2016年03月26日

リップヴァンウィンクルの花嫁5

目覚めるべき現実はもはやない茶番の現実
RVW公式サイト。岩井俊二原作・監督。黒木華、綾野剛、Cocco、原日出子、地曵豪、毬谷友子、和田聰宏、佐生有語、夏目ナナ、金田明夫、りりィ。「リップヴァンウィンクル」(Rip Van Winkle)は19世紀のアメリカの小説家ワシントン・アーヴィングのアメリカ版浦島太郎物語のような短編小説のタイトルから来ているらしい。主演の黒木華がラストで被っているお面は狐の嫁入りのお面だろう。
世の中の茶番劇が、実は茶番劇そのものが世の中、偽装が世の中の常態なのだということを極論化したようなテイスト。皆川七海(黒木華)は臨時教員(≒正教員の偽物)で声が小さいのを生徒たちにからかわれ、マイクロホンで授業させられる羽目に。それがあだになって臨時教員もやめさせられる。世間に対して何事も受け身。
その防衛機制のためか、眼鏡の偽物、伊達眼鏡を付けたり、色々偽装している。SNSで知り合った教員鶴岡鉄也(地曵豪)とあっさりまるで伊達眼鏡掛けるみたく結婚、結婚式で七海側の列席者が2人しかいないのでなんでも代理業安室(綾野剛)にさくらを手配してもらう。安室は「俳優」も兼ねているというのが意味深。
そこで終わると思ったら、突然、夫の浮気相手の恋人と称する男が現れ、ホテルに閉じ込められる。そこには仕掛けが合って、これ自体も手配していたのは安室だった。言わば俺俺詐欺と結婚詐欺の合わせ技ぽい。鉄也の母カヤ子(原日出子)に“証拠写真”を突き付けられてあっという間に離婚。いくら七海が世間知らずでもここまで鈍感とは思えないし、むしろ半分以上投げ遣りに流れに任せている感じがする。
やがて七海もさくら組に入り、AV女優の里中真白(Cocco)と“さくら友達”に。この真白こそハンドルネーム・リップヴァンウィンクル。リップヴァンウィンクルは眠って夢を見て時の経過を知らない人。2人が参加した結婚式の婿さんまで、ひょっとしたらさくらぽい。便利屋のメンバーに顔のよく似た人がいた気がする。つまり便利屋ってやらせ俳優派遣業みたいだ。というか、だんだん世の中の人間全員実はさくらなのかと思えて来る。
七海と真白があてがわれた豪壮な別荘も持ち主が海外にいるから空いているとか安室は適当に説明しているが、実体は映画ロケ用のセットに使われている。七海と真白はお互い花嫁衣装になってレスビアン調になっていくのだが、もう本気か演技か訳分からない状況に。真白は「この世界は本当は幸せだらけ」と言うが、「この社会は」と言っていないところがミソ。世界は素晴らしいと分かっていても、社会は息苦しいと言っている。
RVW2実は真白も添い寝相手が欲しかったというのだが、「白河夜船」で寺子(安藤サクラ)の親友しおり(谷村美月)も添い寝屋さんだったので、これ自体珍しくないのかもしれないが七海の場合、知らぬうちに添い寝屋さんをやらせられている。
恐ろしいことに真白はイモガイの毒で自殺したようなのだが、イモガイって「シェル・コレクター」と同じじゃないか(笑)。末期癌という理由も真に受けていいのかどうか分からなくなる。この世は全てネタという世界観めいたものも。
七海は真白の葬式にも参列するのだが、お馴染みのさくら組メンバーも。こうなると、真偽の境界が取り払われて訳分からない状態になっている。真白の母(りりィ)もストリッパーになった娘をなじっていたが、きっと本人も若い頃ストリッパーだったと想像される。
唯一、安室は最初から最後までビジネスライクで押し切っていて、結局、安室はサービスを最後まで提供する代わりに真白からカネをむしり取っていたようだ。けれど、こういうタイプの人、葬儀屋さんに結構いそうだ。
七海はその後、何事もなかったかのように「現実」をやり過ごし、安い方のアパートで生き続ける。彼女には目覚めて我に返る現実などないのだ。こんな偽装社会、やり過ごすしかないのだろう。なぜかその部屋のカーテンが狐のために花嫁衣装に化けたのじゃないかとも思えて来る。

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Posted by y0780121 at 18:55│Comments(0)TrackBack(12)clip!邦画ラ,リ | ★5

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