2011年05月22日

星を追う子ども4

本当は怖いほど悲しい別れの物語?
hoshiwoou公式サイト。英題:Children who Chase Lost Voices from Deep Below。新海誠監督、(声)金元寿子、入野自由、井上和彦。父親をなくし母子家庭の主人公の少女アスナがいきなりJR(国鉄?)の線路端で昼寝から目覚めるところから始まる。今は懐かしいキハ58が国鉄時代のオリジナル塗装のまま走っており、村には兵庫県にある山陰本線の余部鉄橋のような高架橋がある。もっとも、それも昨年架け替えられて今はコンクリートの余部橋梁になってしまったが。
実際には信州の山奥の村が舞台なのだけれど、事ほど左様にこの物語のテーマも役目を終えたものとの別れと追憶らしい。
アスナの担任の先生は既にお腹が大きく産休になり、新任の妻に先立たれているモリサキに替わる。死んだ人々、これから生まれて来る生命とが交錯する象徴的な出来事。
地下世界のアガルタというのは「サウスバウンド」にも喫茶店の名前で出てきたから結構お馴染のアイテム。英題では、地下世界を意識しているのだけれど、アスナは真逆に星を見つめる少女。けれど、アガルタの世界に行っても同じように天の川は美しく輝いているのだから地下世界というより現実を裏返したような世界。
“余部鉄橋”から分かるように、鉄橋の下は現実的なアガルタの世界。もっと露骨に言えば飛び降り自殺にはうってつけの場所だ。実際、少年シュンが飛び降り自殺したようなことが暗示されている。
さらにアスナがアガルタで出会う幼子はちょうど父親が死んだ頃のアスナとよく似ている。シュンと対のようなシンも弟としてアガルタにいる。とすると、アガルタにアスナを連れて行くモリサキってアスナの死んだ父親ということにならないか。死んだ父親はアガルタでは生きており、逆に地上で生きている母親はアガルタでは死んでいるという逆転現象が起きているのではないか。実際、モリサキは他の児童たちには気味悪がられている。
そして、産休で一時休んだ女教師って、アスナが生まれる前の若いアスナの母親ではないのか。現実の母は看護師だが夜勤が多く、看護師としての存在感はアスナにはない。
これから生まれて来る赤ちゃんはアスナ? それを暗示するようなシーンとして、アスナがバスタブの水の中に頭まで浸かってしまうシーンがある。アスナは浸かっていても呼吸困難にならずに気持ちよくバスタブの水の中で眠りこけている(よく眠る少女だこと)。このシーンはそのままアガルタにある比重のない、そのまま水を飲んでも呼吸ができる不思議な水と結びつく。この不思議な水って明らかに子宮の中の羊水のメタファーだろう。アガルタでも母性を怪物化したような門番に呑み込まれて赤ちゃんに戻り? やがて生まれ直すようなシーンがある。
そうすると、少年シュンというのも実は父親の分身なのかと思えて来る。彼は鉄橋で飛び降り自殺したのだろう。シュンは鉱石を持っているが、それは父親の形見の鉱石ラジオと同じものだ。だからこそアスナは冒頭で、父親を偲んで鉄橋近くの線路でうたた寝していたのだ。シュンと出会うのも鉄橋の上。
そもそも鉱石ラジオというのは鉱石の結晶を利用しており、地下世界のアガルタと通信する手段としてある。そこから聞こえる声はアガルタからの声だ。英題ではlost voicesとあるが、単に死んだ父親だけでなくアスナの過去の幼い頃やはたまた生まれる前の原風景からの声ということになる。
ここでは夢と現実も裏返しになっていてアスナが覚醒している時は実はアスナが夢の世界にいることが分かる。そして、この長閑な山村そのものが今の日本では地上に存在するアガルタなのだということになる。

新海誠原監督の他作品:「言の葉の庭」。
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Posted by y0780121 at 20:18│Comments(0)clip!アニメ邦画ターワ | ★4
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