2012年07月14日

ヘルタースケルター3

helterskelter公式サイト。岡崎京子原作、蜷川実花監督、沢尻エリカ、大森南朋、寺島しのぶ、綾野剛、水原希子、新井浩文、鈴木杏、寺島進、哀川翔、窪塚洋介、原田美枝子、桃井かおり。「しっちゃかめっちゃか」を意味するタイトルの原義は遊園地の螺旋状滑り台。ビートルズの曲“Helter Skelter”を終末思想と解釈したカルト殺人教祖チャールズ・マンソンが起こした殺人事件現場にこのタイトルを血で書かせたとされている。
本作もりりこ(沢尻エリカ)という偶像をなぶり殺しするという意味では平仄は合っているし、映像的にも血生臭い色彩で構成されている。全身整形で多数の犠牲者を出す病院長和智久子(原田美枝子)はさしずめマンソンのような位置。
りりこは色々な意味で周りをなぶっているように見えて、実はなぶられている。女性タレント事務所長(桃井かおり)は自分のレプリカントとしてりりこを改造する。実際のりりこの姿はレディ・ガガを子供ぽくした感じだ。
その意味で、本作はスペイン映画「私が、生きる肌」に良く似ている。違うのは後者がスペイン風芸術至上主義で解説抜きなのに対し、本作は渋谷的刹那主義、使い捨て織り込み済み、検事(大森南朋)までが評論家しちゃって親切に解説してくれていること。
あの高校生の思い切り田舎のイモ娘の妹というのは微妙で、当然全身整形する前のりりこのプロトタイプな訳だけれど、今のりりこが会う気になるのかという心理的な問題がスルーされている。普通に考えればお互い会いたくないだろう。お互いにキモさを再確認するだけだろうから。にもかかわらず仲が良いというのは姉妹が何か不幸なバックグラウンドを共有しているのだろう。
なぶり殺しが本格化するのは若手新人モデルこずえ(水原希子)が登場した時。その瞬間、りりこは秒殺されている。適当な比較対照が登場すると、りりこはいかにも不自然な美しさで笑い方も泣き叫び方も甘っちょろい田舎娘に戻っている。そうなると、さらけ出してくれるおっぱいやお尻までがイモっぽく見えるから不思議だ。
こずえはいながらにしてモデルで、作り物に対して歯牙にもかけない強力な無関心という武器を持っていた。女優対女優として比較してみても、力量は明らかに水原の方が上。沢尻は実質ワイドショーネタという“美容整形”で人気を維持している作り物の存在だから、その意味で似合っている役とは言える。
色彩は「シングルマン」を見た時の印象とどこか重なるものがあり、マンションの扉の色までこだわっている。やたら早回しが多いのが少し鼻につく。後半になるとだんだん「ブラック・スワン」ぽくなって来る。あの黒い羽はここでは赤い羽に変化している。りりこの幻覚も、特にラストの記者会見も。そもそも、「ブラック・スワン」の主人公も周りからなぶられていた。
ちなみにこの会見シーンのフラッシュや机に並べられたマイクまでが画一的でCGの作り物ぽいと言えば作り物ぽく、最後まで作り物コンセプトに拘っている気はする。
ついでに最後でなく冒頭の記者会見に「愛と誠」で「君のために死ねる」の台詞を吐いた斉藤工がカメオ出演。意外と本作のコンセプトと関連していたりして。
Clickで救えるblogがある⇒人気blogランキングにほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

