2008年02月

2008年02月28日

「人は自分が幸福であることを知らないから不幸なのである。」ドストエフスキー

言葉を書こうとして
それがうまく出てこないとき
あまりにほうっておくと
言葉がのどもとまで出かかって
出たい出たいとざわめいているように思える。

人は母の胎内から生まれる
言葉は
母との肉的な関係を断ち切り
父性的なものを与えられる手段だと
ある本に書いてあった。

そして大好きな映画、『イル・ポスティーノ』
主人公のマリオは
イタリアの小さな島に住むしがない青年
自らを表現する言葉を持たなかったが
亡命してきた詩人との交流によって
言葉と新しい人生を獲得する。

しかしそれは手放しでよいことだったと言えるのか
先の本を読んでいた私はそういぶかった
それを裏付けるように島の女が言う
言葉ほど罪深いものはない。

そして見直す『耳をすませば』
これも大好きな映画
見るたびに
そこに流れる空気や
登場人物たちの感動を肌で感じ取れる
でもそういうことってうまく言葉にできない。

言葉がどんどん離れていった
言葉にされないものほど大切なのだとうそぶいてもみる。

そして原点に戻る
言葉としての言葉ではなく
音(おん)として発せられる言葉が大切
音にはそれぞれ独自の意味があり
人間と大地、人間と自然をつなげる役割を果たす。

思い出す『歓びを歌にのせて』(2004、スウェーデン)
これまた大好きな、衝撃を受けた映画
人間は楽器だ
映画のラストで人々が声の楽器をいっせいに奏でるさまは
確かに人と大地をつなぐもの。

だめになりそうなとき
完全にだめになりきる前に
大地から力をもらう
ゆっくり呼吸し 言葉を発して
自然の中に自分をもぐりこませる。

気持ちを素直に表現し
伝える喜び
一瞬でも不幸を感じるのは
自分が幸福であることを忘れているから
「言葉」にしてしまうと簡単だけれど
本当はとても幸せであること
それを思い出しさえすればいい。

y43kashi at 17:56|PermalinkComments(0)そのたつぶやき 

2008年02月20日

実は表現豊かな英語たち

水曜夜クラス(19:30〜20:30 せんだいメディアテーク2F会議室)
「ブルース・オールマイティ」


「〜しようかな」と軽く自分の希望や予定を表現したり、
意志を強く表明したり、
可能性を表現したり、
思ったことを控えめに言ってみたり。

そんなバリエーションを、文のアタマに付ける表現で表せる。

I think I'll put this on my computer. (パソコンに取り込もうかな)
I will do with it what I will. (好きなようにさせていただきますよ)
I might even send this in the Playboy.
(「プレイボーイ」に送ったりもできるんだよな)
I think there might be something to this cookie line.
(このクッキーのセリフには何かあるよね?)

will、might、think あたりを自在に使いこなせると、あいまいにしたり控えめにしたり、逆に強く(あるいは冗談ぽく)言ったりと、自分の気分や態度が表せます。

今日のスクリプトには、ウォルター・クロンカイトの名前が出てきました。
彼の決めセリフとは何なのか? 筑○哲也さんなども真似したというセリフをお楽しみに。
来週2/27とその次の3/5がメディアテークの都合でお休みになるので、次回の水曜クラスは3/12になります。ちなみに金曜は2/29がお休みです。

y43kashi at 23:11|PermalinkComments(0)レッスンより 

2008年02月16日

そろそろイギリス英語がやりたくなってきた

その映画との出会いはたぶん中学生の頃。
といっても実際に映画として見たわけではなく、
当時毎日聞いていたNHKラジオ講座のテキストの、
後ろの付録として付いていた、映画の台本の一部を勉強するコーナーで。
思えば当時は、手に入れた教材は隅から隅まで読み通していたなぁ。
中でもその映画のコーナーは大好きで、
おいそれと映画を見に行けない田舎の小中学生だった自分は、
セリフの一部を読んで思いを馳せたものだ。

今でも思い出す、レンタルビデオ屋さんというものができて、
初めて借りたのは『レジェンド/光と闇の伝説』(Legend 1985 アメリカ)。
トム・クルーズとミア・セーラ、そして『ブリキの太鼓』のダーヴィット・ベネントが出てくる、あまり好きじゃないはずのファンタジー。なんで選んだかといえば、それは、映画のコーナーでセリフを読んでいたから。そして映画のよもやま話も知っていたから。
あのセリフが映像で見られると思って、どきどきした。
ミア・セーラのダンスの映像は、今でもまざまざと思い出せるほど、本当に美しかった。

