2011年11月12日

恋の罪2

koinotsumi公式サイト。英題:Guilty of Romance。園子温監督、水野美紀、冨樫真、神楽坂恵、児嶋一哉(アンジャッシュ)、二階堂智、小林竜樹、五辻真吾、深水元基、内田慈、町田マリー、岩松了、大方斐紗子、津田寛治。東電OL殺人事件に触発されたものだが、所謂事実に基づいた作品ではない。高学歴キャリアウーマンが夜は売春していたという三面記事的“衝撃”を思い切り借用したもの。タイトルには「恋」が付いているが、本作には「恋」は出てこない。
園子温監督の作品はどうも相性が合わないようだ。この監督、肩に力入り過ぎてクソ真面目過ぎるんじゃないかと思う。人間の本性というよく分からないものをクソ真面目に追及して「これ見よがし」が結果的に目立ち過ぎてコントの寄せ集めのようなコメディになってしまっている。
女性刑事和子(水野美紀)。実際のOL殺人事件から派生させて造形されたのは一流大学の東都大学准教授尾沢美津子(冨樫真)。菊池寛と三島由紀夫を合わせたような作家菊池由紀夫(津田寛治)の絵に描いたような貞淑な妻いずみ(神楽坂恵)。3人の女性がそろいもそろってこれ見よがしにヘアヌードになってくれて、ちょっと、そのサービス満点な演出、クソ真面目過ぎるのじゃないかと。ちなみにヘアの形状までそろっているというか、付けヘアなのだろうか。
渋谷区円山町という実際の事件のあったラブホテル街の廃アパートでマネキンと接合された女性のバラバラ腐乱死体が発見されるという猟奇事件が発生。和子が現場で捜査するのだけれど、別に彼女が事件を探り出す訳ではない。むしろ和子自身が捜査そこのけで女性の生い立ちを妄想しているのかとさえ思えて来る。実際、現場で被害女性の幻影を見るし、本人が死体現場に寝てオナニーまでする。
妄想と言えば、作家の菊池由紀夫。午前7時に仕事部屋のマンションに向かい午後9時に帰宅という規矩正しい生活は現実にそうだったと言われる三島由紀夫の作家生活からの拝借だろう。精神医学で言う就眠儀礼のようにスリッパを規矩正しくそろえないと気が済まない性格はそのオマケらしい。作品もエロっぽいものばかりのようで原稿用紙がぱらぱらと落ちる場面があり、所謂ありがちな彼の作品=本作と思えなくもない。他に和子が路上で切腹する女性を目撃するシーンもあり、「もし三島が女性だったら」的な着想もあるような。
美津子の大学での講義に出て来る詩人田村隆一「言葉のない世界」の「帰途」も言葉を肉体化するという意味で三島的に翻案しているきらいがある。美津子自身も、現実の部分と美津子自身の妄想の部分とに二分化されている気配があるが、詩のリフレインが不必要にくどい。いずみだって盛んに妄想するシーンが挿入される。あのスーパーでの太いソーセージ試食って正直過ぎて分かりやす過ぎる。
とすると、主な登場人物全員妄想している訳で妄想の乱舞状態。フランツ・カフカの「」が引用されるのだけれど、職業が唯一の存在形式という現代人を表したとされるこの作品、美津子の職業的セックスが唯一の現代人の恋の存在形式=意味とでも言いたいのだろうか。
「帰途」の涙の意味の肉体化つながりなのか、盛んに水の滴りが使われ、雨の滴りから小水の滴りまで様々。舞台挨拶に立った園子温監督によると、和子が殺人現場で寝ている時に顔に落ちて来る水の滴るシーンは監督自ら寝ている水野美紀にまたがって薬缶から水を滴らせて撮影したそうだ。監督曰く「妙な気分になりました」とさ。その撮影シーンを想像すると、ラスト近くの神楽坂恵のはしたないシーンも監督の連想による追加撮影なのかと勘繰りたくなる。
結局、本来なら肝心なはずのマネキンと死体の接合というのはどういう意味があったのか。一応、説明はされているのだけれど、いかにもとって付けた感じは否めない。あの怨念が肉体化されたような婆さん(大方斐紗子)がいかにも取ってつけたお笑いコントのような感じなのだから。マネキン=ニセの肉体=言葉と本物の肉体の接合への渇望=「城」=幼少期の刷り込みとしての父親への愛なのだろうか。
美津子は「堕ちて来い」と言うのだけれど、本作自体が堕ちるところまで堕ちている感じがする。そもそもキャリアウーマンが売春して堕ちるというのならエリート男性社員が買春しても堕ちる筈なのだけれど、そんな話聞いたことがない。まあ、「愛のむきだし」は男性が堕ちる話と言えばそうなのだけれど、解放感があった。
美津子は女性差別は容認しているのだろうか。どころかプロの立ちんぼに対する蔑視さえ感じる。しかも、美津子は実はずっと“貞操”を守っていたことになり、ちっとも堕ちていないことになる。
ラストは本作中に事前説明されていて、「ああ、あれか」と察しがつくのでくどい感じしか受けない。これもまたクソ真面目過ぎる。
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Posted by y0780121 at 23:30│Comments(2)TrackBack(19)clip!邦画コ | ★2

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この記事へのコメント
こんにちは、園監督作品はこれが初体験でしたが、やはりインパクトは強烈でした。

個人的には監督の奥さんでもある、神楽坂恵みさんの使い方が上手かった。やはり彼女は脱いでからの印象が強かったのと、鏡の前でフランクフルトを売る練習をする姿は滑稽でもありました。
死体の接合、意味は薄かったですね確かに。
Posted by kintyre at 2012年03月10日 11:10
まあ、マネキンと死体の接合は言葉と肉体の一体化という意味なんでしょうけれど、無理矢理感がありましたね。
Posted by 佐藤秀 at 2012年03月10日 19:55