2015年11月28日

黄金のアデーレ 名画の帰還1

adele公式サイト。アメリカ=イギリス。原題:Woman in Gold。サイモン・カーティス監督。ヘレン・ミレン、ライアン・レイノルズ、アンチュ・トラウェ、ダニエル・ブリュール、ケイティ・ホームズ。オーストリアの画家グスタフ・クリムトがオーストリアの夫人をモデルに描いてオーストリアに所蔵されていた名画が半世紀以上を経てアメリカに“亡命”したという話で、邦題の「帰還」にはちょっと困惑してしまう。
そもそも本作を見ていると、絵のモデルになったアデーレ・ブロッホ=バウアー(アンチュ・トラウェ)の、今や82歳になったロサンゼルス在住の姪マリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)の極めて老人的な気まぐれを利用して顧客の新規開拓を探る新進弁護士ランドール・シェーンベルグ(ライアン・レイノルズ)が文字通り黄金の富を掘り出したという感じ。マリアは“restitution”と言っていることから、きっとユダヤ人損害賠償世界機構(World Jewish Restitution Organization)の勧めでもあったのだろう。
ところで、この絵は1938年のナチスドイツのオーストリア併合でナチスに接収されたものの、1941年には既にウィーンのオーストリア絵画館に収められていた。オーナーのアデーレの夫フェルディナンドは併合前に逃亡していたが、アデーレ自身が「夫の死後、オーストリア絵画館に寄贈してほしい」と遺言を残していたことから、ナチスの弁護士は接収後、事実上アデーレの遺志通りにしたということになる。もっとも、ナチスがオーストリアそのものを併合したのだからこの絵画も接収状態であることには何も変わらないのだけれど。
1945年、マリアらに遺産を相続させる遺言を残してフェルディナンドが死去、ほぼ同時にナチスが滅亡、これも話がややこしくなるきっかけになったのかも。本作では描かれてないが、他に2人、相続人がいたそうだ。
翻って、所詮金持ちと、そのご相伴に預かりたい弁護士の遺産相続をめぐるお話し。そもそもマリアがあたかも叔母のアデーレを懐かしむようなシーンが挿入されているが、クリムトの絵画そのものに興味があったのかどうかも怪しい気がする。戦後50年も経って今まで何してたのよ。
最終的に2006年、ユダヤ人損害賠償世界機構のグループであるニューヨークの画廊に当時史上最高の1億3500万ドルで売り払われ、2人とも大金を手に入れた。多分、「ナチスから奪い返した」のキャッチコピーが付加価値を生んだのかも。どっかの大臣じゃないけれど、「結局、金目でしょ」かいな。マリアも金がない素振りしているが、実際には昔のコネクションでカシミヤの服を売って結構儲けていたらしい。
そのような疑念は「ナチスが盗んだ美術品を取り返す」という錦の御旗が翻されて曖昧化されている。実際、ナチスの非道ぶりが折に触れて挿入される。けれど、冷静に考えれば、直接的には何の関係もなく、結果、今のオーストリア政府がナチスの悪行をあたかも後継しているかのような印象すら与える。本来、この絵画はウィーンにとどまるべきで、マリアはアデーレの遺志を裏切ったことになる。いずれにしても、最近、ナチスと美術品を巡る映画、やたら多い気がするのだけれど、これも背後にも「金目」があるのかいな。
ちなみに「マン・オブ・スティール」で宇宙最強美女戦士としてスーパーマンと対決したアンチュ・トラウェがアデーレ役。実はこのことが本作を観た最大の収穫だったりする。
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