ECONO斬り!!

斬り→霧→MIST

Daily Comments (2010 January)

今年最初の頂き物from講談社。どうもありがとうございました^^私は著者の中川さんとは異なり、Twitterを「たかが暇つぶしのツール」だとは思っておりませんが(逆に、今までになかった新しいタイプのコミュニケーションを可能にする画期的なツールだと思っています)、安易なウェブ礼賛論に疑問を投げかける本書の視点は重要でしょうね。それでは、少し遅くなりましたが、皆様本年もどうぞよろしくお願い致します!

(2010/01/04)

長らく出版予定だった大学院向けの計量経済学のテキストの第二版がついに出ました。ミクロ計量を目指す方の必読書のようです。計量経済学の中身はほとんど忘れてしまったので、私もこれを機に少し勉強してみようか、と思ってみたり(笑)

(2010/01/07)

昨日、言論プラットフォーム「アゴラ」に『現代思想』で読む数学という記事を投稿させて頂きました。あちらに掲載される記事の多くは時事問題を扱ったものですが、自分の書き手としての比較優位を考えて、少し世の中の流れから距離を置いた記事を時々書いて行こうと思います(こちらのブログがネタ切れしない程度に。笑)本ブログともども、どうぞよろしくお願い致します!
(2010/01/12)

『ランチタイムの経済学』の著者として有名なエコノミスト、ランズバーグ氏の2007年の著作『More Sex is Safer Sex』の日本語訳が出版されました。どんなタイトルになるか期待(?)していたのですが、邦題は(比較的平凡で)『ランズバーグ先生の型破りな知恵』とのこと。今年最初となる、本格派経済エッセイの注目作です!

(2010/01/18)

Twitter(ツイッター)で過去につぶやいた発言を簡単にリスト化して編集することのできる便利なサイトTogetter(トゥギャッター)を利用してみました:『Twitterの経済学:共有知識編』(Twitterと掲示板型サイトの違いを、情報構造や匿名性の違いに注目して経済学的な視点から考察しております)先日のブログ記事『Twitterで語る専門書出版の未来』は不慣れなせいもあり、作成にかなり時間がかかったのですが、もしもTogetterを使っていればきっと短時間で済んだはず。。。(泣)
(2010/01/20)

北米就職市場における経済学教員の採用について、東大の伊藤隆敏さんが毎日新聞に書かれていました(こちらのリンクを参照)。「5分野5人の採用を考え、6人の教員が出張、シフトを組みながら国籍多様の34人を面接した」とあるので、今年は(/も?)相当やる気のようです。私の所属する政策研究大学院大学も36人と面接。来週からはいよいよ面接・セミナーがスタートします。良い人材が採用できることを願っています。
(2010/01/24)

経済学に関連した、1. 学会(コンファレンス)、2. 教員・研究員の公募、3. 奨学金、の情報を掲載することのできるTwitterのまとめリストを作成しました(こちらをご覧下さい)。「誰でも編集可」としてありますので、Twitterのアカウントをお持ちの方であればどなたでも情報を追加することができます。学会・公募情報のチェックや告知にご利用頂ければ幸いです。(サイドバーのLinksにも「Twitter Economics BBS」として追加しました)
(2010/01/31)

ゲーム理論事典

少しご紹介が遅れてしまいましたが、昨年末に、世界を代表する一流研究者らの執筆による本格派の『ゲーム理論事典』がPalgrave Macmillan社より出版されました。


これは、もともと『The New Palgrave Dictionary of Economics』(第二版:全8巻)として出版されていた大事典から、ゲーム理論に関する主要トピックを編集しなおしたものです。(編集で漏れたゲーム理論関連の項目も沢山あるのでご注意下さい)


