2014年07月18日

複製された男〜実はカナダご当地映画4

蜘蛛は実在する彫刻「ママン」
enemy公式サイト。原題:Enemy。ジョゼ・サラマーゴ原作、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。ジェイク・ギレンホール、メラニー・ロラン、サラ・ガドン、イザベラ・ロッセリーニ、ジョシュ・ピース、ティム・ポスト、ケダー・ブラウン、ダリル・ディン、ミシャ・ハイステッド、メーガン・メイン、アレクシス・ウイガ。ポルトガルのノーベル賞作家サラマーゴ原作物は「ブラインドネス」以来。原題は「敵」というより「悪魔」という意味で使われているみたいだ。
映像はずっと黄昏色で昼と夜の境のよう。カナダ・トロントの大学で歴史の講師をしているアダム・ベル(ジェイク・ギレンホール)は独身で、ママのキャロライン(イザベラ・ロッセリーニ)は将来の生活を心配している。言外に「早く身を固めて」と言っているみたい。
歴史の講義の中でアダムは、カール・マルクスの名言
歴史は繰り返す、最初は悲劇として、二度目は笑劇として、過去の亡霊を呼び出し、その由緒ある衣装に身を包み、借りものの言葉を演じる。
を引用する。さらにヘーゲルの弁証法、正反合(テーゼ=正、アンチテーゼ=反対命題、ジンテーゼ=合)も。
アダムの前にDVDの映画を通して現れるアダムをコピペしたようなそっくりの「3流」(ママ曰く)映画俳優アンソニー(ジェイク・ギレンホール)は弁証法における「矛盾」だろうか。しかも、映画の中での役割はベルボーイ(笑)。要はアダム・ベルじゃないか。
アダムの住居はマンション群の中なのだが、なんとアンソニーもアダムと似たようなマンション群の一角に住んでいる。と言うか同じマンションだろう。ここまで来ると、テイストが日本映画の「俺俺」とそっくりに見えて来る。
さらにアンソニーの妻はヘレン(サラ・ガドン)はブロンドの美女で妊娠中でお腹が大きくなっている。アダムの恋人メアリー(メラニー・ロラン)もヘレンとよく似たブロンド美人で、妊娠しているかしていないかの差だけ。この差はママが望む「身を固めては」の反映だろう。
enemy2アダムはある会員制のエロなショーの一室に通っている。瓜二つの2人が最初に会うのも多分、この一室だろう。そして、アンソニーも同じ会員のようで、マンションのドアマン(≒ベルボーイ!)にもカギを貸して喜ばせている。しかも、この部屋、アダムやアンソニーの自宅の部屋と大して変わらないように思える。
本来、実は互いに一卵性双生児だったことを知らなかったということになり、周りもそう思う筈。それを打ち消すための記号として左胸下に共通の傷がある。何か同監督の「灼熱の魂」における踵のタトゥーに似た記号ではある。しかし、その後、さらにそれを打ち消す“記号”まで用意されている。
アンソニーが鏡越しに演技の練習をしていると、まるでアダムとアンソニーが会話しているように見えて来て、それ以降、本作そのものが映画内映画的雰囲気になってくる。その前に高層ビルがDNAのように螺旋状にねじれたり、巨大な蜘蛛が市街に現れたりしていたが。
蜘蛛はオープニングからが暗示的に登場しているが、それはインターネットのwebウェブ=蜘蛛の巣であり、蜘蛛の巣状に張られたトロント市街のトロリーバスの架線、さらに交通事故で大破した車のフロントガラスにできた蜘蛛の巣状のひびへと連なる。
enemy3後で分かったが、この蜘蛛の元ネタは彫刻家ルイーズ・ブルジョワが1999年に制作したカナダの首都オタワにあるインスタレーション・アート「ママン」(写真→)のようだ。「ママン」だからやはりママの分身だろう。
さらに頻繁に出て来るブルーベリー。ブルベリーは北アメリカ原産で、カナダが一大産地。実は蜘蛛の一種でコバルトブルータランチュラって色合いがブルーベリーそっくり。
もう一つ似たものとして、カナダはブラックベリーという携帯端末の発祥の地でもある。植物のブラックベリーはバラ科でツツジ科のブルーベリーと全く違うのだが。アダムが使っていた端末はブラックベリーだろう。この端末でアダムはママと目に見えない蜘蛛の糸でつなげられている。
こうした互いに無関係と思われるものとものの間にある類似性、あるいはコピペ性がオープニングに出て来る「カオスとは未解読の秩序」ということなのだろう。
ラストでトロントの俯瞰映像が出て来るが、一か所、広い更地が見える。ちょうどそこにアダムやアンソニーが住んでいたマンション群がすっぽり収まりそうな土地だ。まるで夢の跡地のよう。エンディングは空間的繰り返しを象徴する同じような様式の高層ビル群。歴史は繰り返し、建物も繰り返す。弁証法的矛盾を孕んで。
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