2016年10月18日

ある天文学者の恋文〜蟹尽くし4

correspondence1公式サイト。イタリア映画。La corrispondenza、英題:The Correspondence。ジュゼッペ・トルナトーレ監督、エンニオ・モリコーネ音楽。ジェレミー・アイアンズ、オルガ・キュリレンコ、ショーナ・マクドナルド、パオロ・カラブレージ、アンナ・サヴァ、イリーナ・カラ。英語で癌を意味する“cancer”は頭文字を大文字にした“Cancer”は「かに座」を意味する。元々癌の形が蟹状に見えるかららしい。占星術の黄道十二星座のひとつで、これを除く11は本作でも重要なキーワードになる。
もっとも、本作に出て来る有名な超新星爆発のかに星雲はかに座ではなく、おうし座にあるそうだ。これも形状が蟹に似ているからだそうな。おまけに天文学者エド(ジェレミー・アイアンズ)が罹ったのは星細胞腫という脳腫瘍。文字通り癌(cancer)だ。舞台のひとつ、北イタリアのオルタ・サン・ジューリオの島に行く船頭が大学で天文学を学ぶエイミー(オルガ・キュリレンコ)に渡すのは本物の蟹(笑)。変なところで凝っている。
冒頭のいきなりのキスシーンも、この島で永劫回帰のフリードリヒ・ニーチェとルー・アンドレアス・ザロメが熱いキスをしたことでも有名らしい。ニーチェとザロメは先生と生徒の関係だったらしいので本作と合っている。
スマホにスカイプ、パソコン、宅配便のCD、エドが死んでも送られてくるのはかに星雲が7000光年の彼方から光を放ち、今も秒速1100キロメートルで広がり、今は恐らく姿かたちをとどめてない(=死)からだろう。その通信(correspondence)はかに星雲がパルサー(可視光線、電波、X線を発生する天体)なのは、様々な媒体でエドが“脈(パルス)がある”ことを送って来るのと一致する。パルサーは宇宙の灯台と言われているそうで、correspondenceにふさわしい。
それにしても、エイミーがバイトでスタントをしているのは数えてないが11回分死んでいる筈。実はエイミー、自分で自動車事故を起こして父を死亡させていて、自分も死にたいと思っていたのだ。とすると、エドは父親の化身であり、かに星雲ということになる。実は不倫などではなく、超新星爆発=自動車事故の後のエイミーの悔悟の念が天文学者の思いに乗り移って芸術的に昇華されたということだろうか。
correspondence2実のところ、エイミーはスタント以外に彫刻家のために女体のギプスのかたどりのモデルの仕事もしていた。あわよくば窒息死できればなどと考えていたらしい。(もちろんというか、キュリレンコの裸体もあり)
ところが、石膏が固まらないうちに途中でエド(父親?)を思って泣いてしまい、顔が二重にずれてしまった。やり直しを命ぜられるが、実際に採用されたのは失敗作の方。
12番目は失敗ということのようだが、エドも「ある失敗をするから永遠に生きられない」とか言っていた。けれど、芸術はその「失敗」で永遠の生を与えられる、というのがオチか。
トルナトーレ監督は前作「鑑定士と顔のない依頼人」でも彫像をうまく使っていた。映画的にはほとんどがイギリスを舞台にしているが、ここら辺りはさすがにイタリア人監督らしい。
それにしても、スコットランドのエディンバラといい、オルタ・サン・ジューリオといい、美しい光で満たされた風景の中の美しいキュリレンコを観ているだけでいい気分にさせてくれる。そろそろカニ料理の美味しい季節でもある。
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Posted by y0780121 at 20:43│Comments(0)clip!洋画アマ行~ | ★4
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