2013年01月19日

東京家族〜様々な左右対称5

記憶フォーマットとしての「東京物語」
tokyokazoku公式サイト。山田洋次監督、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、小林稔侍、風吹ジュン、茅島成美、柴田龍一郎、丸山歩夢、荒川ちか。小津安二郎監督の「東京物語」(1953)のリメイク。というか、異なる時代背景で左右対称をなした、それ自体がオマージュぽい。今年は「東京物語」60周年であると同時に山田洋次監督の監督生活50周年記念でもある。
オリジナルの「東京物語」は言わば日本を記憶するためのフォーマット。60年前の日本を、今の日本を、さらに60年後の日本人にこの同じフォーマットで記述された二つの「日本」の違いをどう読み取ってもらえるか。そのためのリメイクだろう。その目的からすれば巷間言われているような311の「不自然」な引用など意味がないことが了解される。鼻につくとすれば、観ている側の頭が今現在のマスコミからバイアスを受けているだけのことで、映画の責任ではないだろう。このフォーマットが60年後の観客をも意識して製作されたのなら、60年後の観客の目からは、むしろ、3.11が全く出て来ないことが不自然になってしまうだろうから。
東京郊外にある医院を営む長男幸一(西村雅彦)の家。手前に階段の昇り口、奥に台所のカットは小津特有のもの。昔の急な階段をらせん状の階段の現代の住宅で再現して不自然さがなかった。ここに山田監督の覚悟のようなものを感じる。後でまたこの階段が重要な役割を担うことになるのだが、その決定的場面でも階段そのものは見せていない。
総じてこの医院での家族の会話は木訥調とでも言うべきなのか、一歩誤れば棒読み風。その典型は一家の大黒柱幸一なのだから。これも小津風なのだけれど、さすがにこの木訥調は次男昌次(妻夫木聡)と恋人の紀子(蒼井優)には受け継がれていない。
瀬戸内海の島から上京して来た老夫婦が降りるのは東京駅ではなく品川駅。多分、製作時は東京駅駅舎改装中だったからかもしれない、とは思ったが、新幹線の駅構内だけしか写っていないから無関係のようだ。品川駅ではさりげなく中国語の構内自動放送が流されている。これと左右対称のように横浜の高級ホテルでは富裕層中国人らしき男性客が中国語で居丈高に大声を出してクレームをつけ、老夫婦に少なからぬ影響を及ぼしている様子だ。
tokyokazoku2外国人と言えば、夫婦が観光バスに乗って東京スカイツリーを見上げる時に、夫婦のすぐ後部座席にヨーロッパ系と思える外国人カップルが配置されている。このカップルが印象が良いなかなかのイケメンと美女なのだ。
一方で、昌次と紀子が東日本大震災被災地のボランティアで知り合った設定になっており、とみこが昌次のアパートを訪れた際、予想に反してこぎれいに整えられているのを見て「ボランティア?」と尋ね、昌次が「まあ、そんなところ」と苦笑いする伏線を回収している。さらに周吉が幼馴染の沼田三平(小林稔侍)を訪ねた時、もう一人の遺影が3月11日に亡くなった妻の母と聞いて驚く場面と左右対称になっている。
この二つの内憂外患的左右対称のエピソード、いずれも後で周吉がこぼす愚痴、「日本はどこで間違えたのか」につながっている。
小津作品に特徴的な左右対称のシーンは映像でも発見できる。紀子が昌次のアパートを自転車で訪ねて来る時、左から現れ、角に駐車してある昌次の愛車のイタリア製ポンコツ車を回って、右側に折れていくシーン。アパートを去る時も踏切で左側に自転車に乗った紀子、右側に紀子とちょうど同年齢くらいの、同じ背丈、同じ髪の長さの女性が歩いている。紀子は誰からも好意をもって受け入れられているが、山田監督も「おとうと」でも蒼井優を使っており、役柄だけでなく女優としても好意を受けているようで、かなり監督の思い入れのあるシーンで使われているようだ。他に次女滋子役の中嶋朋子が良かった。特に涙を流すシーンは。

“姉妹作品”:「小さいおうち
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