2011年07月22日

水曜日のエミリア3

女性弁護士vs.女医
LAOIP公式サイト。原題:The Other Woman。原作の原題は“LOVE AND OTHER IMPOSSIBLE PURSUITS”。ドン・ルース監督、ナタリー・ポートマン、リサ・クドロー、スコット・コーエン、チャーリー・ターハン、ローレン・アンブローズ。ナタリー・ポートマン主演の作品が立て続けに上映されているけれど、本作は実は2009年の作品で少々古くて地味な作品。どうもポートマンの「ブラック・スワン」での祝!アカデミー主演女優賞受賞効果を見込んでしばらくお蔵入りさせられていたらしい。
しかし、内容的にはむしろ「ブラック・スワン」よりはるかに質の高い作品。
ニューヨークで弁護士をしているハーバード大卒のエミリア(ナタリー・ポートマン)は同僚弁護士ジャック(スコット・コーエン)を略奪愛で前妻の女医キャロリン(リサ・クドロー)から奪った身。映画では実際にはジャックがエミリアに一目ぼれした風なのだけれど・・・。キャロリンの実子ウィル(チャーリー・ターハン)を保育園に毎水曜日迎えに行って一緒に過ごすのだが、この継子がいけ好かない。どれもこれも医学に関連する、明らかに実母のキャロリンから伝授されたと思われる知識をひけらかしてエミリアを困惑させる。エミリアにとってこんな知識自体があてつけに思えたろう。
となると、キャリアーウーマン(ちょっと古いか)同士の神経戦的要素が浮かび上がる。ウィルによるキャロリンとの代理戦争なのだ。原題が“The Other Woman”(もう一方の女性)というのも、このためだろう。
ジャックとエミリアの間に生まれたイザベルは生後間もなく乳幼児突然死症候群で死亡するが、エミリアは自分がイザベルを抱きながら居眠りしたから窒息死させたのだと思い込み、いつまでも傷心が癒えない。それすら小生意気なウィルはユダヤの言い伝えまで持出して7日間までは生きてなかったと見なされるから殺したことにならないだのと受け売りする。(本心は)エミリアをいたわるために言ってるのだろうけれど。
実際にはキャロリンだって、嫌がらせでウィルに伝授していたのではないのだろう。ウィルは乳製品を食べると下痢をする体質だが、単にウィルの体を気遣ってのことだと思われる。ところが幼いウィルから聞かされると全てにバイアスがかかって解釈される。こうなると「いたわる」と「いたぶる」という言葉の語源は同じなのかと思わせる。ほめ殺しなんて言葉もあるくらいで、言葉は微妙で使い方、使われ方で180度違ってしまう。
一方で、ある意味、「自分が殺した」と信じることがエミリアには心の支えだったのだろう。元々略奪愛という負い目があり、負い目を補完するために他のことも自分自身になすりつけて自分を罰しているようなのだ。
しかし、最後にキャロリン自身が専門知識を動員して直接エミリアに止めを刺す。検死の結果は、エミリアの思い込みをことごとく否定し、純粋な突然死だったことを実証する。キャロリン自身が再婚し、子供を生むと、同時にエミリアとウィルとのわだかまりも消失する。今後、2人の女性が親戚同様の付き合いを始めるのだろうなあ、という予感を残して終わる。
結局、一番駄目なのはあまり空気が読めてないジャックということになるのだろうか。エミリアの父親については少しストーリーを広げすぎたきらいもある。リサ・クドローはポートマンに負けておらず、いい味出していた。
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Posted by y0780121 at 08:55│Comments(0)TrackBack(11)clip!洋画ス | ★3

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