Posted by y0780121 at 21:13│Comments(6)TrackBack(17)clip!邦画ヒーホ | ★3

この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/y0780121/50721938
この記事へのトラックバック
岡崎京子の同名人気コミックを映画化。全身整形によって究極に美しさを手に入れトップモデルへと上り詰めた主人公が、後輩モデルにその座を奪われたことをきっかけに心も身体も壊れていく様子を描く。主人公には『クローズド・ノート』の沢尻エリカ、監督は『さくらん』の蜷
ヘルタースケルター【LOVE Cinemas 調布】at 2012年07月14日 21:26
アリアドネの糸。幻の青い蝶。見たいものを、見せてあげる。
ヘルタースケルター【悠雅的生活】at 2012年07月14日 21:52
ヘルタースケルター 映画・原作 公式ガイドブック (Feelコミックス)クチコミを見る◆プチレビュー◆全身整形の美女りりこの疾走を活写する「ヘルタースケルター」。沢尻エリカのいな ...
映画レビュー「ヘルタースケルター」【映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評】at 2012年07月15日 00:06
なんかもう色々げんなりすぎて疲れた。
ヘルタースケルター【Akira's VOICE】at 2012年07月15日 10:51
☆日本を席巻するトップモデル・リリコの美しさの秘密と、その崩壊を描いた物語。  これは、古来から語り尽くされてきた「美の追求と維持」と言う、女性の永遠のテーマであり、  これまでは、「『白雪姫』の女王」に代表されるが如き<物語の一要素>としかしていなか...
[映画『ヘルタースケルター』を観た(超短信)]【『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭】at 2012年07月15日 14:04
沢尻エリカ主演、蜷川実花監督による全身整形美女が芸能界で頂点に上り詰めて、整形の後遺症で徐々に精神的にも肉体的にもおちぶれていく様子を描いている。蜷川実花はもとは写真家である、写真を多用した表現のセンスがすばらしい。沢尻エリカ、水原希子、桃井かおり、寺島
ヘルタースケルター【とらちゃんのゴロゴロ日記-Blog.ver】at 2012年07月15日 14:49
「ヘルタースケルター」(R15+指定)をは岡崎京子原作の作品で全身整形で芸能界のトップに立ったモデルが整形の後遺症に苦しみながら芸能界の厳しさに飲み込まれていくストーリーで ...
「ヘルタースケルター」全身整形で頂点に立った先にみたトップからの転落と死ぬまで続く後遺症の苦しみ【オールマイティにコメンテート】at 2012年07月17日 00:04
監督:蜷川実花出演:沢尻エリカ、大森南朋、寺島しのぶ、水原希子、新井浩文、綾野剛、鈴木杏、原田美枝子、桃井かおり日本映画 2012年 ・・・・・・ 6点
現代の白雪姫と魔女 『へルタースケルター』【映画部族 a tribe called movie】at 2012年07月17日 02:59
映画の感想の前に。 この作品の中でりりこの部屋に自分の写真がいっぱい飾ってあるんだけど 枝葉な話ではありますが、 沢尻エリカの写真集みたいな映画だったなとも。 胸まで見せちゃう、エッチなシーンまで撮っちゃうことも含めて。 よくさ〜、落ちぶれたアイドルとか...
「永遠に美しく」笑え。〜「ヘルタースケルター」〜【ペパーミントの魔術師】at 2012年07月17日 12:18
□作品オフィシャルサイト 「ヘルタースケルター」□監督 蜷川実花 □脚本 金子ありさ□原作 岡崎京子 □キャスト 沢尻エリカ、大森南朋、寺島しのぶ、綾野 剛、水原希子、新井浩文、       鈴木 杏、寺島 進、哀川 翔、窪塚洋介、原田美枝子、桃井かおり■
『ヘルタースケルター』【京の昼寝〜♪】at 2012年07月19日 08:17
〜最高のショーを、見せてあげる〜 2012年 日本映画    R15+指定   (2012.07.14公開)配給:アスミック・エース     上映時間:127分監督:蜷川実花原作:岡崎京子  『ヘルタースケルタ』(祥伝社フィールコミックス)脚本:金子ありさ音楽:上...
「ヘルタースケルター」【NAOのピアノレッスン日記】at 2012年07月20日 15:58
女が、ドラマという虚構の世界の階段を上っていく。原作は、高い人気を誇る岡崎京子の伝説的コミックだ。フォトグラファーの蜷川実花監督が映画化した。毒々しく、けばけばしさは半端なものではない。全身整形によって、誰もが羨む美しさとスタイルを手にして、トップモデ...
映画「ヘルタースケルター」―極彩色の虚飾と虚栄にまみれた女の終着駅―【徒然草】at 2012年07月25日 03:52
 その完璧な容姿でトップモデルとして君臨し、芸能界を席捲するりりこ(沢尻 エリカ)。しかし、彼女の美しさは全身整形によって造られたものであり、定期 的なメンテナンスと投薬を必要とした。秘密を抱...
一人の女の子の落ちかた。〜『ヘルタースケルター』【真紅のthinkingdays】at 2012年07月26日 23:26
 岡崎京子原作のコミックを、「さくらん」の蜷川実花監督、「クローズド・ノート」も沢尻エリカ主演で映画化。
「ヘルタースケルター」感想(簡易版)【流浪の狂人ブログ 〜旅路より〜】at 2012年09月20日 19:51
 北朝鮮は、またやっちゃいましたね。極東アジアは、何時のまにやら地球の火薬庫のようなところになってしまいました。とはいえ、それが現実である以上しっかりと受け止め対処し
ヘルタースケルター : バブル期のミュージックビデオ的な【こんな映画観たよ!-あらすじと感想-】at 2013年02月12日 13:29
☆☆☆(6点/10点満点中) 2012年日本映画 監督・蜷川実花 ネタバレあり
映画評「ヘルタースケルター」【プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]】at 2013年05月04日 09:49
まさに、動く蜷川実花アート! ヒロイン、りりこに、エリカ様は見事なまでにハマり役。そして、R指定も納得!です (^^*)岡崎京子の原作の方を先に読んでたので、意外なほど、オハナシが忠実なのに感心してしまったのでした。「ん?」と思わず身を乗り出してしまったのは、
ヘルタースケルター【のほほん便り】at 2014年03月06日 15:40
この記事へのコメント
こんばんは。
沢尻エリカより水原希子の方が良かっただろうというのは納得です。演技の優劣ではなくて、ちょっとモノが違う気がしました。
Posted by Quest at 2012年07月17日 03:07
>ちょっとモノが違う気がしました。

