2016年02月02日

蜃気楼の舟〜認知症ソラリス4

shinkiro公式サイト。竹馬靖具監督、テーマ曲:坂本龍一。小水たいが、田中泯、足立智充、小野絢子、竹厚綾、川瀬陽太、大久保鷹、中西俊博、北見敏之、三谷昇。貧困ビジネスの一つ、囲い屋で仕事をする若い男(小水たいが)がホームレスになっていた父(田中泯)と遭遇する。
父は認知症なのか記憶喪失しているらしく、徘徊癖もある。男が小学生になるころに母をなくす前に生き別れになっている。生活保護搾取が目的だから実名や戸籍が調査されて判明したのだろうが、もしあくどい囲い屋ビジネスがなかったら、永遠に見つからなかったろうという皮肉。もっとも、この父子関係、実のところ、書類上だけのもので、何というか、“中身”が失われている。
shinkiro1父は既に社会的には死亡しており、その象徴が、高原らしき沼の上に揺蕩う木造の小舟。小舟もこの湖に囲われていて、動いているのにそれほど澪を作らない。ここらあたりの雰囲気、「さようなら」とか「アレノ」によく似ている。
同僚のミツオ(足立智充)は実は大金持ちの御曹司らしく、趣味で仕事しているのだが「テロリストになるのも」云々かんぬんはちょっと臭い台詞。この期に及んで今更そんなことわざわざ言うなよ、と少し鼻白む。俺もまた社会的に既に自殺してるよ、と言いたいのか。それにしてもかなり古典的な家族のお坊ちゃんな感じがする。
父は東京の都会で倒れるのだが、倒れるというよりもダンサー田中泯らしく、倒れながら舞踊をしている感じ。電灯か何かのポールをつかみポールダンスすらしている感じ。そもそも田中泯は「祖谷物語-おくのひと-」で歩く案山子爺を演じており、生死境目のパフォーマンスは今更違和感ない(笑)。本作では僅かに台詞があり、台詞が全くなかった案山子爺よりはまだ人間的なのだけれど、ほとんど延長線上で歩いているとしか見えない。
shinkiro2その行き着く先は大砂丘。鳥取砂丘でロケされたそうだが、父は急な砂丘の崖を因幡の白兎ごとき俊敏さで駆け下りる。海を見たからだろう。この海は「惑星ソラリス(1972)
人間の記憶を実体化するソラリスの海は、実はクリスの故郷の、オープニングで出て来る湖沼と対応しているのも歴然だろう。10年前に自殺した美しい妻、ハリーがソラリスの力でニュートリノを実体化して再現され、何度もクリスの前に現れて抱き合う。
と相応しているような。父の前に現れた海は記憶の海であり、母(妻)の記憶の実体化を見て父は駆け下りて海の前で額づいたのだ。
本作でも対応する湖沼が一度ならず二度現れる。1つは舟が浮かぶ沼、もう一つは男が訪れる廃墟の傍の湖。そこでは母がやはり実体化されてしまう。この二つの湖沼と海は同時に死のメタファーだろう。
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Posted by y0780121 at 20:21│Comments(0)TrackBack(0)clip!邦画シ | ★4

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