2014年11月08日

0.5ミリ〜安藤サクラのはまり役4

5mm公式サイト。奥田瑛二製作総指揮、安藤桃子原作・監督。安藤サクラ、織本順吉、木内みどり、坂田利夫、津川雅彦、土屋希望、井上竜夫、東出昌大、ベンガル、角替和枝、浅田美代子、柄本明、草笛光子。 「今日子と修一の場合」に続き、奥田家と柄本家の“家内工業映画”(笑)の第2弾と言うべきか。今回は製作、原作、監督(姉)、主演(妹)、脇役、そしてフードスタイリスト(安藤和津)まで両家でカバーするという壮大さ。
ロケは監督がお住まいの高知県。全く知らないもの同士でも割と気さくに口を聞き合う県民性が気に入ったとか。
オープニングはいきなり介護のシーン。老人をベッドから車椅子に移す時の抱き方とか基礎をまずリアルに見せている。
寝たきり老人の片岡昭三(織本順吉)の冥土の土産の添い寝を頼まれ、何を勘違い?されたのか目の中に舌を入れられ、寝巻にストーブの火が移るのにしばし気付かなかった天涯孤独の身の介護師サワ(安藤サクラ)は派遣会社をクビにされて路頭に迷ってしまう。
けれど、サワには物凄いエネルギーがあり、「日本の悲劇」てんこ盛りのような世界を軽やかに駆け抜けるまるでわらしべ長者のごとし。一見、サワこそ老人を食い物にする悪徳女に見えるのだけれど、そうでないところが綱渡り的に絶妙。自転車泥棒の現場を目撃した茂(坂田利夫)宅におしかけヘルパーして冬物コートをもらい、さらには老人ホームに入る茂の宝物いすゞ117クーペまでもらっちゃう。まあ、しっかり車のメンテをして老人ホーム入所資金蓄えている茂が投資詐欺に引っ掛かりそうにないなあ、というところが引っ掛かるのだけれど。それにしても○○の坂田さん、今も元気で御活躍なのが何より。
5mm2もう一人のサワのメーンターゲット、セーラー服本万引きの真壁義男(津川雅彦)が海軍時代の話をサワに話すシーン。これは実際の元海軍の老人に安藤監督がインタビューして脚本に採り入れたそうだが、一見同じことを壊れたレコードのように喋る認知症のように見えるがこれも綱渡り的。何度も何度も念を押すみたく、リフレインしながらも徐々に次の展開に移っていく。よーく考えると、語りというより真壁義男が自身の御詠歌を吟じているように聞こえて来る。
要は、戦争なんてくだらない、誰も望んでいやしない、相手だってそうだろう、と繰り返すのだけれど、いつの間にか本作のテーマ「死ぬまで生きよう、どうせだもん。」に連なっていることに気付かされる。それに聞き入る安藤サクラの表情が絶妙。
こんなサワを演じられるのは安藤サクラしかいないと思えて来る。明るさと悲しさをないまぜにしたような顔立ち、優しさと時には兇暴さとがないまぜになったような目つき。実際、スカート地獄締めみたいな荒技までやっている。この座標軸の四象限を自由自在に移動してサワを演じるのだ。
5mm38日の舞台挨拶でも津川雅彦氏は「自分が50年かかって追究していた何もしない(生物としての自然な)演技を最初からやっている」と言っていた。一方の安藤サクラさん、感極まって泣き、幕の内側に隠れ、まるで「横道世之介」で吉高由里子がカーテンを巻いて身を隠すシーンをオマージュしたようなことをやっていた。
オマージュと言えば、サワが他人と口を聞くのを忘れた片山マコト(土屋希望)と一緒に食堂でうどん食べるシーン。「今日子と修一の場合」の2人がラーメン屋で食べるラストシーンをオマージュしたのかな。
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Posted by y0780121 at 19:47│Comments(0)TrackBack(10)clip!邦画数字 | ★4

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