2012年09月18日

天地明察3

実学の範囲内にとどまった明察
tenchimeisatu公式サイト。冲方丁原作、滝田洋二郎監督、岡田准一、宮崎あおい、佐藤隆太、市川猿之助、笹野高史、岸部一徳、渡辺大、白井晃、横山裕、市川染五郎、中井貴一、松本幸四郎、きたろう、尾藤イサオ、染谷将太、武藤敬司。江戸時代前期に実在した天文暦学者安井算哲=渋川春海(岡田准一)の生涯をベースにしている。
暦と天文、数学(和算)は切っても切れない関係なのだけれど、さらに囲碁と幅広く学ぶ算哲。囲碁はどういう関係にあるかと言えば、囲碁だって数学的思考の積み重ね。その「どうして負けたんだ」という体験の積み重ねが、やがて800年間変わらなかった暦法を改良するきっかけになっていると思う。数学的な落とし穴を後に日本のニュートンと称される天才数学者関孝和(市川猿之助)の知恵を利用しているフシがあるばかりか、朝廷の政治力を打ち破るために黄門様こと水戸光圀(中井貴一)も利用しているフシがある。
北極星の観測の旅に出る算哲は、やがて結ばれることになるえん(宮崎あおい)との関係を考えると地図作成のための測量で剣岳に登る物語、「劔岳 点の記」をどうしても彷彿とさせる。それにしても、彼らの片腕を平行に上げて歩く姿は、当時の初歩的万歩計なのかと驚いてしまう。歩行距離と方角計算で北極星の角度を当てるゲーム。みんなオタク的に楽しんで仕事をしている。
楽しんでいると言えば黄門様こと水戸光圀(中井貴一)も当時の粋人で、ワイン、肉などをたしなみ西洋かぶれだったそうで、肉を勧められた算哲が思いきってかぶりつき、「うまい」とお世辞を言うと即座に「嘘をつくな」と茶々を入れている。学芸振興に力を注いだ光圀は算哲にとってはなくてはならない存在だったようだ。算哲があわや切腹という場面があるが、光圀は殉死を禁じた最初の君主だそうなのでその部分活かしても良かったのではと思う。
歴史上の科学者を描いたものとしては「アレクサンドリア」があったが、女性自然哲学者ヒュパティアの場合、原理や真理という基礎的な科学を探求して宗教とぶつかる運命にあったのに対し、算哲が追求したのは、暦という実用性に向かっており、あくまで実学が先に立っている点だろうか。
食の場面がたびたび出て来るが、もっともっと真理の方に心が向けば地動説まで行く筈なのだが。本作でも2日間のズレが問題化されたのが改暦のきっかけになっているが、西洋でも、大航海時代に入って日のズレが問題化して地動説に結びついたらしい。日本で最初にコペルニクスの地動説が紹介されたのは徳川吉宗の時代だそうで、算哲が打ち立てた貞享暦は意外と寿命が短く70年程度。18世紀末、最新の西洋天文学を取り入れた寛政暦が採用されるが、算哲ももうひと踏ん張りしていれば日本のコペルニクスと呼ばれたかもしれない。ある意味、宮仕え、今で言えば、サラリーマン科学者の限界だったのかも。
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Posted by y0780121 at 21:56│Comments(0)TrackBack(15)clip!邦画ツ、テ | ★3

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