そうですね。水原希子が登場した瞬間、沢尻エリカがただのダサイ芋姉ちゃんにみえてしまいました。
Posted by 佐藤秀 at 2012年07月17日 10:33
ヘルタースケルター』というタイトルは、やはり、シャロンテート事件を ほうふつとさせる。それを意識するしないに関わらず、この映画を見たいと思った15歳以上の人々(もちろん自分含む)は虚心にスクリーンに向かい合い、2時間の冒険に付き合った、我々にりりこからのご挨拶=あのSMILEが待っているという。。。。
では、この映画に関する、ささやかなる欠点からいきます
原作はりりこが自分の置かれてる状況(とくにあらゆる事への軽蔑を列挙するあたり、圧巻!)や周辺の人々への視線を内的モノローグで語っている。映画は、説明セリフやナレーションを極力排して、映像で語ろうとしていたが、描写がイマイチだから、原作を読まないと、りりこの気持ちが十分に理解できないと思う。
キューブリックへのオマージュねたについて。
水族館のブルーの照明はキューブリックの得意とした、 冷たい青い光が浮かび上がらせる人間性と非人間性へのオマージュだと思うが、残念ながら蒼さが全然足りないし、前振りがあまり効いてない。。。
美しき青きドナウが記者会見直後から流れ出す。
これは2001年宇宙の旅でキューブリックが「人類→スターチャイルド」への進化のBGMとして使ったやりかたのレフレイン、目配せに感じた。これはなかなか効果的だったが、2001年を見てないと、??に思う人もいるかも。水原嬢をまさに襲わんとす、のシーンは、トラック・アップしながら ズーム・アウトする、いわゆる、「めまいカット(JAWSのビーチのシーンでもあったね)」
を使って、生硬な演技をカバーしてやればいいのにと思った。
Posted by マイケルコルレオーネ at 2012年08月03日 15:53
では、賞賛する点です。
沢尻エリカはファムファタールから清楚な美人まで演じられる幅広い演技力と万人を唸らせる美貌を持ってる。ざっと、今の若手女優を見渡しても、両方持ってる人は沢尻嬢以外皆無という気ガス。彼女の
ハートフルな熱演が演出の熱気不足を補填し映画を最後まで牽引する。まさに、テイラーメードな役で水を得た魚である。
オーラス直前、ミニタイガーリリー達の
街、渋谷に羽根が降り始めると、上海で羽根が舞ってるあたり。なかなかの名シーンだった。
性のゴージャスな商品化の象徴=りりこに憧れる女子高生は、もっと幸せになりたいと(もっと欲望を満たしたいと願う)我々の投影した姿だという気がする。
Posted by マイケルコルレオーネ at 2012年08月03日 15:54
あと、りりこの部屋のゴチャ然としてる、ドレッサーに置かれていた、アイズワイドシャットに出てきそうなアイマスクの件。。やっぱり、キューブリックすきなんだなあとオモタ。