少しでも中身をご覧頂ければ一目瞭然なのですが、単語/専門用語の辞書的な解説を行う通常の事典とは全く異なり、それぞれの用語に関連した主要研究やモデルなどを整理して紹介するという、サーベイ論文のスタイルで書かれているのが特徴的です。イメージとしては、Journal of Economic Perspectives/Literatureの記事を、より分かり易く、かつより短めにまとめた感じです。
各項目の執筆者の人選にも細心の注意が払われており、その分野を代表する気鋭の学者が担当しているのも本事典の大きな魅力です。(書き手にとっても、Palgraveの経済学事典で書く事は、非常に高いステータスとなっているようです)

ご参考までに、今回『ゲーム理論』事典でカバーされている内容を以下でご紹介させて頂きます。いくつかの記事を既に読みましたが、ただただ素晴らしい、の一言です!オリジナルの事典はあまりに高価なので手が出ませんでしたが、この内容で3000円以下なら絶対に“買い”だと思います。ゲーム理論以外にも様々な分野(トータルで6分野)ほど、分冊シリーズが出ていますので、興味のある方はぜひチェックしてみて下さい!(私自身は『行動経済学』と『貨幣経済学』を購入しました^^) 続きを読む

5年に1度の祭典

追記あり(1月28日午前2時)

今年2010年は、4年に一度の冬期オリンピック@バンクーバーやサッカーワールドカップ@南アフリカが開催されますが、経済学で5年に1度の世界大会「World Congress of Econometric Society」が開催されるメモリアル・イヤーでもあります。5年前のロンドン大会には、当時まだ大学院生だった私も参加しました(聴衆としてだけで、発表はしませんでした)。他のコンファレンスではなかなかお目にかかれない錚々たる顔ぶれの参加者、刺激的な招待講演の数々など、まさに経済学のオリンピック/ワールドカップといった感じの祭典だったことを鮮明に覚えています。

主催団体であるEconometric SocietyAmerican Economics Associationと並び、経済学において最も権威のある学会で、長年にわたり発行しているEconometricaという(理論系論文を中心とした)機関誌は、経済学分野を代表する学術論文誌です。5年に1度の世界大会では、過去の5年間で最も実り豊かだった分野をプログラム委員会が選び、その分野を代表する気鋭の研究者に招待講演を行ってもらうのが慣例となっています。ここで発表された講演内容は後日モノグラフとして書籍化され、多くの経済学者の関心を集めることとなるため、経済学の将来を占う上で非常に重要な意味を持っています。

今回の世界大会開催地は上海(ウェブサイトはこちら)。経済学研究の方向性に大きな影響を与える招待講演については、以下の15セッションが予定されております。

Invited Sessions

Session 1: Decision theory
1a: Itzhak Gilboa and Massimo Marinacci
1b: Wolfgang Pesendorfer and Bart Lipman
Discussant: Rani Spiegler

Session 2: Foundations
2a: Pierpaolo Battigalli and Dov Samet
2b: Dean Foster and Rakesh Vohra
Discussant: Wojciech Olszewski

Session 3: Communication / Organizations
3a: Joel Sobel
3b: Luis Garicano
Discussant: Navin Kartik

Session 4: Contracts
4a: Yuliy Sannikov
4b: Bruno Biais
Discussant: Johannes Hörner

Session 5: Matching
5a: Tayfun Sonmez and Atila Abdulkadiroglu
5b: Jonathan Levin
Discussant: Yeon-Koo Che

Session 6: Political economy
5a: James Robinson
5b: Andrea Prat and David Strömberg
Discussant: Marco Battaglini

Session 7: Growth
6a: Fabrizio Zilibotti
6b: Chad Jones
Discussant: Antonio Ciccone

Session 8: Applied Economics
7a: John Van Reenen
7b: Josh Angrist
Discussant: Enrico Moretti

Session 9: Macroeconomics
9a: Robert Shimer
9b: Gianluca Violante
Discussant: Steve Davis

Session 10: Finance
10a: Monika Piazzesi
10b: Markus Brunnermeier
Discussant: Peter DeMarzo