さてさて、そのパターンで見たのはこの映画。『眺めのいい部屋』(A Room With A View 1985 イギリス)。昨日また改めて見直して、美しさとおかしさに心奪われた。

金曜朝クラスで、『いつか晴れた日に』をまるまる1本聞き取った皆さん。きっとこの『眺めのいい部屋』の面白さも味わえるはず。マギー・スミスがおかしく、最近エキセントリックな役が続くヘレナ・ボナム・カーターの若き日の画は、とてもとても美しい。本を読むかのような映像のつくりも凝っているし、フィレンツェと田舎のイギリスの風景は、見ているだけで満足。そろそろイギリス英語をやってみたくないかい??


金朝クラス(9:15〜10:35 せんだいメディアテーク2F会議室)
「パリ、テキサス」


でもでも今は、『パリ、テキサス』。「何もかもがあっという間で・・・」ととまどうアンの複雑な気持ち。

I don't know. It just seems that (わからないけど、たぶん)
everything has changed between us so fast
(周りの何もかもがあっという間に変わっていったわ)
ever since Travis came. (トラヴィスが来てから)

変わらないように見えたものも、変わることがある。
また、変わらないために変わる必要がある、ということもある。
そしてその変化は、その必要性が大きければ大きいほど、ドラスティックで瞬間的。

『あなたが寝てる間に・・・』のルーシーも言っていた:

It's just (ただこういうことなんです)
when we were in the hospital room, (あの病室にいたとき)
everything happened so fast. (いろんなことが次々に起こって)
And I couldn't tell you the truth. (本当のことを話せなかったんです)

今落ち着いているものは、どこかに変化の可能性をはらんでいて、
今変化しているものは、どこかにとどまるかもしれないもの。
来週2/22の『パリ、テキサス』でも、ドラスティックな変化が起こります。

y43kashi at 08:02|PermalinkComments(0)レッスンより 

2008年02月15日

スポッター

金曜昼クラス(10:40〜12:00 せんだいメディアテーク2F会議室)
「恋愛小説家」


実はとても身近なところに
素敵な人がいるのかもしれない

I’m sorry for never spotting, (見つけられなくてごめんなさい)
right there at the table in the restaurant, (まさにここ、このレストランの席に)
the human being that had it in him to do this[these] things for us.
(私たちにこんなことをしてくれるような方がいたってことに気づかなくて)

ウェイトレスのキャロル(ヘレン・ハント)にとっては、いつも奇妙な行動を取るめんどくさい客、メルヴィン(ジャック・ニコルソン)。その彼が、素敵なことをしてくれる可能性を秘めている人間だって、spot できなかった。

spot は、なかなか見つけられないものに、「スポット」ライトがぴかーと当たってピンポイントで目に入る感じ。

今まさに、メルヴィンに光が当たり始めたのかも。これから一気にクライマックスへ進みますぞ。

来週2/22は、無茶なお願いをまずはやわらかく断る表現。でも結局わくわくの展開になるんだけどね。大人2人のわくわく感もお楽しみください。

y43kashi at 17:49|PermalinkComments(0)レッスンより 

2008年02月11日

つながっている

最近行き始めたカフェで
すべての人が知り合いの知り合いだったりして一瞬のうちにつながること

人待ちをしているカフェで
なにげなく振り向いて目に入る看板
訪れたお店のオーナーが
実は知っている人だった
そして名前まで憶えてもらっていた
からからと音のするキラキラの「のれん」と
古めかしい本と
あたたかいシナモンロールのある
初めてなのになぜか懐かしい仙台カフェ。

お店を出て歩き始めると
もう今日は会えないかなと思っていた人に
車から呼び止められる
そういう必然。

最近人と人とがつながることがすごく多い
それはきっと私自身が求めていた動き
そういうことを自然に受け入れること
キーワードはいつも笑顔です。



y43kashi at 20:05|PermalinkComments(0)そのたつぶやき 

9デイズ

『9デイズ』(Bad Company 2002 アメリカ)

今までも何度も説明している know の話。ついこないだも書いたばかりだったけど、昨日なにげなく見ていた映画で、また know について考えさせられるシーンが出てきた:

爆弾に暗号が入力される様子を、1度目にしているにわかCIA捜査官(クリス・ロック)。時を刻む爆弾を解除するのに、「見た暗号を憶えているはずだ」と励ますベテラン捜査官(アンソニー・ホプキンス)。

Relax. Take your time. You know the code.
(落ち着け。ゆっくりでいい。お前は暗号を知っているんだ)

