2014年04月10日

アデル、ブルーは熱い色5

美尻実存は本質に先立つ
adele公式サイト。フランス映画。原題:La Vie d'Adele:Chapitres 1 et 2、英題:Blue Is the Warmest Colour。ジュリー・マロ原作、アブデラティフ・ケシシュ監督。レア・セドゥー、アデル・エグザルコプロス、サリム・ケシュシュ、モナ・ヴァルラヴェン、ジェレミー・ラウールト、アルマ・ホドロフスキー、バンジャマン・シクスー。昨年のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品。監督はチュニジア出身。チュニジアと言えば、チュニジアン・ブルーで、本作全体の基調色にしているようだ。
チュニジアン・ブルーは家の出窓や扉などが太陽を浴び、まさに「ブルーは熱い色」になってしまう。本作では髪をブルーに染めたボーイッシュな画学生エマ(レア・セドゥー)が見染める高校生アデル(アデル・エグザルコプロス)の体がアフリカの太陽のように眩しいのだ。
ジャン=ポール・サルトル「実存は本質に先立つ
例えば、人間性という例を挙げ、人間性というものは存在するかもしれないが、その存在は初めには何をも意味するものではない、つまり、存在、本質の価値および意味は当初にはなく、後に作られたのだと、この考え方では主張される。
このように、この考えはキリスト教などの、社会における人間には本質(魂)があり生まれてきた意味を持つ、という古来からの宗教的な信念を真っ向から否定するもので、無神論の概念の一つにもなっている。
この台詞を発したエマはアデルに街中で偶然(エマに言わせれば「偶然なんてない」のだけれど。恐らくジャック・モノー「偶然と必然」の引用だろうか。これも無神論の一種。)出逢う。ちなみに「アデル」とはアラブ語で「正義」の意味らしく、エマ=「無神論」の対比で言えば、アデル=「キリスト教」とも読み取れる。もっとも、アデルは「鶏が先か卵が先かみたいで、結局分からない」と茶化すように言ってむしろエマを喜ばせるのだが。
adele3そもそもエマの青い髪=チュニジアンブルーなら、それは既成のキリスト教文明に対するアンチテーゼぽく見える。同じ実存主義文学の巨星アルベール・カミュだってチュニジアの隣のアルジェリアで育った“「異邦人」”だ。
最初の出逢いでエマが熱視線(写真↑)を向ける先はどうもアデルそのものと言うより、アデルの美尻のようなのだ。エマはアデルを恋の相手というよりアデルの肉体を芸術作品として見ているようなところがある。アデルの美尻はオープニングから強調され、ちょうど股の食い込みが目立つように脚の角度を曲がらせてパンツ姿、ジャージ姿でうつぶせになるシーンが何度もある。なぜかアデレが美尻を隠すスカート姿になるのはラストだけだったように思える。
2人は要はレズビアンの関係になるのだけれど、その禁断のベッドシーンでも、エマは上機嫌にアデルの生美尻をパチーンと手で引っ叩くのだ。やりながらパチーン、やった後でパチーンと気持ち良い音が出る。もひとつおまけにパッチーン! 実存を確かめるかのように。「美尻は愛に先立つ」と言わんばかりに。これがまたキリスト教以前の古代ギリシャ的な肉体賛美を思わせる。そもそも演じているアデルはギリシャ系フランス人なのだ。2人は美術館でデートするのだが、いずれも豊満な女性の美尻の彫刻ばかりを見ている。と言うか、エマはこうした芸術作品に倣ってアデルと愛を営んでいるようなのだ。
しかし、彫刻も、エマの描くブルーが基調の絵も永遠であっても、肉体は衰え、愛も衰えることをエマは既に悟っていた。離別して数年がたち、2人はカフェで再会するのだけれど、酒を注文するアデルに対し、エマはコーヒーを注文する。理由は言わないが、酒びたりの生活で肝臓を痛めている気配がある。エマは「人はすぐに老いる。あなたみたいにわざわざ大人に見えるように髪型変えるなんて珍しい」と。アップにされたエマの表情には死の予感のようなものが浮き上がっている。
文学を勉強し、物書きになるのをエマに勧められていたのだけれど、実直な学校の先生を続けていたアデルとの対比が伺える。お馴染みの芸術対実生活というテーマ。
adele2アデルとてエマのような生き方に憧れていた気配がある。エマと分かれて傷心のアデルが海水浴で大の字に海に浮かぶシーン。何か「異邦人」のムルソーのようでもあり、ひょっとしてカミュ=サルトル論争をパロっているのかもしれないとも思ってしまう。アデルの髪がまるでエマの髪のようにブルーに染められる。そして、エマの個展を訪れる時に来ていた鮮やかなブルーの衣装。しかし、その時既にエマはブルーの染め髪をやめている。
個展ではアデルがモデルになった絵が多数並んでいる。アデルが浮気を疑った妊婦のリーズ(モナ・ヴァルラヴェン)がモデルのもあった。やはりアデルはエマにとって芸術作品だった。というか生活人のアデルそのものが芸術的感興を引き起こす対象だった。
それを見届けたアデルは早々に会場を後にする。「生活」に戻るために。恐らくその時が2人の最後の別れになる気配だ。エマは早晩死ぬのだろう。
レア・セドゥーは既にして大女優のオーラが溢れ、アデルは日本でいえば、仲里依紗のような肉肉しいおおらかな可愛さを持った女優なのもお似合いのコンビだ。
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