2010年10月12日

ミックマック3

映像のサーカス
micmac公式サイト。ジャン=ピエール・ジュネ監督、ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエ、オマール・シー、ドミニク・ピノン、ジュリー・フェリエ、ニコラ・マリエ、マリー=ジュリー・ボー、ミッシェル・クレマド、ヨランド・モロー、ジャン=ピエール・マリエル。原題の“MICMACS A TIRE-LARIGOT ”はフランス語自動翻訳サイトで翻訳してもらったら「満足にゲーム」という答えだった。意訳すれば「思う存分遊び倒せ」くらいだろうか。Wikipediaによると、“Non-stop shenanigans”(おふざけが止まらない)という感じか。
1979年、北アフリカ戦線で従軍していたバジル(ダニー・ブーン)の父親は地雷の暴発で即死する。30年後、バジルはパリのビデオレンタルショップ従業員として貧乏暮らしをしている。
ある日、バジルがレンタルショップで暇つぶしにテレビモニターを見ていたら、ハンフリーボガートとローレン・バコールの「三つ数えろ」(1946)が放映されている。まるでその映画の中の映画と合体したように店外で銃撃戦が。バジルは流れ弾を頭に受けて病院に運ばれる。医師は弾丸を抜き取れば、植物状態になり、そのまま放置すれば生きられるがいつ死ぬか分からないと診断し、コイントスでそのまま放置と決定する。こういう抜き差しならない状態というのは後で2人の武器商人によって手榴弾と地雷で再現されている。
さて、退院したバジルだが、本当に退院したのか、あるいは別のケース、つまり植物状態になったのかよく分からない。この映画は植物状態のバジルの夢そのものなのかもしれない。その前に、そもそもバジルは本当に被弾したのかさえ怪しい。ただ映画を観ているうちに居眠りしてベタに一炊の夢だったのかもしれない。父親の死のトラウマからそんな夢見てもおかしくない。
映画では、退院後、もう店員の職は女性に奪われているが、ひょっとすると、日ごろからバジルが店で映画ばかり観て居眠りしてばっかなので、店主から「さぼっていると首にするぞ」と釘を刺されていたのが夢の中で現れたとか。
とにかく観る側はのっけから現なのか、夢なのか、もう一つの夢なのか分からなくさせる。またしても「インセプション」的状況に追い込まれる。
とりあえずそこんとこは麻痺させて、とにかく映画を観ると、本当に夢のような世界。粗大ゴミ置き場に集う不思議な仲間たちのメンバーに加えられるのだが、仲間たちそのものも粗大ゴミ感に満ちているのがミソ。ここは恐らくバジルの30年間の記憶の堆積地なのだ。仲間たちはまるでサーカス団員のようでもあり、大道芸人集団のようでもある。というよりこの映画自体がサーカスのピエロ的ペーソスで満たされている。
バジルが記憶の中にあった父を殺した地雷と自分を撃った弾丸の2つの製造会社を見つけ(都合の良いことに両社は道路を隔てて隣接している)、かたき討ちを仲間と行うのだが、「反戦」「反武器商人」の割に彼らも人間大砲(ドミニク・ピノン)だの、かなりおっかない武器を使っていて説得力がないところがいい。逆に武器商人たちも必ずしも悪人面していないことに説得力がある。
社長の一人マルコーニ(ニコラ・マリエ)は詩人のアルチュール・ランボーはアフリカに行って武器商人になった(事実そうだった)が、自分は引退してから詩人になると嘯く。彼はアフリカの革命グループとの取引が不首尾になった時には「ダイヤよさらば」と“詩人”らしい台詞も吐くのだけれど、息子にはシルベスター・スタローンの「ランボー」に間違えられているのが癪の種。
もう一人の資金流用の嫌疑のある社長ド・フヌイエ(アンドレ・デュソリエ)は実在の現役大統領のニコラ・サルコジとのツーショット写真を社長室の机に飾っている。なんとまあ、フランスらしい大胆演出。
ここでも夢だと思わせる仕掛けがあって、ランボー社長の守衛は30年間同じセーターを着たまんまなことを社長から咎められ、この守衛室を「もっとハイテク設備に替えようか」と解雇を匂わしている。よく考えると、この守衛室、バジルが働いていたレンタルビデオ店とそっくりで、守衛は監視モニターにビルの窓越しに男女が絡んでいるのを発見し、ズームアップして楽しんでいる。要はバジルと同じことをして同じ境遇に陥っているのだ。というかベタにバジルの人生の引き写しだろう。
その他、武器の政商には有り得ないみすぼらしげな煙突長屋の住まい。煙突から忍び込む仲間ってサンタクロースかよ。
ラストはさらに凝っていて捕まった社長2人はアフリカの戦地らしき場所に連行されるが、それがまた映画の中の映画となって最終的にはユーチューブで上映される羽目に。
どこまでも現と映画と夢の境目をなくしたこだわりが凄い。
Clickで救えるblogがある⇒人気blogランキングにほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

