2010年07月11日

必死剣鳥刺し2

torisashi公式サイト。藤沢周平原作、平山秀幸監督。豊川悦司、池脇千鶴、吉川晃司、戸田菜穂、村上淳、関めぐみ 小日向文世、岸部一徳。藤沢周平の架空の海坂藩物時代劇は「花のあと」、「山桜」「武士の一分」と四つ目。この中では最も殺陣が派手なのだけれど、その分、説得力もちょっと劣る。
正直、「鳥刺し」で最初の思い浮かべたのは焼き鳥の串刺しだった。一突きで何人もの相手を串刺し状にまとめてやっつける。そんなイメージ。本当なら鳥肉の刺身を思い浮かべるべきなのかもしれないけれど、そっちの鳥刺しじゃ必殺剣のイメージが浮かばない。
しかし、鳥刺しというのは、映画でもあるように子どもたちまでがやっていた釣りとか昆虫採集と同じようなレジャーらしい。竿に鳥黐を付けて餅の粘着性で鳥の足を動けなくして生け捕りにすることらしい。
要するに突きのことじゃないのか。けれど、それを使う時は使う本人も半ば死んでいる状態だというのだから、その使い手、兼見三左エ門(豊川悦司)も死に際にしか使えないことになり、本人だって一度も使っていないことになる。そんな一度も使っていない必殺剣って、本当に必殺剣と言えるのか。三左エ門が心密かに考えている最後の必殺剣なら分かるが、周りの人間が知っていることが解せない。そのままではただの虚仮脅しなのだ。三左エ門が死ぬ間際になるまでは。つまり必死剣、必殺剣と言っても相手を必ず殺すという意味ではなく、自分が必ず殺される状態になった時の一矢報いる剣なのだ。
ということは津田民部(岸部一徳)は勘違いしていることになる。なぜ民部が、最初の“鳥刺し”の餌食に藩主(村上淳)の側室連子(関めぐみ)がなるという大不祥事に対して三左エ門に寛大な沙汰をするよう働きかけたのかは大体流れで読めるのだが、元々藩主を守るためにははなはだ心もとない必殺剣なのだ。三左エ門が死にかけているのなら、それから鳥刺しを見舞ってもその時、刺客の帯屋隼人正(吉川晃司)は既に藩主を余裕で殺めているだろうから。三左エ門は結局、帯屋を倒すのだが、ここで観客の側が「出た!鳥刺し!」と勘違いしてしまいそうだ。しかし、定義から言って鳥刺しはまだ出ていない。なぜなら三左エ門は怪我をしていても死にかけていないのだから。
鳥刺しとは相手に生きている気配を感じさせない状態で油断させ、最後の一搾りの力で相手を刺すことなのだ。あたかも鳥に人の気配を察知させないように。一対一で敗れてとどめを刺されかける正にその前の捨て身の剣なので、やられかける藩主を食い止めるには必殺とは言えないのではないか。
それを民部はいざとなって出す伝家の宝刀のように勘違いしていたのに違いない。本来なら帯屋一人で乗り込んで来ても多勢でかかれば必殺剣など必要ないはず。また、あくまで最後の切り札なのに、最初から切り札として使えないのだ。
勘違いは、三左エ門の方にもあった。民部が寛大な沙汰に導いたのは諫言だと勘違いしたのだ。その勘違いを保科(小日向文世)は気付いていたのだが。
結局、この二つの勘違いが思わぬ皮肉をもたらす。互いに勘違いを相殺させるという結末で。更に観客も含めて三者が勘違いするように構成されていたように見える。
ところで、実際に串刺しされるようなシーンがある。三左エ門が襖越しに突き刺されるシーンなど文字通り串刺し。非常にシリアスな展開なのに途中で笑ってしまうようなコミカルな場面があるのがいい。そもそも予告編からして「必死剣耳掻き」で脱力させられていたので、本編でも所々にどこか脱力ぽい雰囲気がある。
女性陣はこれまでのシリーズ同様、貞淑な佳人が配置されている。妻睦江(戸田菜穂)は既に亡くなっているのに存在感は里尾(池脇千鶴)以上だ。
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Posted by y0780121 at 22:03│Comments(0)TrackBack(21)clip!邦画ヒ | ★2

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