2012年07月24日

少年は残酷な弓を射る5

トマト祭りと胎内回帰願望
WNTTAK0公式サイト。ライオネル・シュライバー原作、イギリス映画。原題:We Need To Talk About Kevin。リン・ラムジー監督、ティルダ・スウィントン、ジョン・C・ライリー、エズラ・ミラー。オープニングは旅行作家のエヴァ(ティルダ・スウィントン)がスペイン・バレンシア州のブニョールで毎年行われるトマト祭りに参加し、トマトまみれになっているシーン。この血まみれのようなトマト祭りの無意味な蕩尽と陶酔が本作の全てを予言しているかのようだ。
エヴァは旅行作家としてインスピレーションを得るためにトマト祭りを実体験したらしい。トマトまみれのエヴァの姿は胎内の赤子のようにも見える。そして実際、エヴァは出産し、作家は育児休業したようだ。
シーンは変わってトマトをぶつけられた家、と思いきや、同じ赤でもどう見ても赤いペイントを投げつけられたエヴァの家。どうも周りの住人から嫌がらせを受けたらしい。
WNTTAK1生まれたケヴィン(16歳時はエズラ・ミラー)はまるでエヴァの作家的インスピレーションを胎内教育で学習したかのような子に育つ。トマト祭りを胎内で体験したかのような性格だ。無意味にウンチをわざと漏らし、無意味に駄菓子を潰し、無意味にペイントをエヴァの部屋の壁に吹き付け、無意味にウィルス入りエロ写真をパソコン内部にまき散らして破壊し、無意味にマスターベーションする。ケヴィンが最終的に無意味にぶつけるものは父(ジョン・C・ライリー)からプレゼントされたアーチェリーの弓。
こう見ると、全てがトマト祭りの変奏だということに気付かされる。ケヴィン自身がエヴァに「意味がないからいいんだ」と毒づいている。トマト祭りだって確かに意味なく楽しい破壊活動だ。
最終的にケヴィンは学校で、家庭で無意味に弓で人を殺戮する。憎らしいと思っていたらしい妹も、愛していた筈の父親も。ということは、ケヴィンは父を愛していたわけでもなく妹を憎んでいた訳でもないことになる。彼の行為は愛憎という意味のある価値観によって制御されているのではなく母親から学んだらしい無意味の快楽というもので制御されていたことになる。母親だけ手をかけなかったのは、同じ快楽を共有する近親憎悪からだろうか。母親の写真が飾られた本屋にケヴィンが立っているシーンは、実はケヴィンの心の故郷がエヴァの本の中にあるように見える。
ある意味、ケヴィンは生まれる前の胎内にいた時が一番幸せでこの世に生れ出されたことを恨んでいる気配すらある。ケヴィン流“トマト祭り”のために体育館を閂で閉じるのは胎内回帰願望を匂わせている。
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Posted by y0780121 at 22:29│Comments(0)TrackBack(12)clip!洋画シヤ〜 | ★5

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