また、りりこの肌に突き刺さるメスや羽田ちゃんの持つカッターに、刃物の持つ怖さをあまり感じなかったのは、映倫の審査をにらんだせいか?

ラスト近くの渋谷駅あたりで、鈴木杏の立つ場所にポールみたいのがあって、そこに数字が「123456789」みたいに書き込まれてあったが、あれは偶然?もし演出なら、あの数字は渋谷も含め東京を含む。日本を含んだ、over the world とにかく点在(遍在?)するミニタイガーリリーをカウントする様だと思う 。

検事役の大森さんは、演出力の無い現場では、空気化するから(例:笑う警官)だから、観念セリフを違和感ナシに聞かせるには、それなりの舞台装置+演出が必要だったのでは?
たとえば、りりこ達(美容クリニックでも可)に会いに行こうとしたら、途中で迷路ダンジョンにさ迷い込み、抜け出す方法を探る過程で、観念的なセリフが語られるとか。。それって、「薔薇の名前」そのまんまやん!!
Posted by マイケルコルレオーネ at 2012年08月03日 15:57
渋谷パルコ(スポンサー!)あたりの巨大看板にりりこ写真集復刻の大々的広告が!!!

ミニタイガーリリー達の憧れの対象=グラマラスでゴージャスなアイコン=りりこから、中性的でスキニーだけど、ストイックさが受けたこづえに移ろった後、こづえも消費され尽くそうとしてて、(上海での儚い様子から)
再び、りりこが台頭しようとしている(誰かが仕掛けている)ってな感じかな?
ファッション界のオスカー「CFDAファッション賞」に、名誉賞が設立される(仕掛け人は桃井ママ)
探し当てて、手渡しに行くのは、ゲイのきんちゃんで、取材カメラも同行して中国の魔界へと。。。
てなストーリーを思いつきました。(嘘、これは’79年製作の映画「悲愁」そのまんまだったりw

原作者見てるんではないかな?この映画、桃井ママとの関係とかうっすら似ている。
ファッション業界の華やかさと残酷さとハリウッドのそれ、という違いはあるけれど。
そして、ラストのクライマックス、スクリーンイッパイに映る、りりこのアルカイックスマイル(しかも発信場所もNOWそのもの) は、キューブリックの傑作、フルメタルジャケット(1987年制作だから90年直前だ)で見たほほえみデブの凄絶な微笑が叩きつけた、激動の90年代の予感に対する、混沌の21世紀版のドヤ顔アンサーだと思う。打ちのめされると同時に、なぜか励まされた気がした。
元気がもらいたくなると、自分はまたこの映画を観るだろう。
Posted by マイケルコルレオーネ at 2012年08月03日 15:58