2015年11月03日

1001グラム ハカリしれない愛のこと4

キログラムという神も死につつある
1001grams公式サイト。ノルウェー=ドイツ=フランス、原題:1001 Grams。ベント・ハーメル監督。アーネ・ダール・トルプ、スタイン・ヴィンゲ、ロラン・ストーケル。ノルウェー国立計量研究所で働くマリエ・アーンスト(アーネ・ダール・トルプ)は心臓発作を起こした父アーンスト(スタイン・ヴィンゲ)に代わりノルウェーのキログラム原器(複製)を抱えてパリにある国際度量衡局の総会に出席する。
キログラム
1キログラムの定義は、「国際キログラム原器(IPK)の質量」である。SIにおいて、今なお普遍的な物理量ではなく人工物に基づいて値が定義されているのはキログラムだけである。
とのことで、極論すれば、原器が摩耗すれば、度量衡の体系が崩壊する。世界が崩壊するのだ。なぜかと言えば、重さの場合、そうしないと循環定義
ある事柄を定義するためにその事柄自体を用いることである。この場合、定義文のみの知識では定義した事柄の本質的な理解が出来ないため、定義は成立しない。
に陥るから。父アーンストが「人生で一番の重荷は背負うものがないこと」と言うのも、実はこの循環定義のことを言っているようだ。重荷は背負うものだから背負うものがないなら重荷は定義できず、従って人生の重荷を測れない。そもそも父の名前からしてアーンスト・アーンストと“循環”している。アーンストは英語で言えばアーネストで「真面目」とか「本式」という意味でまさに度量衡的な真面目さだ。
本物の原器があるパリの国際度量衡局は言わば度量衡の総本山。40年に一度、各国のレプリカが持ち寄られ、天秤で本物と測って狂いがないか確かめるのだそうな。各国の派遣団が同じブルーの傘を差して歩く行列はまるでメッカ巡礼の趣がある。
とすると、マリエが抱え持つキログラム原器は宗教的な聖杯、イコンのような趣があり、神の代理を後生大事に抱えているかのようだ。国際度量衡局の本物を見るマリエは本当に真面目にアーンストに聖なるものを拝む信者のようだ。
それ故に自動車事故で聖杯が壊れてから「周りにあるものがすべて壊れていくみたい」と感じる。父が亡くなり、基準がなくなったのだ。ラストはまるで堕天使のよう。パイ(ロラン・ストーケル)との“愛のハカリ方”は、マリエが15.5センチ、パイが18センチと一致しない。尺だから重さではないのだが。いずれにしろ、邦題のサブタイトルは本作の「真面目」を冒涜し、安易に流れ過ぎている。
亡くなった父の遺灰は1022グラム。ところが、測ってから21グラム減って1001グラムに。21グラムとは「屍者の帝国」にも出て来た「魂の重さ」。わずか1グラム狂いが生じた。そう、やはり「周りにあるものがすべて壊れていくみたい」なのだ。現実に「キログラム原器、廃止へ 質量の基準、新たに策定」(朝日)
質量の単位「キログラム」の定義として120年以上使われてきた「国際キログラム原器」を廃止し、新しい定義へ切り替える方針が21日、パリ近郊で開かれた国際度量衡総会で決議された。長さや時間が現代的な定義に置き換えられる中、最後の「原器」が歴史的使命を終える。
国際キログラム原器は、白金イリジウム合金製の分銅。1889年、メートル条約に基づいてつくられ、パリの国際度量衡局に厳重に保管されている。
本来、質量は一定のはずだが、洗浄で1億分の6程度軽くなったこともあり、高精度の測定が必要な先端科学の世界では、より正確で安定的な定義が求められていた。
とある。
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Posted by y0780121 at 21:05│Comments(0)TrackBack(6)clip!映画数字 | ★4

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