■モンテディオ山形が今年からJ1に参戦。「J2の延長線上がJ1」というぼくの漠然とイメージしていたことが、だいぶ違うことを春先から感じていました。
■J1にはJ1の、J2にはJ2の戦いがある。結論はここにあると思っています。山形が参戦していない今年のJ2でさえ、なぜか順位やリーグのトレンドをチェックしている山形サポーター。けっこう多いのでは? と感じてます。
■ならば、とぼくは思うのです。まだまだ、ぼくの知らないところでいいサッカーが観られるのかも知れない。

■そうだ、JFLを観に行ってみよう。

■4月から日程表をチェックはするものの、日程や場所が合わなくてスルーする週末が続く。とうとう今日、初観戦が叶いました。カードはジェフリザーブス VS 三菱水島FC。
■ジェフリザーブスとは、調べてみるとサテライトとユースの中間に位置するチームらしい。ジェフと契約している選手で、選手個人のトップチームへの昇格は「移籍」ではなく「異動(移動)」なんだそうだ。ぼくら会社員で言えばグループ会社への「出向」といったところかな。チームはここまでリーグ2位の好成績だ。とりわけ、今シーズンは1ゲームで2点取られていないという守備力がチームスタッツで光っている。
■対する三菱水島FC。岡山のチームだ。選手は三菱自動車の期間工とフリーターで構成されているらしい。とりわけ、期間工がチームの半数を占めるため「夜勤」もあり、常時ベストメンバーが組めないというチーム事情がある(涙ぐましいなぁ…)。チームもここまでリーグ最下位と低迷。上位相手にひと泡ふかせることができるか。

■朝、目が覚めると外は快晴。入場料は当日券で1,000円とある。行ったことのない街へとサッカーをひとり観に行く週末。うーん、悪くない(笑)。ということで、ぼくはデジカメとノートをバッグにしのばせて会場のある新習志野駅を目指す。

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■会場は駅から歩いて10分ほど。大きな道路を歩道橋で渡り、すぐにある習志野市秋津公園サッカー場。嬉しいことにサッカー専用スタジアムだ。調べると最大収容人数は2,100人。バックスタンドはなく、こぢんまりとした素晴らしいピッチの会場でした。
■聞くところによると、あのオシムさんがここを気に入っており、日本代表も何度か練習したらしい。木々に囲まれ、落ち着いた空気のある場所でした。
■席に着くと、お客さんは目算で500人といったところ。もちろんジェフサポが多く(蘇我行かなくていいの?・笑)、三菱水島FCサポは10人いませんでした。

■で、キックオフ。いかんせん両チームとも選手をぼくは知らない。手元にメンバー表もないので、コンビニで買ったおにぎりをかじりながら、純粋にゲームに入り込んでいく。サッカー専用スタジアムだからピッチが近い。ひとつのプレーが意図するニュアンスが手に取るようによくわかる。ボールを蹴る音、後ろから削りにいってぶつかる音も耳に入る。選手同士のコーチングも、監督の指示もお客さんが少ないから耳に入る。これは面白い。
■こうやってサッカーを観ると改めて思うのが「よく走ること」「声を出しあうこと」「止めて、蹴ること」。この3つができなければ、サッカーは成立しないんだなぁとつくづく感じ入る。
■ゲームは浅い4バックからコレクティブなサッカーを展開するジェフペースで始まる。前線から積極的にプレッシングし、水島FCのパスミスを誘い出してマイボールにして前線へパス供給。この間に最終ラインを上げておいて、攻め上がる。アタックが失敗すれば、今の攻撃で何が悪かったかを選手同士で確認しあっている。
■一方の水島FCは、4-4-2のシステム。両サイドバックがよく前線に顔出す最終ラインを形成し、中盤はフラットな4枚。この中盤構成は、おそらくチームとしての生命線なんだろうと観ていて気づく。プレスして奪ったボールには、必ず周りに2人のサポートが付いている。ただ、単騎突破やサイドを駆け上がった局面でのサポートが遅く、なかなかエンジンが掛からない展開でした。

