高慢と偏見とゾンビ

公式サイト。イギリス映画。原題：Pride and Prejudice and Zombies。ジェイン・オースティン原作の原作、セス・グレアム＝スミス原作。バー・スティアーズ監督。リリー・ジェームズ、サム・ライリー、ジャック・ヒューストン、ベラ・ヒースコート、ダグラス・ブース、マット・スミス、チャールズ・ダンス、レナ・ヘディ。19世紀の初頭、ロンドンはゾンビたちに取り囲まれて人類絶滅の危機に。

何か恋愛小説の名作と当時流行していたゴシック・ホラーを合体した雰囲気。中国の少林寺拳法や日本の京都の剣術まで採り入れられて対ゾンビ作戦って。ウィルスに感染してゾンビ化したと言われてもウィルスが発見されたのは19世紀末か。まあ、いいか。
それにしてもゾンビ映画の割に品の良い美女ばっかでどう怖がればいいのやら。美女がやられてゾンビ化するというのもなかった。主役のエリザベス(リリー・ジェームズ)、ダーシー(サム・ライリー)らはみな原作と同じ。そこにゾンビがどう絡んで来るのか。
強引に解釈すれば、18世紀にイギリスで始まった産業革命で工業化しつつあるイギリスの姿なのか。あのゾンビ顔も石炭の煙の煤で汚くなった顔もきっと同じ感じじゃないだろうか。当時のロンドンは産業革命とともに工場労働者が流入して人口100万を突破して急激に増え始め、19世紀半ばには200万を突破したという。工場やストーブから出る石炭の煙で喘息や心臓病になる人が増えたそうな。ロンドンのお上品な貴族からすれば、煤けた労働者たちはゾンビなのかもしれない。思えばやがてロンドンにやって来ることになるカール・マルクスの「一匹の妖怪がヨーロッパを徘徊している。共産主義という妖怪が」の妖怪にも通じそうな。
実のところ、ゾンビ流入を防ぐ最後の手段、橋の爆破は労働者への最後の抵抗。まさに階級闘争。やがてエリザベスとダーシーは苦難の末、結ばれてハッピーエンドになるのだけれど、「妖怪」は死ななんだ、という話に。
不思議なもので、今のロンドンはイスラム系が多く、過激派によるテロも起きている。「妖怪」は今も滅びずロンドン市民を悩ましているということか。ホームグロウン・テロもゾンビなんだろうか。
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