15 謎ギャラ特別室


























15『謎のギャラリー 特別室』(マガジンハウス 19987月)


 極上至上のアンソロジー 〈95点〉

 『謎のギャラリー』は、極上のアンソロジー編纂を目指して、北村薫氏が名著名作を探訪したプロセス・軌跡を記録したものである。この書物の最後に、「中で取り上げた作品の中から、現在、入手しにくいものを中心に『謎のギャラリー特別室』を編み、同時に刊行しています。あわせて読んでいただければ幸いです」と記しているように(p.231-232)、「絵」の解説だけにとどまらず、実物の「絵」の幾つかを展示した「ギャラリー」も開設してくれたわけであり、読者にとってはこの上もなく有難いサービスである。

さて、この『特別室』に収録された12の短編とその底本は、以下の通り:

○都井邦彦「遊びの時間は終らない」――『小説新潮』19851月号掲載

○里見弴「俄あれ」――『里見弴全集1』(筑摩書房)

○梅崎春生「猫の話」――『梅崎春生全集3』(沖積社)

○別役実「なにもないねこ」――『アンソロジー人間の情景4』(文春文庫)

○南伸坊「巨きな蛤、家の怪、寒い日」――『チャイナファンタジー』(潮出版社)

○ヘンリィ・カットナー「ねずみ狩り」――『ミステリ・マガジン』1967年8月号掲載

○クレイグ・ライス「煙の環」――『エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン』1960年8月号掲載

○ジョン・コリア「ナツメグの味」――『美酒ミステリー傑作選』(河出文庫)

○樹下太郎「やさしいお願い」――『プロムナード・タイム』(東方社)

○阪田寛夫「歌の作りかた」――『桃次郎』(楡出版)

○フランソワ・コッペ「獅子の爪」――『世界文学全集36 近代短編小説集』(新潮社)

○マージャリー・アラン「エリナーの肖像」――『15人の推理小説』(東京創元社)

 

 北村氏という稀代の碩学の徒の御眼鏡に適った選りすぐりの作品群なので、どれも面白いのは当然のことだが、作品の種類が多種多様であることにも改めて感心させられる。

例えば、筆者はライスの結構熱心な読者なのだが、「恐いというよりは異様極まるクレイグ・ライスの『煙の輪』」(『謎のギャラリー』p.101)を読むのは初めてのことで、よくこんな作品を拾ってくるものだと感心する。あるいは、里見弴「俄あれ」は『謎のギャラリー』で細かく分析されているのだが(p.42-45)、これなど分析だけ読んでも肝心要の実物に接しなかったら、仏作って魂入れず状態に陥るところである。

分析と実作を一枚のコインの裏表として読んでいけば、物語の読みの深さが格段に増し、また今までも持ち得なかった視点も備わること疑いなし。