Session 11: Trade and firm dynamics
5a: Marc Melitz
5b: Samuel Kortum
Discussant: Stephen Redding

Session 12: I.O. econometrics
12a: Patrick Bajari and Han Hong
12b: Victor Aguirregabiria and Aviv Nevo
Discussant: Martin Pesendorfer

Session 13: Macroeconometrics
13a: Jesús Fernandez-Villaverde and Juan Rubio-Ramírez
13b: Frank Schorfheide
Discussant: Harald Uhlig

Session 14: Econometric theory
14a: Victor Chernozhukov
14b: Susanne Shennach
Discussant: Stéphane Bonhomme

Session 15: Time series and panels
15a: Jushan Bai
15b: Xiaohong Chen
Discussant: Michael Jansson


個人的には、自分の研究分野であるマッチングが選ばれ、さらに共著者が発表者と討論者に名前を連らねているのが一番の(嬉しい)驚きだったのですが、おそらく分野全体で見た一番の驚きは

「行動経済学/実験経済学/神経経済学に関連するセッションが一つもない」

という点ではないでしょうか(この点に最初に気がついて私に教えて下さったのは東大の神取先生です。どうもありがとうございました!)。2005年、2000年大会ではそれぞれ、これらのテーマに関して複数のセッションが開催されていたことを併せて考えると、その落差に改めて驚かされます。

私は行動経済学系の専門家ではないので断定的なことは言えませんが、書かれる関連論文の本数は已然として多いものの、昔と比べると、革新的な論文が量産されているような印象はあまりありません。成長著しいと思われている神経経済学についても、経済学に対する重要な貢献と言えるかどうかは怪しい、という見方をする学者は多いです。最先端の研究状況を見る限りは、重要/本質的な発見がこの数年はあまり見られていないのかもしれません。あるいは、世間で盛り上がりを見せるこれらの分野に対して、一定の距離を置いて冷静に見つめ直すべき、というプログラム委員会の強い意思表示である可能性もあるのではないかと思います(勝手な推測ですが、プログラム委員にDekelが入っているので、後者の可能性は高いかも)。

いずれにせよ、今年の世界大会も非常に注目度が高いように思います。上海は日本からも近いので、プロの経済学者だけではなく、大学院生の方々もぜひ参加してみてはいかがでしょうか?
ちなみに投稿論文の締め切りはもうすぐ=1月30日2月8日ですので、ご注意下さい!

論文の提出期限が延期されました!
Dear Member of the Econometric Society,

In light of the time-consuming activities of the job market season and requests for delays the deadline for submissions for the 2010 ES World Congress is extended to Monday February 8, 2010.
Sincerely,

The Program Chairs: Daron Acemoglu, Manuel Arellano, Eddie Dekel

数学の最前線

昨年の後半に斜め読みした『数学最前線をになう挑戦者たち―難問の解決、ゲーム理論の展開 (数学を切りひらいた人びと) 』にて、何名かゲーム理論に関係する数学者が取り上げられていたので少しご紹介したいと思います。



本書の内容は以下の通りです。(「はじめに」より抜粋)

「数学を切りひらいた人びと」シリーズの第5巻となるこの本では、二〇世紀後半の十人の数学者を取り上げて紹介する。

二〇世紀後半の間には、アメリカが国際数学界の中で頭角を現した。ニュージャージー州プリンストンの高等研究所が傑出した研究の中心地となり、世界中から一流の数学者を数多く集め、長期の共同研究をしている。アメリカの大学やニュージャージー州のベル研究所のような企業の研究所に強力な研究者グループができ、そこに世界中から優れた学者が集まり、才能ある若手の成長が育まれている。ここで紹介される十人のうち、アメリカ生まれは三人だけだが、八人は、仕事に就いてからの時期の大半をアメリカの研究機関で過ごしている。