■今日はけっこう暑くて、プレーしている選手にとってはキツいコンディションだったと思います。序盤は声を出していたジェフも、25分すぎには徐々に声のコミュニケーションが減りはじめ、単騎突破の多い水島にも機会があるのではと思える展開へと形勢が変化。このことをメモしていたら、右サイドから水島FCの尾上が上げたシュート性のクロスがGKとDFが交錯したままゴールイン。「あれ?」という空気を一瞬生んだのち、10人もいない水島FCサポが歓喜の声を上げる。帰って来てから記録を見たら、このゴールは「オウンゴール」となってました。DFにかすったんですかねぇ。。。
■しかし、40分にジェフはFW岡庭が右サイドを突破して、ゴール前で内に切り込んでギリギリえぐり出してから絶妙のグラウンダークロスの供給。これを出口が難なく合わせて同点に。ここまで、ジェフのコレクティブなサッカーにアジャストしていた水島のDF陣はがっくりと膝を落とす。まだ前半なのに…、とは思うものの、彼らは普段は夜勤もある期間工やフリーターをしながら生計を立てて今日のゲームに臨んでいる。そこを思うと、少しは同情したくなってくる。

■このゲーム、将来大物になるだろう!と思えた選手はいなかったのですが、センスを感じた選手はいました。それはジェフの右サイドバックの安川。キャプテンマークを腕に巻いており、効果的なコーチングが印象的でした。前半に一度見せたサイドチェンジや、あとはクロスの質。キックの正確性が光っていました。
■その安川が39分にベンチ前の監督に指示を受ける。何言われたのかなぁ? と思いながら安川がボールを保持すると、ボランチへGive&Goを決行。中へボールをはたいてからは一気に安川は前線へ駆け上がる。そして、ボールが前線に張り出した安川経由で左サイドから上がってきた味方へ再度はたく。そこから、折り返されたクロスを金沢がダイビングヘッド。これが決まってジェフが逆転する。
■ベンチから指示した監督の意図をゲームキャプテンが身をもって体現した、停滞するゲームへのスパイスが効いたファインゴールでした。
■前半は2-1でジェフがリードしたまま、後半へ。

■ハーフタイムは会場外にある喫煙所へ。「再入場はできません」とか「ビンカンペットボトルの持ち込みはできませんー!(←ひと息でうざそうに何度もアナウンスするアレです)」といったJ仕様なことをいう係員もいない。並ばずに焼きそばが買えて、タバコも吸って、トイレも行列ではない。JFLって、スポーツファンに優しいな、なんて思いました(笑)。

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■で、後半。はしょって書くと、後半は0-0でゲームは、そのまま2-1でジェフがものにするのです。
■後半の立ち上がりから、水島FCは前線からのプレスをがんがん掛けてくる。「おいおい、この暑いコンディションでそれやって大丈夫か?」と、心配しちゃうくらいに。
■けれどもこれが効いた。ジェフの最終ラインがゆっくりと数センチづつ時間を追うに連れて下がっていった。ゲームのイニシアチブは水島FC掌握、でした。
■ただ、ジェフは組織的な守りで決定的な場面を作らせない。水島FC側に立ってみると、ものすごくストレスの溜まる展開です。でもね、これはもう今日の最大の感想になっちゃうのですが、水島FCは最後までよく走った。相手のミスからボールを奪うと、中盤の底の選手もボールに絡もうと前線へ駆け出していた。
■この姿は胸を打ちましたねー。
■そのへんの草サッカーと何が違うかと言うと、ここかなぁ。1点ビハインドだったら、いかなる理由であれ、ボールは必死で追う。ゴールへのプロセスに欠陥があるとわかっている局面でも、ではゴールするにはどうすればいいか?を考えている。
■ゲームは、最後にジェフの安川がこの日2枚目のイエローで退場するも、2-1で逆転での逃げ切り勝利。ゲーム前の順位表どおりに、ジェフが勝ち、水島FCが敗北しました。
■最後まで得点機会を伺った水島FCには今後も頑張って欲しい、と思いました。たった数名のサポーターでも、声は間違いなく届いていたはずですし。ハーフタイム明けに数名の水島FCサポが手すりに身を乗り出して、下の通路から出てくる選手に「頑張れよー」って声掛けて、パンツの紐を直していた選手もその声援に手を挙げて応えていたのを見て「何だかいい関係だなぁ」と感じ入ってしまいました。

■とまぁ、情緒たっぷりに長くなってしまいましたが、気持ちのいいサッカー観戦でした。最後まで勝利を求めた両チームへ拍手でございます。