2016年09月27日

レッドタートル ある島の物語〜シーシュポスの神話4

ウミガメと拷問、不条理
redturtle公式サイト。日本=フランス。仏題:La Tortue rouge。スタジオジブリ製作、マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット原作・脚本・監督。熱帯らしい無人の孤島。まず大嵐でボートが転覆、若い男が打ち上げられるが、ラスト付近も東日本大震災を思わせるような大津波で事態が一変する。
そもそもいつの時代なのかもわからない。空き瓶が漂着しているから近代文明、すなわち現代と推測はつく。
ただ、ここに人間は本当に登場しているのかどうか。オープニング当初に無数の子亀が海に向かう。やがて成長したウミガメが3頭戻って来る。人間らしき者も男と女、そして彼らが生んだ子供の3人。そもそも彼らは喚いたりするが、言葉は一度も発していない。男女が砂浜に窪みを作り、抱き合うのはまるでウミガメの産卵だ。何やら浦島太郎がそのまんまカメとつがいになったのかと思わせる。
男が島から脱出するため何度も島の木々で作る筏が出帆の途端、底から打撃されて壊される。何やらアルベール・カミュの「シーシュポスの神話」を思わせる。とりわけ、岩から転げ落ちて海の洞穴に転落するシーンはシーシュポスの岩を連想させ、男ばかりか息子も経験している。そもそもウミガメの甲羅だって岩のようなものだ。
なら、筏を壊すのは神なのか。実のところ、筏を壊せるくらい大型化したウミガメが登場するのはずっと後のことで、それまでは男が底をのぞいてもウミガメはいなかった。その大きなウミガメは砂浜で男に殺される。神に逆らうとしたらここらあたりか。そもそもフランス語でウミガメを意味する“tortue”と拷問を意味する“torture”はスペルもよく似ている。
しかし、ウミガメの甲羅にひびが入り、抜け殻になった甲羅は筏のように海に流される。そもそも最初に男が嵐の海でボートから放り出されたそのボートとは男の甲羅じゃなかったのか。とすると、これでやっとおあいこになる。
甲羅を捨てること、筏を捨てることはウミガメ以外の何かになりたいという希望だったのか。しかし、それは拷問のような苦痛を伴う。そもそも島自体が大津波に襲われてまるで甲羅をもがれたようになるのだ。こうなると、島、甲羅、筏が相似形をなしていて、それは安住の地、自分自身の殻でもあるが、全てそれは束の間の安住なのだ。
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Posted by y0780121 at 19:00│Comments(0)TrackBack(5)clip!アニメ邦画ターワ | ★4

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