2014年05月30日

MONSTERZ モンスターズ〜オイディプスの運命5

遠隔操作できないのは自分自身?
monsterz公式サイト。キム・ミンソク監督の「超能力者」のリメイク。中田秀夫監督、藤原竜也、山田孝之、石原さとみ、田口トモロヲ、落合モトキ、太賀、三浦誠己、藤井美菜、森下能幸、平山祐介、松岡恵望子、佐藤詩音、土師野隆之介、松重豊、木村多江。片山祐輔被告の「平気でうそをつく人たち」とか、「ディス/コネクト」とか、最近何かと遠隔操作づいている。本作もPC遠隔操作ウィルスなんて面倒臭いもの使わなくても人を操作できる怪物の話。
タイトルの最後の「Z」は「ワールド・ウォー Z」のパクリぽい。怪物の“男”(藤原竜也)も人を操作する超能力を使えば使うほどだんだんゾンビ化する気配。また漫画の「AKIRA」が“男”の聖書というか、それ以上の意味があるようだ。“男”は20年前の1993年に理解者の母(木村多江)から「AKIRA」の本を手渡されており、もうこれなしでは生きられない気配。
唯一操作できない不死身の男、田中終一(山田孝之)の人生観は「死ぬまで生きる」。「終一」は「終(おわり)」と「一(はじめ)」ぽい。
最初に思ったのは、“男”が唯一操作できない終一とは、自分自身の中にある分身じゃないのかということ。いくら独裁者でも他人は操作できても自分自身は操作できないのじゃないかと。フロイトの言う自我と超自我の関係のような。そうなると、終一がいくら瀕死の重傷を負っても、すぐに回復するというのは了解可能。赤ちゃん助けられたお母さんが花壇の下敷きになっている終一に気付かなかったのではなく見えなかった。これは超能力にかけられた人々が“男”を見られないのと同じ。
終一は“男”が死なない限り、死なないというか死ねない。死ぬ時は2人一緒なのではないか。終一は幼い頃、自動車事故で自分をのぞき一家全員事故死。“男”やその父母はちょうど死んだ終一家族と相補関係にある感じがする。
何となく、ギリシャ悲劇「オイディプス王」をベースにしている匂いを感じる。“男”の右足は幼少期に既に腐りかけているのは踵にピンを刺されたオイディプスの傷に相当するし、自分の息子に殺されると予言された父親が妻に息子を殺せと命じて、妻は決意できずに見逃してしまうことも。オイディプスが後に自分の父親を殺し、母を犯したことを知って自ら目を潰したのはラストで“男”が完全に目をマスクされた姿と重なるようだ。操作できない唯一の存在はオイディプスの運命と重なるようにも見える。
そうなると、幼いころから終一を理解していた刑事(松重豊)はオイディプスを救った羊飼いに相当する。終一は幼少時の過酷な運命を呪い、心の奥底に世の中に対する敵意、殺意を押し隠しているようで、それが“男”に反映されているような。チラリと言及される遺伝子工学は科学の装いをした運命の言い換えのような。
monsterz2そう言えば、2人が戦っている最中、第三者が目撃しているシーンってなかったような。証言者となるべき人はみんな操作されている最中で、証言者になり得ない。iPadで撮影録画されたものを見ても、2人一緒に映っているシーンってなかったような。「ワルキューレ」の演劇会場でも誰も2人を一緒に見ていなかったと思う。と言うか、“男”をはっきり認識できていたのは、刑事だけだったような。
途中から“男”は終一と同じように「死ぬまで生きる」と言い出し始める。言い換えればたとえ呪われているにせよ運命を受け入れるということ。ラストの螺旋階段で終一が「AKIRA」の本に“男”の名前が書いてあるのを見つけると“男”は気が抜けたように脱力し、超能力が使えなくなった様子。多分、そこには「田中終一」と書かれていて、それを見られた瞬間、“男”は超能力を喪失する。名前は社会性を持った記号だろうから。匿名性の暴力がはげ落ちるような。
ところで、なぜ名前が判明しなかったのか。捜査員は“男”の実家を突き止めて踏み込んでいるので名前は判明している筈だが。
やがて螺旋階段を落ちる2人。遺伝子工学、DNAの二重螺旋を意識したような演出で、2人は合わせてDNA(=運命)を構成する存在ということになる。
これで、2人とも死んだか。終一は露店の本売場で「AKIRA」の本を読んでいる。元のフリーマーケット会場ではないか。このシーン、オイディプスを描いたピエル・パオロ・パゾリーニ監督の「アポロンの地獄」のラストと雰囲気が似ていた。
全てが終一の脳内幻想なのか。視線で他人を操作する“男”とは認識者、世界を解釈する人、小説家とか哲学者、あるいは映画監督のような人種は確かに見るという行為、見識で他人を操作している。“男”の目がマスクで封じられたのは、もうそういう生き方をやめるという終一の決意にように見える。

中田秀夫監督の他作品:「怪談」、「リング」、「リング2」、「L change the WorLd」、「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」、「Chatroom/チャットルーム」、「クロユリ団地」。
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Posted by y0780121 at 20:41│Comments(0)TrackBack(18)clip!邦画A-M | ★5

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