1度見たんだ、必ず思い出せる。know (知っている)はずだから。

Don't think you're fast. You know you're fast.
(速く動こうと考えるな。お前は速いんだ)

『マトリックス』のこんなセリフも思い出す。
know ってやっぱりすごく励まされる言葉かも。

「人は誰でも、自分に必要なことは知っている。思い出さないだけなのだ」

y43kashi at 09:03|PermalinkComments(0)映画の英語 

2008年02月10日

たのしさのたね

昨日は1歩も外に出ずにこもって仕事をしてしまった。
でも仕事をしながらも、出かけようかな、遊ぼうかなといろいろ考えていたりする
そういう可能性を結局選ばなかった
それでも楽しかった
選ばなかった自分も偉かった?

仕事をしたという充実感のほかに
何がこの楽しさの種になったのか考えてみた
それは、空気に含まれる可能性
出かけようかな 遊ぼうかな
結局やらなくても
やろうとおもえばできるんだよ という可能性
それが心を自由にし 余裕をもたらす。

そしてなんかいろんなことが楽しく思えてくる
例えばこんなちょっとしたセリフも:


金朝クラス(9:15〜10:35 せんだいメディアテーク2F会議室)
「パリ、テキサス」


トラヴィスに、(リッチな)父親っぽく見せるための方法を伝授する、使用人のカルメリータ。いろいろな歩き方をさせてみて、やっと納得:

You got it. (それよ)

「わかったのね」→「それでいいのよ」。この言い方がなんか面白かったんだよね。
このシーンを最初に見せたときから、メンバーさんからも笑いがくすくす。
こういうなんでもないシーンに、笑いが起こるってすばらしい。しかも字幕なしでね。

『ブルース・オールマイティー』でも出てきたね、

Nothing wrong with making people laugh. (笑わせるっていいことよ)

1時間笑い続けるっていう授業を取り入れたのは、どっかの大学だっけ?
笑いはそれくらい大切。
なんでもないことを見つけて、いつも笑っていたいっす。

y43kashi at 08:09|PermalinkComments(0)レッスンより 

2008年02月08日

ドラッグ

金曜昼クラス(10:40〜12:00 せんだいメディアテーク2F会議室)
「恋愛小説家」


ドラッグといってもヤクのドラッグ(drug)じゃないよ。答えは drag (引きずる)。

Let's not drag this out. (これで話を終わりにしようぜ)

drag out で、「話などを必要以上に長引かせる」といった意味になる。「引きずる」「ずるずる」という基本イメージがわかってれば理解しやすいかな?

レストランに2人で一緒にいること自体違和感だったメルヴィン(ジャック・ニコルソン)とフランク(キューバ・グッティングJr.)。せっかく仲良しっぽい感じに会話してたのに、用件が済むと「さっさと帰れや」的なことを言うメルヴィンであった。「この話をこれ以上長くしててもしょうがないだろ」みたいなね。

やっぱりメンバーさんも聞き取りに苦労した drag。ちなみに drag queen (女装した男性のこと)という表現は今カタカナになっているけど、クスリの drug と区別するために、「ドラァグ・クイーン」という表記にするんだってね。確かに音は近くなるかも。

あ、でもPC用語としての drag は「ドラッグ」だな。

日本語は「あ」の音は1種類だけだから表記が難しいね。
村上春樹が書いていたけど、『スター・クレイジー』(1980、アメリカ)と聞いたら、star (星)だと思っちゃうよね。スター・ウォーズやスター・トレックの親戚みたいな奴か?と思ったり。でも正解は Stir Crazy。あいまい母音の stir (かき混ぜる)でした。stir はスラングで「刑務所」の意味にもなる。stir crazy とは、ムショ暮らしが長くておかしくなっちゃった人のことなのだ。映画の内容は脱獄コメディらしいけど(監督はシドニー・ポワチエです)。ちなみに助演女優でラズベリー賞(裏アカデミー。ワーストを選ぶ)を取ってるよ。


さて、メルヴィンとフランクのピリ辛トークも終わり、監督役者全員が苦労したという手紙のシーンに、来週2/15は突入します。キャロル(ヘレン・ハント)の手紙の暴走っぷりがおかしい。

y43kashi at 18:01|PermalinkComments(0)レッスンより 

「習慣」と「今の行動」

水曜夜クラス(19:30〜20:30 せんだいメディアテーク2F会議室)
「ブルース・オールマイティ」


先日の某英語番組(再放送)で、こういうのをやっていた:

You're so selfish.
You're being so selfish.

