2012年07月04日

きっと ここが帰る場所2

TMBTP公式サイト。イタリア=フランス=アイルランド。原題:This Must Be the Place。パオロ・ソレンティーノ監督、ショーン・ペン、フランシス・マクドーマンド、ジャド・ハーシュ、イヴ・ヒューソン、ケリー・コンドン、オルウェン・フエレ、ハリー・ディーン・スタントン、ジョイス・ヴァン・パタン、デイヴィッド・バーン。ロック・シンガーとして成功して引退した中年のシャイアン(ショーン・ペン)はロック・シンガーになったために父親と30年間離縁状態になっていた。
その穴埋めのために死んだ父が収容所で虐待されて追い駆けていたアメリカにまだ生きているというナチスのSS将校の残党を探す旅に出る。けれど、生きていても90歳を超えていると思われる将校への復讐はあまりに取って付けたもので、真の目的は親不孝だった父への償いの旅といったところ。しかし、それすら建前のようでシャイアンは飛行機が怖いことを理由に客船でニューヨークに戻り、父の臨終に間に合わない親不孝をしている。このエピソードからすると、彼が父と和解するつもりはなかったのかもしれない。むしろ、空白の30年を埋める旅というのが実態に近いのだろう。
シャイアンはダブリンの豪邸に隠棲していて妻は消防士のジェーン(フランシス・マクドーマンド)。なぜ元ロックスターの妻が消防士なのか唐突なのだけれど、ジェーンはシャイアンの母親らしき女性(オルウェン・フエレ)とよく似ていて、ここで交流している人物たちはいずれも生活感がなく、非現実的な匂いがする。ダブリンは言わば彼の空白の30年間を過ごした精神世界のようにも見える。
母親に似た女性は旅の途中でも現れ、レストランの厨房で働くレイチェル(ケリー・コンドン)も金髪のロングヘアで髪型が似ている。こうなるとシャイアンは母を愛しても父は本気で愛せなかったという現実がほの見えて来る。実の母親はもう死んでいるようなのだが。
塩湖なのか雪原なのかよく分からないニューメキシコの場所に立つ家に元SS将校は隠れていた。彼は確かに父を虐待した張本人だが、収容所の空に神を見たと告白すると、この隠れ家自体が収容所のように見えて来る。そして、シャイアン自身、父に対してある意味“虐待”をしていたと思ったのかもしれない。そして、このシーン自体に現実感が剥ぎ落されていて、結局、シャイアンはダブリンにいても旅の中にいても半分幻想のような状態であることには変わりない。
タイトルと裏腹に彼の帰る場所は現実にはなく、幻想の母しかなかったのかもしれない。

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Posted by y0780121 at 22:06│Comments(2)TrackBack(7)clip!洋画キ | ★2

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☆☆☆★(7点/10点満点中) 2011年イタリア=フランス=アイルランド合作映画 監督パオロ・ソレンティーノ ネタバレあり
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この記事へのコメント
何とも想像の世界の話だったなぁと。特に説明ないですしね。ちょっと思ったんですが、彼って多分めちゃくちゃ金持ちですよね?何だかセレブの気まぐれに見えないことも…。
Posted by KLY at 2012年07月05日 00:56
>何だかセレブの気まぐれに見えないことも…。

それを言っちゃあおしまいよ、ということになりそうで。
Posted by 佐藤秀 at 2012年07月05日 07:49