2012年08月03日

デンジャラス・ラン〜今も「遠い夜明け」3

君はよく頑張った。後は任せてくれ
safehouse公式サイト。原題:Safe House(スパイの隠れ家)。デンゼル・ワシントン製作総指揮・主演、ダニエル・エスピノーサ監督、ライアン・レイノルズ、ベラ・ファーミガ、ブレンダン・グリーソン、サム・シェパード、ルーベン・ブラデス、ノラ・アルネゼデール、ロバート・パトリック、ファレス・ファレス、リーアム・カニンガム、ジョエル・キナマン。CIAをめぐるサスペンスアクション体裁だが、デンゼルが製作も務めている点が妙に気になった。
舞台は南アフリカのケープタウンから始まる。デンゼル・ワシントンと南アフリカと言えば「遠い夜明け」もデンゼル演じるアパルトヘイト活動家の黒人と新聞の白人編集者の友情物語だった。デンゼル演じる活動家が殺され、白人編集者が南アフリカを脱出するという点でも、差別の実態をCIAの実態に、急襲される黒人居住地区を隠れ家に置き換えれば本作になる点でも、まるで「遠い夜明け」をなぞっているようでもある。
時代は変わり、物語の文脈も全く違うのだけれど、ある意味、黒人の元CIAの伝説的エージェントのトビン(デンゼル・ワシントン)と新米CIA工作員の白人マット(ライアン・レイノルズ)の友情物語であり、目に見えるアパルトヘイトはなくなっても、目に見えない支配構造が2人に立ちはだかっている。そこには以前は分かり易かった“真実”の価値が暴落し、単なる自己利益のために操作されるネタに成り下がっている世界。夜明けは今も遠い。
CIAを裏切ったトビンは白人に歯向かう黒人であり、攻撃のターゲットになる。マットは新人故に手垢がついてない。トビンは自分を監視するマットに言う。「君はよく頑張った。後は任せてくれ、と言われたら見捨てられ、罪を着せられると思え」。トビンは人の心を操る名人という評判があり、マットは警戒して無視するが、いくら無視しても潜在意識まで無視できない。ジワリジワリ、“教育”は聞いて来る。
マットの恋人(ノラ・アルネゼデール)との電話を盗み聞きしたトビンは再び長広舌をし、「やがて君は恋人を利用するようになる」とマットをゆさぶり、まるでスパイにとって恋人は使い捨てと言わんばかり。なのにマットの「あなたは何度結婚した?」という質問にトビンは「一度だけ」と矛盾するような答えをして黙りこむ。実は本心とは全く違うことを言っていることが仄見える。マットも敏感にトビンが単純な裏切り者でないことを感じ始める。
やがて、トビンがドヤ顔で仄めかした「君はよく頑張った。後は任せてくれ」メソッドをCIA本部の作戦本部長ハーラン(サム・シェパード)から直接電話で言われることになる。ちなみにハーランが首謀者であることは始まって間もなく不自然な指示を出してCIAアフリカ支局長(ベラ・ファーミガ)を戸惑わせるシーンがあることからその文脈では既にネタバレしている。
全てを悟ったマットはまるで結果的にトビンの考えたように操られるかのごとく行動する。トビンに「君は俺より優秀だ」と言われたが、実際その通りにマットはトビンを乗り越えていく。トビンが心を操る人というネガティブな印象操作に釣られるが、実際には黒人解放運動家と同じく説得して内部告発する人だということが分かって来る。
トビンが持っていた秘密情報のネタは今ではそんなに衝撃的でもない。しかし、それは、これまでにも「フェア・ゲーム」という作品があったし、様々な人々の告発の積み重ねがあって衝撃度がなくなっただけで、実体は衝撃度とは無関係に厳然と存在し続けることは変わらない。
単なるサスペンスアクションとして見れば、衝撃度は小さく、娯楽作品として物足りないかもしれないが、それは本作の価値を薄めることとは関係ない。そう考えた私もデンゼルに心を操られた口なのか。
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Posted by y0780121 at 23:23│Comments(0)TrackBack(20)clip!洋画ディ〜ド | ★3

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