2011年03月03日

死にゆく妻との旅路3

shiniyukutuma公式サイト。清水久典原作、塙幸成監督、三浦友和、石田ゆり子、西原亜希、掛田誠、近童弐吉、黒沼弘己、でんでん、松浦祐也、十貫寺梅軒、田島令子、常田富士男。9か月に及ぶ末期癌患者の妻との車旅行の末に妻を失くし、保護責任者遺棄致死容疑で逮捕され原作者の実体験に基づく。
いかにも真面目一本、不器用で世渡り下手のような久典(三浦友和)と久典だけに寄り添うことが人生だった妻ひとみ(石田ゆり子)。
石川県七尾市で縫製工場を経営していた久典はバブル崩壊と割安な中国製輸入品に押され、自己破産寸前に追い込まれる。ひとみは癌の手術をしたが、余命は知れていて何もかも放棄するかのように仕事用のワゴン車であてどもない妻との旅に出かける。持ち金50万円。
親戚に頼れば何とかなるとか、そういう問題でもなさそう。仕事ばかりに明け暮れる平凡な生活に付いて来てくれた死にゆく妻へのせめてもの恩返しだったのかも。観光地に行けば住み込みの仕事がいくらでもあると久典は言うが、本気とも思えないし、本気でないとも思えない。かなり中途半端状態なのだ。
中途半端なのは旅そのものもそうだ。全国を回るつもりがだんだんと自然に故郷の北陸に戻って来てしまう。故郷を棄てる訳でもなく、故郷に戻りたい訳でもなく、ただただ決断を先送りする中途半端な旅なのだ。
立ち寄った「初めてのデート」が自殺名所の東尋坊というのも2人の心象風景を暗示する。2人はまともなデートする暇もなく結婚していたのだ。しかも、旅の途中で再び東尋坊に戻って、ひとみは「私たちの初めてのデートの記念の場所」と言う。ひとみにとっては、大急ぎで結婚生活をリセットし、リプレーしている風情だ。人生初めてのツーショットのプリクラまでする可愛さだ。正に死に際の走馬灯を地で行っているのだが、現実には走馬灯自体が現実に基づかない嘘の走馬灯であることがこの夫婦の悲しさを物語る。
久典は特に何も言わないが、言わずとも自分たちのしていることを自覚していたろう。自覚してはいるが、自暴自棄にも成り切れず、後戻りもできず、ただただ成り行きに任せるしかなかったのだろう。
2人は恐らく心中を旅の途上でずっと意識していたのだろう。というより、2人は緩慢な心中を中途半端に試みているようにも見える。そもそも末期癌患者を車生活させるなんて延命とは逆の方向だ。
久典は旅の途上、畑からサツマイモを盗むのだが、以前には盗むことなど考えもしなかった真面目人間だった筈。盗む時も生真面目に「市場に出せない規格外のものだからいいさ」と言い訳している。自分自身も世間から“規格外”になったことを自覚しつつ、盗みさえも中途半端だ。
氷見市内の病院で調子が悪くなったひとみを診察させるが、応急治療をしたのか、2人は再び病院を抜け出す。そして末路が見えて来る。
優柔不断な久典を刑事のように「非常識」と指弾することもできるが、人生での進退窮まる状況というのは当事者しか理解できないものだろう。久典は旅しながらもずっと立ち往生していたのだ。
ところで、三浦の共演者妻役の石田ゆり子は実際の妻の三浦百恵さんをスレンダーにした清楚な美人で顔立ちが少し似ている。
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Posted by y0780121 at 21:48│Comments(0)TrackBack(6)clip!邦画シ | ★3

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