2016年02月22日

ディーパンの闘い〜移民の中でも少数派3

dheepan公式サイト。フランス映画。原題:Dheepan。ジャック・オーディアール監督。アントニーターサン・ジェスターサン、カレアスワリ・スリニバサン、カラウタヤニ・ヴィナシタンビ、ヴァンサン・ロティエ、マルク・ジンガ。カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品。スリランカ内戦で妻子を失ったタミル・イーラム解放のトラ元戦士ディーパン(アントニーターサン・ジェスターサン)が偽の妻子を調達して、フランスに移住する。
本作ではタミル人の信仰対象、ヒンドゥー教の神のガネーシャに祈りを捧げるシーンがあり、実際のインド象も象徴的に出て来る。ガネーシャ 象頭の由来
シヴァは、投げ捨てたガネーシャの頭を探しに西に向かって旅に出かけるが、見つけることができなかった。そこで旅の最初に出会った象の首を切り落として持ち帰り、ガネーシャの頭として取り付け復活させた。
という逸話から類推すると、失った妻子の代わりの偽の妻子を象頭に例えているフシがある。ガネーシャ自身は障害を取り去り、また財産をもたらすと言われており、ディーパンにとって、フランス移住は障害を取り去り、財産をもたらすと希望を膨らませていた筈だった。そうだとすれば、いかにもヨーロッパ人から見たステレオタイプな類型的解釈かもしれないが。
ディーパンも妻役のヤリニ(カレアスワリ・スリニバサン)もフランス語を話せず、娘役の孤児イラヤル(カラウタヤニ・ヴィナシタンビ)が片言のフランス語を話せる程度。この娘役の女優カラウタヤニ・ヴィナシタンビが物凄く可愛い。20年近く前、スリランカ旅行したことあるが、そう言えば道路のヤシの木にたたずんでいた娘さんも可愛かった。およそインド系の娘さんは例外なく可愛い。ブス子ちゃんはそもそも存在しないのだ。
彼らが連れていかれたパリ近郊のアパートでディーパンは管理人として住み込むのだけれど、ヤリニは月500ユーロでアパート内に住む認知症の男性を世話することに。
この額が相場的に額が高いか低いか知らないけれど、問題はその息子のブラヒム(ヴァンサン・ロティエ)。いかにもいわくありげな陰のある表情、踵にはフランスで累犯者に付けられるというGPS機能付きの携帯監視装置。名前からするとアルジェリア系らしく、ドラッグのディーラー。察するに認知症の親戚を世話するために仮釈放されているぽい。ヤリニの料理が気に入り、チップもふんだんに上げていて、実はいい人ぽい。もちろん、麻薬で金儲けしてそれくらい出せる余裕あるのだろうけれど。
もう一人、ディーパンに職を斡旋したアフリカ系のユスフ(マルク・ジンガ)。この人も人の好さそうな人だ。というか、この人の場合、純粋にいい人なんだろう。
なのにこのアパートはなぜかきな臭さが立ち込めている。住民のほとんどは移民らしい。多分、フランス旧植民地の移民が多く、元イギリス領のスリランカ人はむしろここでもマイナリティだろう。ヤリニはイギリスに縁戚者がいると言っているから素直にイギリスにわたっても良さそうなものだが、イギリスにはスリランカ系移民が多く、“敵”のシンハラ人も多いからだろうか。もう戦うのに疲れ切っているディーパンだから、そういう考えも納得できる。本当はディーパンもイギリスに移住したかったことがラストでも明かされているようなのだが。
ところが避けていた筈のものが当のアパートで起きる。正直、なぜこうなるのかよく分からない。ブラヒムが何か悪いことしたのなら、警察がすかさずやって来る筈なのだが。ディーパンがスリランカの時と同じく“No Fire Line”を石灰で描いたからといってディーパンが嫌われる理由としてイマイチだ。まさかあの石灰の中に麻薬が混ぜられていたのかとか。
一体、最後に銃撃戦というのは、実のところ敵が分からない。やっと警察がやって来てブラヒムは殺されたということか。ひょっとしてフランス語が一番うまい娘のイラヤルが通報したのか。そうなるとまさに悲劇の上塗りだ。
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Posted by y0780121 at 21:35│Comments(0)TrackBack(8)clip!洋画ディ〜ド | ★3

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