すでに当ブログでもご紹介しましたが(リンク),私が監訳を務めたレヴィットたちによるミクロ経済学テキストの[発展編]が出版されました。これで昨年すでに出ていた[基礎編]と合わせて,ミクロ経済学の中級レベルの内容を包括的にしっかりと学ぶことができるように!

レヴィット ミクロ経済学 発展編
スティーヴン レヴィット
東洋経済新報社
2018-01-26



レヴィット ミクロ経済学 基礎編
スティーヴン レヴィット
東洋経済新報社
2017-04-21



さて,中級レベルのミクロ経済学のテキストと言えば,神取道宏氏(ちなみに私の学部時代の恩師です)による『ミクロ経済学の力』も非常に定評が高い名著として知られています。両者の違いが気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ミクロ経済学の力
神取 道宏
日本評論社
2014-09-25



というわけで,代表的なミクロ経済学テキストであるこの2冊の特徴を,ざっくりと比較してみました。

<神取ミクロ>→深イイ本!
【前提】ある程度の数学的素養(論理の飛躍を自制する我慢強さ)が必要。
【効能】ミクロ経済理論の全体像が徹底的に掴める。
【ターゲット】旧帝大クラスもしくは研究者志望の学部生。大学院コアミクロの副読本。経済関連省庁・中央銀行の役人。経済理論のディープなファン。

<レヴィット>→広イイ本!
【前提】ほぼ何も必要無し。ただ、あまりに数式やグラフにアレルギーがある人はNGかも。
【効能】ミクロ経済理論の主要なツールと、多くの応用研究や通じた分野の広がりが掴める。
【ターゲット】すべての経済学部生。ビジネススクールの学生。入門レベルの「面白い話」を超えて、ミクロ経済学を「使えるツール」として修得したい読者。


神取本とレヴィット本の違いをざっくり表現すると

・ディープな神取 vs ワイドなレヴィット

と言えるように思います。神取本は,東京大学での必修講義「ミクロ経済学」がもとになっていて,理論的に非常に深く,厳密かつディープな内容が,信じられないほど分かりやすくまとめられています。この点では,世界的に見ても間違いなくベストの一冊でしょう。ただ,偏微分や選好関係をバリバリ使った市場の性質の導出などは,ついて行くことが難しい読者も少なくないかもしれません。

一方のレヴィット本は,数学や論理的思考に自信がない,経済学に苦手意識を感じているような読者でも,上述した特徴などによって,独学で読み進めることができる工夫がされています。扱っているトピック,対象になり得る読者層,どちらも幅広くワイドなのがレヴィット本の特徴と言えます。

まとめると,やや読者を選びはするものの,一切手を抜かずに理論を深く学ぶことができるのが神取ミクロ。それに対して,間口が広くとても読みやすいけれど,細部で少しいい加減(というか,あえて厳密な説明をしていない)な箇所もあるレヴィットと,という感じです。ぜひテキスト選びの参考にして頂けると嬉しいです。


もう一冊の深イイ本
神取本とは少し違う特徴を持ったディープな学部向けテキストとして,林貴志氏の名著も挙げさせて頂きます。こちらはややクセが強いので,神取本以上に読者を選ぶ気がしますが,大学院志望(特に理論研究志望)の学部生にはとってもオススメです^^
ミクロ経済学[増補版]
林 貴志
ミネルヴァ書房
2013-09-20



オマケ
ミクロ経済学も,中級レベルになってくるとある程度高度な数学を使うことは避けられません。レヴィット本では,数学が苦手な読者でも理解できるような工夫がされていますが,それでも
・数学に関して他に副読本などの助けを借りたい
・むしろ,さらに経済数学を進んで勉強したい
といった声もあるでしょう。そういった方に激しくおススメなのが『経済学で出る数学』です!

私自身が編著を担当しているので,思いっきり我田引水になってしまい恐縮ですが,扱っている内容のクオリティとコストパフォーマンスには自信があります。ぜひ書店などで見かけましたら手に取ってみてください^^