2015年10月05日

屍者の帝国3

TEOC公式サイト。伊藤計劃・円城塔原作、牧原亮太郎監督。(声)細谷佳正、村瀬歩、楠大典、三木眞一郎、山下大輝、花澤香菜、大塚明夫、菅生隆之。歴史改変物の近過去SFアニメ。まだ科学とオカルトが完全に分離していなかった19世紀が舞台。フランケンシュタインの応用で屍者がロボットのように労働力として使われ、飛躍的発展を遂げた世界で魂の行方を捜す冒険。
オープニングで屍者によって雇用を奪われた人々が暴動を起こすのは機械打ち壊し運動のラッダイト運動をもじった感じ。そもそも屍者って今風に言えばゾンビなので、あまり新鮮味が感じられない。
さらにロシアのカラマゾフが作ったというアフガン北部にある屍者の帝国を目指すワトソンとフライデーは現実の歴史であったイギリスとロシアの覇権争いアフガン戦争に重なっている。本作でも言及されるグレート・ゲームもそうだ。「屍者の帝国」とはカラマゾフ絡みでドスエフスキーの「虐げられた人びと」の隠喩だろうか。今現在のタリバーンまで連想してしまう。
彼らがカイバル峠に差し掛かる時、不気味の谷現象の具象化したような谷で人間の魂を持ったとしか思えない屍者の群れに遭遇する。「不気味の谷」とは、ロボットやあるいはCGやアニメで外見がリアルな人間に近く見える境界線のようなもの。本作の場合、人と屍者の違いを越える時の不気味の谷ということになる。
ただ、本作はもっとオカルチックで19世紀から20世紀にかけて活躍したアメリカの医師ダンカン・マクドゥーガルの“実験”結果に基づく魂の重量21グラム説に基づく。そのものズバリの「21グラム」もそうだった。ワトソンは魂を抜き取られたフライデーを助けるため不気味の谷を越えたと思われる最初の屍者ザ・ワンの秘密を探るわけだが、同時にフライデーに筆記具を渡し、目の前で起きたことを筆記することを課している。「思想は言葉に先行する」と何度も言うのだけれど、実際にやっていることは言葉をインプットすることによって思想や意識を生み出そうとしているのではないかと思える。
それはともかく自爆テロを思わせる屍者爆弾、蒸気と電気で操作する計算機、ICチップ基板を思わせるもの、ダウンロードのような現代コンピュータ用語を思わせるフレーズ、果てはエジソンが発明したというロボット美女が登場する。屍者によって発展して現実の歴史よりも19世紀は発展したということだが、実現された近過去はあまりに現代や近未来に似ている。
結局、失われた魂とは何かと言えば、人間疎外の隠喩で、意思とかいう前に個人の意思の尊重、人権や民族自決という20世紀的問題が隠されているように見える。「屍者の帝国」とは欧米列強の帝国主義で犠牲になった民族や奴隷、植民地労働者たちの怨念の帝国なのだ。今もそのような帝国は存在する。
残念なのは台詞による説明が多いことや、あまりに戦線拡大し過ぎて収拾がつかなくなったように見えることか。途中で割と集中力が鈍る。
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Posted by y0780121 at 13:54│Comments(0)TrackBack(5)clip!アニメ邦画アーサ | ★3

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イマイチよく分かんないや。
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