2010年10月31日

マザーウォーター3

現代版方丈記
motherwater公式サイト。松本佳奈監督、小林聡美、小泉今日子、加瀬亮、市川実日子、永山絢斗、光石研、もたいまさこ。人の声も、水の音も、コーヒーを挽く音も、足音も、みな平等に拾音されていて、まるで映像の中にもう一人目に見えない旅人がいて、ボンヤリと傍観し、傍聴しているような佇まい。見えない旅人とは、実はこの映画の観客なのかもしれない。
ここには主役も脇役も存在しない。登場人物の声も皆公平に遠声トーン。水の音も、京都・鴨川のせせらぎから花壇に水を遣る音、豆腐を掬う音、流しの水、水割りをかき混ぜる音、皆公平に扱われている。恐らく鴨長明の方丈記

行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。

へのオマージュだろう。舞台も鴨長明ゆかりの下鴨神社の周辺だ。
実際、登場人物たちも、うたかたのようで生粋の京都人ではないらしく、皆一人暮らしらしい。現代的な隠遁者なのだ。「しかも本の水にあらず」と同じように喫茶店主の小泉今日子も「同じコーヒーを二度と作れない」と言っている。「人はピトピト進化していくから面白い」のもたいまさこの台詞は「かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし」に対応しているよう。
ウィスキーしか出さない小林聡美のスナックはタイトルのマザーウォーターの意味、ウイスキーの仕込み水からのこだわりだろう。だけど、花植えのあるベランダではしっかり缶ビールを飲んでいる。市川実日子の豆腐屋は水なくして有り得ない。
この映画の人間の象徴的存在は、やはり、もたいまさこ。歩く静物という感じなのは「トイレット」や「プール」で既に定番化しているのだけれど、今回はそれなりによく喋っている。後はやたら飲んだり食ったりしているだけ。それ以外は歩いている。もたいと対照のような風呂屋の赤ちゃんは、みんなに世話を任されて抱かれている。かと言って、しっかりした共同体というわけでもない。
人々と対称するような物体の象徴は椅子で、スナックのガタが来た椅子、座れば眠気を誘う鴨川河岸に放置された椅子、豆腐屋を即席食堂にしてしまう椅子など、それなりに重要な役割を果たしている。
大通りを行き交う車が少し後方に見えるだけで一歩小路に入れば時間が止まったように静寂が支配する。時のうつろいを語るのは北白川疏水沿いの桜並木だけ。満開の桜がさみしく、散るのが楽しいという小泉今日子だが、みんな花見をしたことがないという。小林聡美も自分が育てたり摘んでいる花の名前も知らない。多分、時の流れを意識せざるを得ないからだろうか。
ところで、ラストでカネだけ置いて黙って喫茶店を出て行く客こそ見えない旅人、我々観客なのだろう。映画観賞料金は・・・400円らしい。
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Posted by y0780121 at 19:50│Comments(0)TrackBack(21)clip!邦画マ | ★3

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