2011年02月01日

冷たい熱帯魚1

coldfish公式サイト。英題:COLD FISH。園子温監督、吹越満、でんでん、黒沢あすか、神楽坂恵、梶原ひかり、渡辺哲。1994年に発覚した埼玉愛犬家連続殺人事件をベースにしている。実際の事件はその後に起きたオウム真理教事件の陰に隠れて目立たなくなってしまったが、猟奇殺人事件としては相当な大事件だった。
映画では犬のペットショップを熱帯魚店に変えられている。英題の“cold fish”は「変人」とか「不感症」「冷酷な人」という意味がある。直訳して“cold tropical fish”とすれば、外見の良さの裏に隠された怖い人間というニュアンスが出そう。そもそも「平気でうそをつく人たち」もそうだけれど、サイコパスな人々は案外、外見的には陽気でお茶目な人が多いようで、本能的に人の弱点を担保にし、たらしこむ技術にたけている。
ただ、映画自体はエロくグロくても大して怖くないし面白くもない。と言うよりも、出て来る人間がみんな壊れていて、次から次へと常軌を逸した行動をしまくっているのでメリハリがなく、観ている側も慣れて来てサプライズがなくなって来る。もう最初から役割が決まりだから次はこうなるだろうなあ、と大体予想がつき、“不感症”になって形勢逆転、観る側が上から目線になってだんだんと失笑物になってくる。
死体を運び、「唐揚げぐらいの大きさ」まで切り刻むという場面(ご丁寧に3度もあって流石に食傷する)もあるのだけれど、半ば強制的に作業を手伝わせることになる社本信行(吹越満)は逃げようと思えば逃げられるのに蛇に睨まれた蛙のような状態で何もできない。死体処理現場ではそうかもしれないが、自宅にまで帰らせてもらって何の手も打たないというのはリアルじゃない。
主犯の村田幸雄(でんでん)も完全犯罪と嘯いている割に、杜撰だ。生肉を川に捨てれば魚が食ってくれて消えるなんて甘い。清流の川下に人がいたら気付くだろうし、血が地面に染み込み、車が通れる道路脇の現場を鑑定すればDNA採取できるだろう。私が脚本書くのならあの秘密の死体処理場に熱帯魚がらみでピラニアの池か巨大水槽を作り、全部ピラニアに食べさせる設定にするんだけどなあ。その方が面倒くさくなくていいだろう。まあ、ピラニアの飼育費高いだろうけれど。
大体、彼らは快楽や宗教的儀式で人体を切り刻んでいるように見えない。一応、キリスト教ぽい演出があるけれど、取って付けたような感じ。「労働」としてやっているとしか見えないのに、なんであんな面倒なことやるわけ?
唯一まとも?な警部補だって不可解だ。なんでまた敵の牙城の熱帯魚店の駐車場で信行に声を掛けるのだろう。見つかったらまずいだろう。わざとやって敵を慌てさせる作戦ならフォローが都合よくへたれ過ぎる。
熱帯魚店のワケアリ女子軍団も絡んでくるのかなあ、と思ったら目立った活躍はない。ヤクザも威勢よく殴り込みしてくる割にはすごすごと引き下がり過ぎ。もっとしつこく付き纏えよ、と言いたくなる。大体、警察も村田がかなり怪しい人物と睨んでいるのだから、ヤクザたちもそういった情報少しはつかんでいるはずだ。
結局、監督の「美しい地球の実態はこんなもんだ」というどや顔がもろに見えてしまい、鼻白んでしまう。ラストも止めを刺しているつもりかもしれないが、「人生は痛いんだ」という台詞も臭いし、あれだけどうしようもない娘なら想定の範囲内。監督自身がこれ見よがしの演出に酔っている感じがする。逆の意味で説教臭いのだ。その点、説教臭さからの解放を描いている「愛のむきだし」とは対極にある。
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Posted by y0780121 at 19:19│Comments(11)TrackBack(20)clip!邦画ツ、テ | ★1

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エログロ描写満載、R-18指定作品。なんか凄いものを観ちゃった。邦画でもこの雰囲気作れるんだなあ。 実際にあった愛犬家殺人事件等をモデルにした設定ということでしたが、とにかくでんでんさんが怖い。が、所々にブラックユーモアがあって笑ってしまいます。そして軽々
冷たい熱帯魚【いやいやえん】at 2011年08月20日 09:38
『冷たい熱帯魚』  COLDFISH 【製作年度】2010年 【製作国】日本 【監督】園子温 【出演】吹越満/でんでん/黒沢あすか/神楽坂恵/渡辺哲/諏訪太朗/三浦誠己/芦川誠 【イントロダクシ...
冷たい熱帯魚【こわいものみたさ】at 2011年08月21日 23:01
映画の評価(5点満点) ★★★★★ 映画界はいつも完全な悪人を描くことに心をくだいてきた。そして、1991年、1つの伝説的な作品が誕生した。トマス・ハリスの原作をもとにした映画『羊たちの沈黙』である。それまでの悪人と違い、『羊たちの沈黙』に登場する悪人ハンニバル
『冷たい熱帯魚』後頭がグラグラする衝撃作【映画をもっと楽しく![シネマポスト]】at 2011年10月30日 19:16
この記事へのコメント
1
>自宅にまで帰らせてもらって何の手も打たないというのはリアルじゃない
実際の事件はご存知ですか?