この2つを言われたらどちらが傷つくか?

ネイティブに聞いたところ、答えはすべてが上の文。

上の文は、「いつも、習慣的に」selfish (わがまま)ということになり、
人格(personality)を攻撃してる失礼な言い方だと。
「あなたってわがまま人間ね!」ということらしい。

対して下の文。これは、進行形になっている。
進行形の基本イメージは、躍動感。今まさに動いている、という「動き」に焦点がある。
つまり、下の文では、「今」に限定された「行動」を非難していることになる。
「(いつもはそうじゃないかもだけど、)今のその行動はわがままだね」ということです。


このたぐいの表現はこれまでもレッスンで何度か出てきている。
例えば『プリティ・ウーマン』。独身女性のあこがれであるエドワード(リチャード・ギア)と一緒にいるビビアン(ジュリア・ロバーツ)がねたましく、意地悪を言う女性。彼女が去ってから、もう1人の女性がビビアンにフォロー:

She is just being testy. (意地悪してるだけなのよ)

いつもは意地悪じゃないんだけどね、今たまたまちょっと意地悪になってるだけなの。という感じ。


それと同じように、今回の『ブルース・オールマイティ』でも:

Now you're just sounding silly. (その言い方、バカみたいよ)

いつもバカってわけじゃないけど、その声の出し方(sound だから音に対する感想だね)、バカみたいに聞こえるよ。ということです。こんなふうに just を入れて使うことが多いかも。


ここで思い出すのは、逆の例。

『スモーク』のサイラス。自分の腕が事故でなくなったのは、神の思し召しだと言う。自分がひどいことをしたことを思い出させるために、神は命を取らず、腕だけを取った。「行いを改めろよ」と伝え続けるために。
それを聞いたラシードは、「行いは改めたのかい」と聞く。答えがこれ:

I try. Everyday. (努力してる。毎日な)

よく、「やってるって」と言うときに、I'm trying. と言う。「今やってみてるんだって!」と、自分の今の行動を説明してるのだ。
それが、ここではあえて進行形にせずに、現在形で言っている。次に everyday と付いていることも意味を強めているね。毎日毎日、習慣として、いつも try し続けているということになる。

一朝一夕ではできないことだから。毎日毎日積み重ねていかなければならないサイラスのカルマが悲しいセリフでした。


さてさて、そんな哀しみとは(今のところ)無縁の『ブルース・オールマイティ』。
来週2/13は「好きなことすりゃいいじゃん!」というセリフが出てくる。これまたお気楽(投げやり)な。例のクッキーの決めセリフも登場するよ。お楽しみに。

y43kashi at 17:07|PermalinkComments(0)レッスンより 

2008年02月04日

パーマネント

『パーマネント』 ジュディ・バドニッツ著

女は髪をセットしてもらっている、
あいにくいつもの美容師が都合がつかず、
代わりの男を彼女は気に入らない、
でも話していく、話していく
話が一段落して髪のセットも終わって、
彼女は突然寂しさをおぼえる、
初めて会ったこの男の寂しさも、
まだ去りたくない、
心の準備はできていない、
しかし葬儀に参列する人々が近づいてくる。

私ははっとしてすべてを理解する、
そういえばおかしなところはあった、
天井の電球が見えていること、
自分の顔は見えないこと、
娘に愛してると言いたいが、
もう手遅れだということ。

その短編の最初のページに、
思わず戻って私はもう一度読み始める、
大好きな映画『美しい人』(2005、アメリカ)にもこういうシーンがあった、
幼い娘と墓参りに行く母、
不釣合いに歳をとっている、
ストーリーの最後に観客は理解する、
幼くして亡くなった、
娘の墓参りに来ていたということを。

そしてその映画のべつのシーンも表れる、
乳がんの手術直前で気持ちが不安定な女、
麻酔が効いてきて、
まどろみが訪れる、
I know... I know... (わかってるわ わかってるの)
cling on... cling on... (このまま・・・このまま・・・)
夫は眠りに落ちた妻に言う、
We're gonna be together forever. (僕たちはずっと一緒だ)

今週の私、
未来と過去が、
現在という媒介を飛び越えたようなかっこうで、
不思議な具合につながってしまっている、
今確かに、
過去と未来はつながっている。

どうしてこんなに涙が出るのか、
この世の奇跡を思う、
奇跡はときどき訪れるのではなく、
実は毎日一瞬一瞬に起こっている。



y43kashi at 21:01|PermalinkComments(0)洋書よもやま