2011年07月03日

小川の辺(ほとり)2

大義なき戦いと脱力感
ogawanohotori公式サイト。藤沢周平原作、篠原哲雄監督、東山紀之、菊地凛子、勝地涼、片岡愛之助、尾野真千子、松原智恵子、笹野高史、西岡徳馬、藤竜也。海坂藩士・戌井朔之助(東山紀之)、妹・田鶴(菊地凛子)、若党の新蔵(勝地涼)の3人の幼少時代の思い出が「小川の辺」であることを除いては取ってつけたようでもったいない。これではストーリーに深みが出てこない。大雨になれば川の水量が増えるだろうことは子供でも分かる。田鶴が意固地になる理由など一つもない。あれじゃまるで田鶴がうつけのように見えてしまう。
いざ対決の後で、田鶴は朔之助ばかり見て、新蔵には見向きもしない。田鶴には朔之助の出現以上に叶わぬ恋慕の相手、新蔵の出現の方が衝撃だった筈だ。なぜ戸惑いもなく新蔵を無視して兄に立ち向かえるものなのか。そもそも田鶴の夫、佐久間森衛(片岡愛之助)の死は田鶴にとってはある意味好都合だから、微妙な当惑があってしかるべきだ。田鶴の行動はあまりに一直線過ぎて、やはりうつけなのかとさえ思えてくる。気が強いという性格なら倒されても河原の石飛礫を投げまくって徹底抗戦するのかと思いきやそこまでやらない。どうも肝心なところで期待を裏切られる。
新蔵も新蔵だ。もたもたしていては田鶴が戻ってくるのは分かっているのに、なぜ佐久間を隠れ家の中で弔う朔之助に進言しなかったのか。周りにある木立の奥で弔えば少なくとも田鶴にすぐに悟られずに済んだものを。隠れ家の中で弔う理由が分からない。
そもそも、佐久間への第一の刺客はなぜ刀さえ抜くことができず、病気になったのか定かでない。考えられることは良心の呵責に苛まれた揚句、心の病になったぐらいだが、その説明もされてない。そもそも第一の刺客は本当にいたのかさえ定かでない。
また、朔之助に代役の白羽の矢が立ったのも腑に落ちない。大勢で佐久間を切れば田鶴が手向かうというもっともらしい理由には説得力に欠ける。田鶴のいぬ間にやれば、一人だろうが大勢だろうが関係ない。大勢の方が事後処理もはかどるだろう。一人だと、いくら朔之助の剣の腕が立つとは言っても、五分と五分、返り討ちにあった場合のことが考慮されていない。
さらにそもそも、脱藩した佐久間を執拗に遠く江戸まで追いかけて仕留める大義がないのだ。佐久間の建白は結果的に認められたのだから、そこまでやる理由などどこにもない。もし、あるとしたら海坂藩の隠れた目的は田鶴のような人間を生んだ戌井家そのものを実質的に取り潰す工作の一環なのかと思えてくる。もし、朔之助が無理難題を断れば、お家取り潰し、もし朔之助が失敗して倒れれば、跡取りがいなくなり、戌井家は衰亡するのは目に見えている。どっちにしても藩の官僚たちには好都合なのだ。父(藤竜也)もそれを悟っているのか、「手向かえば田鶴を切れ」と言ったり、もし朔之助が失敗した場合に備えて遺言らしきものをしたためている。
朔之助も藩の隠れた意図を知ってか知らずか、「ゆっくり参ろう」とかやる気なさ満々。旅の途中、さや侍ならぬ竹光侍が登場するので、いざ決戦の時、新蔵が朔之助に渡した刀は、ひょっとして竹光刀、もしや脱力系に転換かいな、と思えたくらい。
本作のほとんどのシーンが美しい日本の自然の風景で占められるのも、朔之助らの心情をよく表わしていて、本当は朔之助本人が脱藩したいのだろうなあ、と思えてくる。特に関東平野に入り、「どこを見渡しても山が見えないというのは落ち着かないものですねえ」という台詞が印象深い。ラストはナレーションこそないものの、まるで「暴れん坊将軍」のマンネリラストみたいで、「田鶴と新蔵に幸多かれと祈る吉宗朔之助であった」。
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Posted by y0780121 at 18:44│Comments(0)TrackBack(17)clip!邦画オ | ★2

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