Posted by y0780121 at 20:19│Comments(0)TrackBack(14)clip!洋画ミ-モ | ★3

この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/y0780121/50512685
この記事へのトラックバック
ジャン=ピエール・ジュネ(仏)といえば、「アメリ」「デリカテッセン」の人。 今回も、彼の独特な「ネチっこさ」が、全編を通して満載されている。 (オープニングからして、たちまち) そして展開では「変なメンバー総動員」、という趣き。 ...
ミックマック Micmacs A Tire Larigo ジャン=ピエール・ジュネ流、アタマの体操【日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜】at 2010年10月12日 20:56
「Micmacs」2009 フランス バジルに「戦場のアリア/2005」「ぼくの大切なともだち/2006」「コード/2008」のダニー・ブーン。 タンブイユ(料理番)に「パリ、ジュテーム/2006」「セラフィーヌの庭/2008」のヨランド・モロー。 ラ・モーム・カウチュ(軟体女)に「...
「ミックマック」【ヨーロッパ映画を観よう!】at 2010年10月12日 22:32
『アメリ』、『デリカテッセン』のジャン=ピエール・ジュネ監督最新作。父親を地雷で亡くし、自らも事件に巻き込まれ頭に銃弾を受けた男が、仲間とともにその両方を製造した会社に復讐する様子をコミカルに描いたフレンチコメディだ。主演はフランスの人気コメディアンダニ...
ミックマック【LOVE Cinemas 調布】at 2010年10月12日 23:03
 原題:MICMACS A TIRE-LARIGOT 世界が平和でありますように、、、、、。 悪人を...
ミックマック(2009)【銅版画制作の日々】at 2010年10月12日 23:32
レンタルショップで働くバジル(ダニー・ブーン)は、発砲事件に巻き込まれ頭に銃弾を受けてしまう。 一命は取り留めたものの、銃弾は頭に埋ま...
ミックマック【心のままに映画の風景】at 2010年10月13日 17:14
Micmacs (Score) - O.S.T.◆プチレビュー◆愛すべき変人たちのファンキーな復讐劇。このスラップスティック・コメディーの隠し味は反戦だ。 【70点】 ビデオ店で働くバジルは発砲事件に遭遇。幸い命は助かったが、頭に銃弾を残したまま生きるハメになる。仕事も家も失った...
映画レビュー「ミックマック」【映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP】at 2010年10月13日 23:30
発砲事件に巻き込まれ命は取り留めたものの、流れ弾が頭に残ったまま生きて行くことになったバジルは、入院している間に仕事も家も失ってしまう。 そんな彼に手を差し伸べたのは、不思議な隠れ家で共同生活をしている7人の仲間たちだった。 彼らは、バジルの頭に残っている...
ミック・マック【象のロケット】at 2010年10月13日 23:51
それは、現代のおとぎ話 頭にうまったピストルの弾 パパは地雷でふっとんだ
アメリ監督最新作・映画<ミックマック>【美味−BIMI−】at 2011年01月09日 00:40
MICMACS A TIRE-LARIGOT/09年/仏/105分/ファンタジー・コメディ/劇場公開 監督:ジャン=ピエール・ジュネ 製作:ジャン=ピエール・ジュネ 脚本:ジャン=ピエール・ジュネ 出演:ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエ、オマール・シー、ドミニク・ピノン ...
ミックマック【銀幕大帝α】at 2011年04月22日 01:36
「ミックマック」 「オカンの嫁入り」 
悪戯オカン【Akira's VOICE】at 2011年05月23日 11:32
自分で書いてて寒いギャグですが、 ミックマックとはいたずらって意味なんだそうですね。 ・・・にしては、大人のやるコレは いたずらなんてレベルのしろもんじゃないんです。 韓国映画だったらまちがいなくものすごい 悲惨な状態なはずなんですが なんだかチャ...
ハンバーガーじゃないよ(寒っ!)〜「ミックマック」〜【ペパーミントの魔術師】at 2011年06月10日 15:57
ミックマック 「アメリ」「デリカテッセン」のジャン=ピエール・ジュネ監督最新作、「ミックマック」を見ました。 オシャレでおバカでかわいい反戦映画、おもしろすぎてけしからん!って感じです。 ストーリーは、父の命を奪った地雷を作っている軍事会社と、自分の運
「ミックマック」「パリ20区、僕たちのクラス」仏映画2本立て【国内航空券【チケットカフェ】社長のあれこれ】at 2011年07月22日 17:43
☆☆☆★(7点/10点満点中) 2009年フランス映画 監督ジャン=ピエール・ジュネ ネタバレあり
映画評「ミックマック」【プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]】at 2011年09月07日 09:49
 東京電力のやることには、本当に疲れますなぁ。また、ネズミですからね。電力会社が選べない日本は、不幸ですよねぇ。ちなみに、本日紹介する作品は、原発推進国で制作されたこ
ミックマック : ファンタジー反戦ムービー【こんな映画観たよ!-あらすじと感想-】at 2013年04月22日 18:45