2015年11月10日

起終点駅 ターミナル〜本田翼は演技もうまい3

terminal公式サイト。桜木紫乃原作、篠原哲雄監督。佐藤浩市、本田翼、尾野真千子、中村獅童、泉谷しげる。原作者の桜木紫乃は釧路出身で、同じく釧路を舞台にした小説で2年前に直木賞を受賞した作家。本人も裁判所に勤務し、夫の転勤に伴って北海道内各所に住んだ経験があり、本作の主人公鷲田(佐藤浩市)のキャラに反映されているみたい。
全体のトーンは無縁の時代。人間関係が壊れていく物語。その舞台が釧路なのだけれど、そもそも原作者は釧路出身なのに「どん詰まり」(泉谷しげる)って、自虐が過ぎてないか。まだ以東にある街の立場なくなるだろうに。
起承転結を連想させるタイトル。鷲田の学生時代(1978年)、学生運動で知り合ったらしい鷲田と冴子(尾野真千子)=起。それから10年ほど経って内地から地方勤務で旭川地裁2年間勤務の裁判官になった鷲田=承。そこで起きた決定的事件のためにそれから25年、離婚して国選弁護人専任の弁護士になった一人暮らしの2014年の鷲田=転。そこで、鷲田目線では冴子の生まれ変わりのような敦子(本田翼)と知り合う=結。
そもそも1978年の学生運動って、もうとっくに退潮してそういう物語が成立しづらい時代になっていたと思う。もう5年くらい遡って、旭川、釧路時代はそのまんまでも十分成立していたと思う。むしろ、冴子、まだ若い筈だのに零落し過ぎな感があってもう5年、年取っていた方が似合っていたような。釧路の鷲田だって5年プラスで還暦でもおかしくない。25歳の敦子と年の差がさらに5年離れても、似たようなものだろう。
ところで、敦子が鷲田に近づいて来たとき、これはてっきり暴力団大下(中村獅童)の差し金なのかと思ってしまうほどかなり唐突だ。大下は少なくとも北海道で起きることは全てお見通しの風情で、鷲田の過去のスキャンダルも知っている。当然、覚せい剤で捕まった敦子のことも知っている筈。敦子が10年以上帰っていないという厚岸の実家に帰るのも裏で手を引いているのは大下じゃないかとか。
問題はその差し金が悪意の差し金か善意の差し金か判然としないこと。顧問弁護士要請も善意のようにも見える。そもそも不器用そうな鷲田は私選弁護人として器用に立ち振る舞えないことを知ってのことのように見える。
執行猶予中の敦子がコーヒーに砂糖を入れる時も、鷲田は覚せい剤を連想していて、手放しで信頼しているわけじゃない。ついでながら釧路生まれの唐揚げザンギも「懺悔(ざんげ)」に聞こえてしまう(笑)。そもそも敦子も天真爛漫のように見えて暗さを隠している。敦子が厚岸の実家で恋人が生きているのかどうか戸惑う時の表情が訝しかったが、案の定、後で鷲田に本音を告白している。ことほど左様に意味がどちらとも取れそうなシーンがある。
本田翼はモデル出身で判で押したように「演技下手」と思い込まれているようだが、微妙な表情もうまくこなしている。全体を通して下手と思ったこと一度もない。同じ年配の男性と若い女性の微妙な関係を描いた「私の男」と比較したくもなるが、二階堂ふみはあくまで“過激派”だ。
思えば、本当の「結」は「駅」。あの事件が起きたのも駅(もっともなぜ無人駅なのかシチュエーション的によく分からない)。敦子を送る先も釧路駅。最後に鷲田が大下に車で遅らせるのも釧路駅。それにしても転勤で鉄道を利用するのは趣味の域としても、首都圏まで大急ぎで帰らなければいけない時なら普通、大慌てで飛行機に乗るだろうに。
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Posted by y0780121 at 19:07│Comments(0)TrackBack(7)clip!邦画キ | ★3

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