジーが咲いていましたね。秋でも咲くみたいです。カレンダーでフランス行き予定は11月下旬だったような。
Posted by 佐藤秀 at 2009年06月03日 22:54
佐藤秀さん、カノンさんという信頼する見巧者の5ツ星や高評価に興味を惹かれて観て来ましたが、私の貧困な想像力では、どうにも理解不能(涙)でした。。ファンタジーだから細部の疑問を挙げるのは野暮でしょうし、映画そのものの読み解き方は佐藤さんの解説に概ね同意できるのですよ、世にシャイな男性は多いですしね。となるとキャスティングが間違っているのではないかと。

岡田准一のルックスで、在学中「透明な存在」だったというのはちょっと考えられない。若き日の平田満が演じれば、地味で内向的な男子が、音と写真の表現だけで想う人に何とか伝えようとする切ないラブストーリーとして成立したかもしれませんが。

それから谷村美月という女優の大阪出身と思えない関西弁と、不自然に上向きな鼻先が気になって仕方ありませんでした。(整形を非難するわけではなく役柄とマッチしていないという意味です)
Posted by 音次郎 at 2009年06月06日 06:13
>若き日の平田満

私は逆に平田満にそんなアブナサ感じないですよ。いかにも地味で内向的に見える人は意外にこじんまりして温厚で、ストーカー的熱情とは無縁な場合が多いと思います。岡田准一が適役かどうかはさておき、イケメンだから有り得ないというのもどうかと。
Posted by 佐藤秀 at 2009年06月06日 17:53