2018年06月08日

Vision3

vision公式サイト。日本/フランス。河瀬直美監督。ジュリエット・ビノシュ、永瀬正敏、岩田剛典、美波、森山未來、コウ、白川和子、ジジ・ぶぅ、田中泯、夏木マリ。最初に森の中で田中泯が出て来ると、四国の森を舞台にした「祖谷物語-おくのひと-」を連想してしまう。しかし、ここは近鉄特急がトンネルから出て来る奈良の山だ。
このトンネル、新青山トンネルだろうか。ちなみに「トンネルを抜けると」奈良県ではなく抜けてもまだ三重県だ。一応昔の伊賀の国に入ったことになるのかな。「人間至る所青山有り」の「青山」は墳墓の地という意味だが、お墓は現世とあの世を結ぶトンネルの入口と考えられなくもない。
トンネルと言えば、廃道のようなトンネルも。何となく現実と幻覚(vision)をつなぐ穴のようでもある。「」でもそうだったが、光と闇のコントラストがオープニングで特に目立つ。そもそも登場人物の中に目がよく見えない人アキ(夏木マリ)が出て来るのも共通する。アキの佇まいは中上健次のオリュウノオバを連想してしまう。そもそも猟銃事故もラストもかなり中上的世界だ。
杉林の中でシンボリックな大木。この大木を中心に物語が展開するのだけれど、その割に目立つほどの大木とは言えない。正直、他にもっと良い木なかったのかなあ、と思ってしまう。はっきり言って、さほど深い森ではない。道路沿いの一軒家からちょっと入った程度だろう。人工林で森の中も明るい。深山幽谷ではない。
そこで、老猟師(田中泯)が若い猟師(森山未來)を誤って猟銃で殺してしまい、森が擾乱する。
ビノシュは「アクトレス〜女たちの舞台〜」(それにしてもこの邦題何とかならかったのか)でも主演だったが、「マローヤの蛇」という雲になるアルプスの峠から湧き出る湿った霧はどこか吉野の山の霧につながっている印象がある。
ビノシュは村に伝わるビジョンと呼ばれる薬草を探しに来るのだけれど、「人類のあらゆる精神的な苦痛を取り去ることができる」と説明する。まるで唐突な預言者みたいで、さっさと立ち去って、また戻って来るのだけど、あまりにあっさり帰国してあまりにあっさり戻って来るので、ちょっと脱力してしまう。まあ、折口信夫風の「まれびと」なのかな。ただ、折口の時代じゃなく、今の日本、こんな奥地に外国人が来てももはやまれびとと洒落込めない時代になった。
「日本の森=神秘」というちょっと安直すぎる設定で何もかもまとめてしまってないか。そもそもオープニングで森の中の古い神社があるのだけれど、あたかも神道の神は山の森です、と言わんばかり。確かに山そのものが神として祭られている神社は多々ある。特に奈良県の大三輪神社はそうらしい。
ひょっとして苦痛を取り去る薬とは単純に麻薬で確かにvision=幻覚も体験するだろう。死ぬこともあるのかと思ってしまう。逆に鬱から生き返らせる薬とも。若い猟師が殺されるのもある意味「薬」なのかも。でも、それじゃ話にならんだろう。ラストの魔法みたいなもの、木を燃やし、伐採して明るくなっただけにしか見えなかった。これまた中上の火祭りか。
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Posted by y0780121 at 21:13│Comments(0)clip!邦画N-Z | ★3