2020年05月28日

フルートベール駅で(2014)3

fruitvale公式サイト。原題:Fruitvale Station。フォレスト・ウィテカーら製作、ライアン・クーグラー監督。マイケル・B・ジョーダン、メロニー・ディアス、オクタヴィア・スペンサー、アナ・オライリー、ケヴィン・デュランド。実話に基づく。2009年元旦、サンフランシスコのフルートベール駅で警官の弾丸に当たり死亡した当時22歳だったオスカー・グラント(マイケル・B・ジョーダン)の人生最後の1日を描く。(初出2014年3月28日)
主人公オスカーと同年齢で同じベイエリアに住んでいた監督によると、完全にフィクションなのは、オスカーが車に轢かれた犬を看取る、オスカーの運命を暗示するシーンだけだという。他に娘のタチアナが花火の音を勘違いして「外で拳銃の音がして怖い」というのも脚色なのかもしれないが。
一応オスカーには浮気の経験アリ。本人は1回だけと妻のソフィーナ(メロニー・ディアス)に言うがソフィーナは「見つかったのが1回だけでしょ」と毒づいていた。実際、オスカーは嘘をつくことが多い。オスカーは2週間前にスーパーをクビになっていて、理由は遅刻大杉なため。大麻の売買で1年前までムショ暮らしの経験もあり、今も金に困った時はやっていたようだ。
だけど、これらのエピソードは直接に事件と結び付かない。年末年始の電車のごった返した車内で何が誘発して何が起こるのか分からない。いったん、運命が動き出すと雪だるま式に不運と偶然が重なり一気に無惨な不幸に行き着く。
不幸に至るまで色々な「if」が散りばめられている。
母親ワンダ(オクタヴィア・スペンサー)が「道が混むから電車で行きなさい」と言わなければ。
元の勤め先のスーパーで客の可愛い白人のケイティ(アナ・オライリー)に親切に叔母にまで携帯に電話して魚フライの料理の仕方を教えなければ。
さらにもし大晦日がワンダの誕生日でカニを買ってワンダにプレゼントしようとしていた最中でなかったらここまでケイティに親切にしていたかどうか。文字通り親切が思いのほか仇になるとは。
乱闘の通報で駆け付けた最初に出てくる警官カルソー(ケヴィン・デュランド)が体がでかくなかったら。演じているデュランドは身長198センチ。この威圧的なカルソーがオスカーばかりか乗客までも不必要にパニックに陥らせた可能性がある。
さらにそのカオス的な雰囲気がまだこういう修羅場の経験が不足しているらしい若い警官をさらに緊張させなかったら。実際にオスカーを撃ったのは若い警官。カルソーはうろたえて「なぜだ」と言うのだが後の祭りだ。裁判では殺人ではなく過失致死。意図的に撃ったとは考えにくいから、まあ妥当なのかもしれないが。
ちなみにプラットホームに出されたのは全員黒人。乱闘のきっかけを作ったのは白人だったのだが。警官は女性警官も含めて全員白人。
最後の「if」はもし駆け付けた警官の中に黒人が一人でもいたらオスカーの運命もあるいは変わっていたかもしれない。個人的には白人のケイティがもっと頑張ってオスカーをかばってくれたら違っていたかもしれないとか、色々思う。まあ、これもあのカルソーが怖すぎて・・・。
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Posted by y0780121 at 09:01│Comments(0)clip!洋画フ | ★3
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