ハッシュパピー〜バスタブ島の少女〜
地球温暖化のティッピングポイント
公式サイト。Beasts of the Southern Wild ルーシー・アリバー原作、ベン・ザイトリン監督、クヮヴェンジャネ・ウォレス、ドワイト・ヘンリー。本作で史上最年少で米アカデミー主演女優賞にノミネートされたハッシュパピー役のクヮヴェンジャネ・ウォレスの目つきは、どこか「
愛のむきだし」の安藤サクラに似ている。その野生的な暴力性を秘めた目が。
実際、負けん気なハッシュパピー(以下パピー)は心臓に病のある父親ウィンク(ドワイト・ヘンリー)に反抗して胸を殴り、倒してしまう。パピーはハッとするが、ウィンクはその一撃がトリガーになったかのように病に伏せりがちになる。
同時に南極大陸の氷床が崩壊する。パピーの住むバスタブ村はアメリカ・ルイジアナ州の土手に囲まれた低地。地球温暖化で海面上昇すれば沈んでしまう。本作では父親ウィンクの死と地球温暖化によるバスタブ村、ひいては地球そのものの死がパラレルに描かれる。そもそもバスタブ自体が水の惑星地球のメタファー。
パピー自身がナレーターになって「ほんの小さなカケラでも崩れたら世界全体が崩れちゃう」と言っている。これは所謂
ティッピングポイントのメタファーだろう。その小さなカケラの崩壊の原因をパピー自身が作り上げてしまった。
その結果、氷期で滅んだ筈の大型牛オーロックスが復活し、バスタブ村に進撃して来ることに。映像では巨大イノシシのように見えるのだけれど。先生にオーロックスのことを教えられたパピーはもし氷期がなかったら、私たちは食われていたろう、と考える。
災いは大型ハリケーンという形で具現化し、2005年にルイジアナ州に上陸し、ニューオーリーンズを壊滅させたハリケーン・カトリーナと同じことがバスタブ村にもたらされる。ウィンはハリケーンに銃で応戦するが、もちろん通用しない。ここは笑ってはいけない場面。ウィンクは病める文明のメタファーでもあり、文明の利器で温暖化を防ごうとすることの滑稽さも描かれている。
この銃撃シーン、他にもあり、今はバスタブから出て行った母がウィンクに襲いかからんとするワニを銃で仕留めている。なぜかバスタブの女は勇敢だ。その後、パピーはフローティングバーでウェイトレスをしている母親らしき女性にワニ料理を振る舞われる。

荒廃したバスタブに戻ったパピーはオーロックスと対峙する。オーロックスは仲間だと思ったのか、引き下がるのだけれど、もしやパピーに野生のワニの迫力が乗り移って怖気づいたのかとさえ思わせる。ならば、これこそ母の愛だろう。
ウィンクが火葬されて海に出される時、爆薬でいったん引いた筈の海面が再び上昇している。「ほんの小さなカケラでも崩れたら世界全体が崩れちゃう」というプロセスは止まっていないのだ。
ちなみにハッシュパピーというのはアメリカ南部で食されるトウモロコシで作った丸い揚げパンのことらしい。
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出演:クヮヴェンジャネ・ウォレス
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【物語】
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ハッシュパピー 〜バスタブ島の少女〜【風情♪の不安多事な冒険 Part.5】at 2013年04月29日 10:20
原題 BEASTS OF THE SOUTHERN WILD
2012年 アメリカ
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ハッシュパピー バスタブ島の少女 : こういうのを無責任というのでは…。【こんな映画観たよ!-あらすじと感想-】at 2013年12月18日 09:34