2011年06月28日

BIUTIFUL ビューティフル4

この世に居場所のない男の帰る場所
biutiful公式サイト。原題:BIUTIFUL。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督、ハビエル・バルデム、マリセル・アルバレス、エドゥアルド・フェルナンデス、ディアリァトゥ・ダフ、チェン・ツァイシェン。 イントロの幻想シーンがラストでもう一度繰り返される。ウスバル(ハビエル・バルデム)の父親は海の音と風の音を声帯模写で教える。海の音とは母親の心臓の拍動と血流の音、風の音とは母親の呼吸する音をウスバルが胎内で聞いた音だろうか。
“赤ワイン”がウスバルに死の宣告を告げる時、2か月ほどの余命の物語が始まる。何とまたスペインらしい宣告の流儀だろう。同じスペインを舞台にして同じように“赤ワイン”を死の宣告に使った「アンダルシア 女神の報復」とでは、何と言うか、コクが違い過ぎる。幸福の象徴が悲惨さの象徴になってしまうとは。
バルセロナで不法移民労働者のブローカーで生計を立てるウスバル。セネガル人母子、中国人母子に特に親切にするのは、自分自身が生まれた時には父親が写真一枚残して去ったことと重なっている。不法移民たちは「ここには居場所がない」から金を貯めたらさっさと帰国するつもりだ。
しかし、居場所がない点ではウスバルはそれ以上で、帰るべき国さえない、真性の居場所なき男。子供に英語のスペルを発音どおりに“biutiful”と教える無学。残される子供たちに如何わしそうな霊媒師らしき女性から勧められたインチキぽい石を贈ることだけ。母から受け継いだダイヤモンドの指輪と落ちぶれぶりを現しているかのよう。
死の兆候は幻視としても現れる。古いアパートの腐りかけたような滲みの天井に時々現れる教会の天井画の天使のようなウスバルの皮肉。現実なのか幻視なのか分からないような海に浮かぶ中国人不法労働者の夥しい遺体。父親が言った「海」。彼らは父親が言った「風」に流されたのか、海岸に次々と漂着する。物語とは別の意味でこのシーンは西洋人の、台頭する中国への潜在的な恐怖心、敵意を感じさせる。
ウスバルは中国人母子の遺体に涙し、セネガル人母子をアパートに連れて来て、躁鬱病で危険な別れた妻の代わりに子供たちを託そうとする。ちなみに元妻の病名躁鬱病は英語で“bipolar”。タイトルの“biutiful”の“bi”も意外とウスバルの無学だけでなく、この世は美醜の両極が同居する場所だということを表現しているのかもしれない。
セネガルの母は懇願も空しく帰国してしまうが、長女のアナが嘘をつく。「戻ってきましたよ」。ウスバルはその声を本当にセネガル人と思ったのか、アナが自分のためにセネガル人の声色を真似たと思ったのか定かでない。いずれにしても、安堵して、胎内回帰しただろうことは想像され、唯一の救いとなる。
Clickで救えるblogがある⇒人気blogランキングにほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ


Posted by y0780121 at 23:01│Comments(0)TrackBack(17)clip!洋画A-M | ★4

この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/y0780121/50637133
この記事へのトラックバック
Biutiful◆プチレビュー◆このビターな“余命もの”は、安易な救いとは無縁。ハビエル・バルデムが渾身の演技を見せる。 【70点】 大都会バルセロナ。ウスバルは、不法移民への仕 ...
映画レビュー「BIUTIFUL ビューティフル」【映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評】at 2011年06月28日 23:34
『21グラム』、『バベル』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督最新作。バルセロナを舞台に、移民や不法滞在者への仕事のブローカーで稼いでいる男が末期がんに冒される。絶望に打ちひしがれながらも、残された子供たちの為に生き抜こうとする姿を描いている。2
BIUTIFUL ビューティフル【LOVE Cinemas 調布】at 2011年06月29日 00:10
ランキングクリックしてね ←please click チラシのバビ様の顔アップ、目だけでも十分訴えられる説得力とその凄い存在感 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作「BIUTIFUL ビューティフル」は6/25〜公開決定 アカデミー賞主演男優賞、英国...
BIUTIFUL ビューティフル / Beautiful【我想一個人映画美的女人blog】at 2011年06月29日 00:31
スペイン・バルセロナ。 不法移民たちの就労手配や、麻薬取引、死者と話す霊媒師、そんな非合法な仕事で何とか生計を立てている中年男ウスバルは、2人の子供たちと暮らしている。 前立腺癌で余命2ヶ月と宣告された彼は、躁鬱病で薬物依存から更生中の別れた妻マランブラと
BIUTIFUL ビューティフル【象のロケット】at 2011年06月30日 02:28
「Biutiful」 2010 メキシコ/スペイン ウスバルに「宮廷画家ゴヤは見た/2006」「コレラの時代の愛/2007」「それでも恋するバルセロナ/2008」「食べて、祈って、恋をして/2010」のハビエル・バルデム。 マランブラにマリセル・アルバレス。 アナにハナ・ボウチャイ
「BIUTIFUL ビューティフル」【ヨーロッパ映画を観よう!】at 2011年07月03日 21:54
BIUTIFUL ビューティフル  原題:Biutiful 【公式サイト】  【allcinema】  【IMDb】 実際に高い失業率や移民が社会問題となっているバルセロナの裏社会を背景に、ある日突然余命2か月を宣告...
映画レビュー 「BIUTIFUL ビューティフル」【No Movie, No Life (映画・DVDレビュー)】at 2011年07月04日 00:45
第63回カンヌ国際映画祭主演男優賞受賞、アカデミー賞主演男優賞・外国語映画賞ノミネートの、 2010年メキシコ映画です。 日経夕刊「シネマ万華鏡」で黒澤明の「生きる」へのオマージュと紹介されていたので見ることに。 の数・・・いくつだったか、忘れました   ...
ビューティフル BIUTIFUL【映画の話でコーヒーブレイク】at 2011年07月04日 21:30
1日のことですが、映画「BIUTIFUL ビューティフル」を鑑賞しました。 バルセロナの裏社会で生計を立て 暮らしている男 しかし 余命が少ないと知り・・・ 2人の子ども、情緒不安定な妻 霊媒師、闇取り引き 生きるために、子どもたちのために まだ 死ねないと 必至に...
生きる男【笑う学生の生活】at 2011年07月11日 22:58
 我が家は淀川のスーパー堤防の上に建っているマンションの川側の8階。 そういえばこの夏、夕食にお鍋をやった日以外にクーラーは一度も使っていない、寝室もだ。 扇風機だけで平気、昼間だと俺ならさすがに我慢できないかも知れないけど、妻は別にへっちゃらだそうだ、...
BIUTIFUL ビューティフル 生きるってことは辛いのだけど、しかししっかりと意味があることなのだ。【労組書記長社労士のブログ】at 2011年07月12日 10:39
 BIUTIFUL  サグラダ・ファミリアを遥かに望む、スペイン・バルセロナの貧民街。幼い二人 の子どもを抱え、裏社会に生きる男ウスバル(ハビエル・バルデム)。彼は末期 癌に侵され、余命2ヶ月...
死にゆく者への祈り〜『BIUTIFUL/ビューティフル』【真紅のthinkingdays】at 2011年07月15日 21:46
 『BIUTIFUL ビューティフル』をヒューマントラストシネマ渋谷で見てきました。 (1)映画の主人公ウスバル(ハビエル・バルデム)は、よくもまあこれだけあるものだと見ている方が感心してしまうくらい、たくさんの問題を次から次へと抱え込みながら、それらをなんとか解...
ビューティフル【映画的・絵画的・音楽的】at 2011年07月31日 07:14
 今回は、ブヒャー!"BIUTIFUL"だってバカじゃねーの!?お前の偏差値カブトムシ程度なんじゃねーの!?でおなじみ『BIUTIFUL ビューティフル』の感想です。  観に行った映画館は信頼のブランドTOHO...
『BIUTIFUL ビューティフル』はカミサマ不在の宗教映画だよ。【かろうじてインターネット】at 2011年08月11日 03:09
11-43.BIUTIFUL ビューティフル■原題:Biutiful■製作年・国:2010年、スペイン・メキシコ■上映時間:148分■鑑賞日:7月10日、TOHOシネマズ・シャンテ■料金:1,600円□監督・脚本・製作:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ□脚本:アルマンド・ボー
映画『BIUTIFUL ビューティフル』を観て【kintyre's Diary 新館】at 2011年09月19日 20:52
かねてより交際のあったスペインの名花ペネロペ・クルスととうとう結婚し、私生活でもノリにノッているハビエル・バルデム。 この映画『BIUTIFUL ビューティフル』は、そんな彼にカンヌ国際映画祭主演男優賞をもたらした作品。 『ノーカントリー』でアカデミー賞助演男優
■映画『BIUTIFUL ビューティフル』【Viva La Vida! <ライターCheese の映画やもろもろ>】at 2011年12月09日 07:00
BIUTIFUL ビューティフル'10:メキシコ・スペイン◆原題:BIUTIFUL◆監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ「バベル」◆出演:ハビエル・バルデム、マリセル・アルバレス、エドゥア ...
BIUTIFUL ビューティフル【C'est joli〜ここちいい毎日を〜】at 2012年01月13日 14:05
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ出演:ハビエル・バルデム、マリセル・アルバレススペイン映画 2010年 ・・・・・・ 6点
死を伝えていくということ 『BIUTIFUL ビューティフル』【映画部族 a tribe called movie】at 2012年04月27日 18:32
☆☆☆★(7点/10点満点中) 2010年スペイン=メキシコ映画 監督アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ ネタバレあり
「BIUTIFUL ビューティフル」【プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]】at 2012年05月16日 11:31