続けて、本書で紹介される数学者の顔ぶれ(の一部)を「はじめに」から引用。ちなみに、以下の“協調”(“非協調”)は“協力”(“非協力”)の誤訳だと思われます。

二〇世紀の数学者は、純粋数学と応用数学の両面で重要な発見をした。ジョン・H・コンウェイは、有限群すべての分類を完成し、ライフゲームというプロブラムを考案し、戦略ゲームについて広範な解析を行った。J・アーネスト・ウィルキンス・ジュニアは、原子核反応で生じるガンマ線の影響から身を守る放射線遮蔽のための技術を開発した。スティーヴン・ホーキングは、ブラックホールなど、数理物理学の先進的な理論の数学的基礎を確立した。ジョン・ナッシュは、協調と非協調のゲームについてナッシュ均衡を考え、ノーベル経済学賞を受賞した。


ザ・ゲーム理論家こと我らがナッシュ大先生に関しては、以下の面白いストーリーが披露されていました。エコノメトリカ編集者の改訂要求を断るほど、バットやボールに思い入れがあったのでしょうか?青年ナッシュ、かわいいですね^^ぜひこのエピソードは映画『ビィーティフル・マインド』にも挿入して欲しかったです(笑)

一九五〇年の末、「交渉問題」と題したナッシュの論文が、『エコノメトリカ』という数理経済学の雑誌で発表された。この論文では、一定の脅威がある二人協調ゲームについて、ナッシュ交渉解という解の概念が導入された。二人の参加者が、前もって、互いの利益になるような行動の流れをとること、そこからはずれた行動に対しては特定の罰を受けることを了解しあっているゲームについて、ナッシュ交渉解は、どちらのプレーヤーにも満足ができる問題の解決をもたらした。ナッシュはこの論文の基本的なアイデアのいくつかを、カーネギー工科大学の学部生のとき経済学の授業に出ていて考えていたが、プリンストンに来てから、一九四九年の春学期に、もっと精密な問題の扱い方を明らかにした。四つの公理、つまりどの解も満たさなければならない基本前提を立てることで、プレーヤーにとっていろいろある結果の集合を最大値にする一個の解が存在することを証明した。この論文を掲載した『エコノメトリカ』誌の編集者たちは、バット、ボール、玩具、ナイフについて二人の子どもが交渉するという例を、もっと大人向けの状況に変えるよう説得したが、結局それはできなかった。
太字はyyasudaによる)


最後に、最近購入した/購入を検討している数学の名著を5冊ほどリストアップさせて頂きます。いずれも、元理系出身でいらっしゃる横浜国立大学の宇井教授からご推薦頂きました。宇井さん、どうもありがとうございました! 続きを読む

Twitterで語る専門書出版の未来

昨晩、いつもお世話になっている有斐閣編集者の尾崎さんと、twitter上で専門書出版のあり方について語る機会がありました。専門書/テキストの無料公開に始まり、電子書籍の普及や出版業界の将来の方向性などについて、非常にインフォーマルな形で議論させて頂きました。
以下、本ブログでは初の試みとなりますが、その時のやりとりの様子を(発言順序等に若干の修正を加えて)ご紹介したいと思います。元々偶発的にスタートした意見交換ですので、ブログ記事を意識して練られてものでは全くありません。そのため不十分な点が目立つかと思いますが、twitterログを利用した新たな情報発信への挑戦ということで、大目に見て頂けると幸甚です。
続きを読む
Daily Comments
少しご報告が遅れてしまいましたが、今週号の『日経ビジネス』(2月8日号)の気鋭の論点というコーナーに「通貨危機の経済学―ゲーム理論がソロス制す」というタイトルの拙稿が掲載されました。ゲーム理論の新しい分析ツールであるグローバル・ゲームを用いて通貨危機(通貨アタック)について解説しています。関心のある方はぜひご覧頂ければ幸いです。気鋭の論点は、新進気鋭の若手経済学研究者が週替わりで刺激的な記事を寄稿しておりますので、ぜひお時間のある時にチェックしてみて下さい^^
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