2015年05月11日

百日紅〜Miss HOKUSAI〜5

赤い色で想像力が羽ばたく
sarusuberi公式サイト。杉浦日向子原作、原恵一監督。(声)杏、松重豊、濱田岳、高良健吾、美保純、清水詩音、筒井道隆、麻生久美子、立川談春、入野自由、矢島晶子、藤原啓治。世界に大きな影響を与えた江戸の浮世絵師、葛飾北斎の三女として、北斎の晩年はゴーストペインターも務めた説もあるお栄(後の葛飾応為)を描いた。実話にインスパイアされている。
四女の妹お猶(清水詩音)は生まれながら目が見えない。四女が実在していたかどうか不明だそうだが、それだけに想像力を働かせられるキャラになっていて、むしろ本作の想像力の中心的存在。お猶が想像力を働かせて現実の物を見ることと、23歳のお栄(杏)が現実にはない見えないものを描こうという意志とがパラレルになっている。杏は女だてらにズケズケ物を言う少しひねながらもお猶には一際優しい自立心の強い性格をよく表現している。
お猶はお栄ばかりか北斎(松重豊)の想像力の源泉のような存在にも見える。北斎の絵を描く手が伸びて手だけが家を出るのも遊女の顔だけが伸びるのもお猶が想像力を働かせて物を見ることと同じ。このおどろおどろしさはお栄が描く地獄の想像へと結びついているような。地獄の想像はお猶が気付く蚊帳の上の地獄の使者のようでいて優しい動物、バッタと連なっているような。
misshokusaiお栄が尼寺に預けられているお猶を連れていくのは橋。様々な音が響き合って交錯する。盲人が橋の上で健常者に近い存在になれるというのは「山のあなた〜徳市の恋〜」でもあった。「山のあなた」の峠の代わりに川から海に出るという想像が北斎のあの有名過ぎる「富嶽三十六景」に連なる。
逆に「音を吸収する」雪のシーンもあり、少年が雪玉を投げたり、木を揺すったりして枝の雪を落とし、お猶に音で雪を見せてあげる。この雪が落ちるシーンは北斎が仕事部屋で失敗しては紙を丸めて捨てるのと重なっているよう。きっと、お栄が紙屑だらけの仕事部屋から想像力を飛翔させたのだろう。丸めた紙を捨てて何度も描き直す果てに見えないものが見えるようになる。
sarusuberi3雪の中の赤いツバキも、北斎が完成したばかりの龍の絵にお栄が煙草の火を落として台無しにした火の赤とどこかつながっているような。ちなみに煙草の火の挿話は実話らしい。
ツバキの花をお栄は「温かい色」と言い、それはやがて百日紅の本当に暖かい赤に連なるようだ。お栄が北斎のコピーではなく独自のものを描いた絵は百日紅が満開の中でお栄がお猶と赤い金魚掬いをする暖かい絵だ。その時、お猶はもうこの世にいないのだが、優しさに満ちている。
暖色と言えば、家の中の灯火の暗いながらも暖かい色の幽玄が本作の基調色になっている。
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Posted by y0780121 at 21:26│Comments(2)TrackBack(15)clip!アニメ邦画アーサ | ★5

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この記事へのコメント
暖色と男色を掛けたわけじゃない、と信じたい
Posted by 猪口婆 at 2015年05月13日 15:03
そう言えば女形とやっていたような。薔薇族はなくて椿族。
Posted by 佐藤秀 at 2015年05月13日 15:19