>完全犯罪と嘯いている割に、杜撰だ
この事件では、犯罪を実証する人体に関する物証は結局発見できませんでした
(肉片・血液はいわずもがな骨片・歯は発見されたがDNA鑑定不可なほど高温で処理されていた)
Posted by 通りすがり at 2011年02月16日 09:25
>実際の事件はご存知ですか?

リンクしてあるので読んでください。

Posted by 佐藤秀 at 2011年02月16日 20:13
実際の事件でも細切れにして川に捨てただけですが、物証からの発覚にはなっていません。杜撰に思うかもしれませんが、完璧でした。

社本の立場と同様の人も実際の事件には存在します
平然と人を殺し、物証を残さない人間を前にして、あなたならどう生きるのか。
そんなことを考えさせる映画だと思います。
Posted by   at 2011年02月18日 20:11
>杜撰に思うかもしれませんが、完璧でした。

いや、社本が肉片を捨てているのだから警察に場所を教えれば、血痕も残っているし、殺人を立証できたでしょう。川を捜索すれば肉片も一部見つけられれば遺伝子検査もできるから、映画ではたまたま見つからなかったと考えるべきです。
Posted by 佐藤秀 at 2011年02月18日 20:38
通りすがりですいませんが

この犯行が発覚するとすれば、警察がそれこそ一日中付け回すか、社本が裏切るしかないでしょうが
もともと社本が気の弱い人間だと調査した上で解体現場に立ち会わせ共犯関係を結んだのですから裏切る可能性は低いでしょう
もしそれでも絶対裏切ると感じるのならフィクションにおいてリアリティのある共犯関係というのは難しいのではないでしょうか

また、死体処理に関してですが確かに肉も燃やした方が確実ですが、映画のやり方でも十分だと思います
実際、多少の血痕や肉片を見ただけでは一般人は殺人と結びつけて考えません

Posted by    at 2011年02月22日 05:12
それにピラニアに食べさせるのはよりダメでしょう
川から肉片が見つかったとしてもすぐに犯行に結び付きません
誰が遺棄したのか立証は困難です

しかし、村田の飼っているピラニアの水槽などから肉片や血痕が見つかれば村田は言い逃れできません
Posted by    at 2011年02月22日 05:16
社本は娘を人質にとられて脅迫されて仕方なく補助しただけで共犯じゃないですが何か。
肉片が流れた川の上流に一軒家があれば当然捜索されるでしょうね。ピラニアの水槽はその一軒家そのものが怪しまれない限り大丈夫です。
Posted by 佐藤秀 at 2011年02月22日 18:07
ピラニアに食べさせるとかワロタwww
Posted by 。 at 2011年08月10日 23:38
あいたたたた……

この作品は実際に起きた事件や手口を元にしているんですよ。
「死体なき犯罪」も実際に成就されたわけですし、その手口を批判するのは失笑ものです。
実際の所、社本は実際警察にタレ込むこと無く、この他にもう一人犠牲者が出ています。
社本の気の弱さを見越しての犯罪だったのでしょう。

映画を批評するのはいいけど、事前に調べたほうが良いのではないでしょうか。
Posted by   at 2011年08月27日 13:36
>この作品は実際に起きた事件や手口を元にしているんですよ。

あいたたたた……最初にそう断り書きしているのに読んでないの?
Posted by 佐藤秀 at 2011年08月27日 21:23
4
初めて失礼します、映画の評価は人それぞれですが、
自分は、実際の犯罪をモチーフとしたエンタテイメント
としては非常によくできていると思いました。

「共犯者」などを読むと、元ネタの事件の犯人Sも人たらしというか、ああいう性格だったようです。

特に、解体時に頭がい骨を社本に見せるシーンや、
「ボディを透明にする」など実際に愛犬家殺人事件の犯人Sが言ったセリフも出てきて監督のこだわりを感じました。

最後はびっくりしたけれど、確かに過剰演出だったかも
しれませんね。あっさりあのまま社本逮捕でも良かったと
思います。

この監督さん、あと2本実際の事件をモチーフにして
映画作りを進められるらしいので個人的には期待して
います。「トリカブト殺人事件」などを題材に
やってくれると映画としては面白いと思います。




Posted by ニシ at 2011年08月29日 08:05