44 名短編、さらにあり
















44『名短編、さらにあり』(ちくま文庫 2008年2月)

 

 「小説新潮」200611月号の「創刊750号記念名作選」を基に、新たに編んだ文庫オリジナルで、『名短編、ここにあり』の続刊。北村氏の手によるアンソロジーというと『謎のギャラリー』という傑作シリーズがあるが、本書は宮部みゆき氏と二人で編んだ短編選である。

収録作品は以下の通り:

 

〇舟橋聖一「華燭」――『新潮日本文学』29(新潮社)

〇永井龍男「出口入口」――『秋、その他』(講談社)

〇林芙美子「骨」――『新潮日本文学』22(新潮社)

〇久生十蘭「雲の小径」――「小説新潮」200611月号

〇十和田 操「押入の中の鏡花先生」――「小説新潮」200611月号

〇川口松太郎「不動図」――『現代作家掌編小説集』上(朝日ソノラマ)

〇川口松太郎「紅梅振袖」――『人情馬鹿物語』(講談社文庫)

〇吉屋信子「鬼火」――『鬼火』(講談社文芸文庫)

〇内田百閒「とほぼえ」――『内田百閒全集』13(福武書店)

〇岡本かの子「家霊」――『岡本かの子全集』5(ちくま文庫)

〇岩野泡鳴「ぼんち」――『明治文学全集』71(筑摩書房)

〇島崎藤村「ある女の生涯」――『島崎藤村全集』10(筑摩書房)

 

 本書カヴァーには、「面白いというのはこういう作品のこと 北村薫と宮部みゆきが太鼓判」と書かれているのだが、北村・宮部両氏による解説対談では、「面白い」基準については触れられていない。

前巻『名短編、ここにあり』以上に、著名作家の知られざる作品を、土蔵の奥から出して埃を払って並べたような感じがする。一人の作家の短編集ならともかく、アンソロジーで“一体、何を基準にして選んだのだろう?”と思わせるのはどうなんだろう。北村薫と宮部みゆきと云う目利きの名を冠しているのに、何故わざわざこれを選んだのだ?とどうにももどかしい。

それと――あくまで個人的に感想だが――前巻と比べると辛気臭い話が多くて、読んでいて楽しくない。“これが「名短編」でござい”と鑑定士が提示しても、こちとら首をひねって腑に落ちぬ作品が多かった。