2010年03月27日

トリプルアクセルと春闘

浅田さんが3回転半もするトリプルアクセルを決めたのに,どうして1位じゃないんだ!という話題も風化しましたね.
あのミスがあれば1位じゃないのは当然ですが,得点差については違和感が拭えないのもまた確かなお話で.

しかし,ルールはルール.

ルールが設定されている以上,その中で最適解を探すのは当然のことでしょう.今のフィギュアのルールは「挑戦よりも無難」を推奨しているということですよね.

ルールは,その集団のあるべき姿を示唆しているとも考えられます.

例えば任期制という大学教員のルールは,
「大学教員は,期限内に成果を出すべき」
「大学教員は,特定の機関に所属するのではなく,人材が流動的に交流するべき」
という姿を求めてのことだと思います.
(実際にそのように機能するかどうかはまた別件としておきましょう)

すると,毎年春先に話題になるルールと相反していることがわかります.

春闘でベアを勝ち取る的な話です.
通称ベア,省略しなければベースアップ.
毎年毎年,お給料がちょっとずつ上がっていくアレです.

このルールは,
「うちの会社に長いこといると得だよ」
「他の会社にはいかないでね」
という終身雇用の考えに基づいたものです.

この制度がないと短期雇用と変わらないじゃないか!
正社員として,ベアがあるのは当然だ!
というのが組合の主張なわけで,大学の職員さんに適用されるのはまあわからなくもありません.
(本当は,年数だけ重ねて給料が増えるってのはどうなん?と思わなくはないですが)

ベアと任期制,明らかに矛盾してませんかね?
いったい,このルールは,どういう態度を求めるんでしょうか?

現行のフィギュアのルールは,難易度の高い技に挑戦せず,できる技で無難におさめることを期待しています.
任期制のルールは,短期的に業績をあげ,大学教員が新陳代謝することを期待しているのだと思います.
ベアは,同じ職場に長くいることを期待しています.

短期的に業績をあげつつも,同じ大学に残ることを期待している,ということなんでしょうか??
おそらく,違うでしょうね.
慣例のまま,ベアは残しつつ,任期制を導入したんじゃないかと.

で,提案なんですが,生殺与奪を移譲する任期制の導入の前に,まず,大学教員のベアをやめてみませんかね?
誰に提案してるんだよ?と言われると困っちゃうんですが(苦笑)

任期制は,恣意的な運用によって,様々な問題があることは,以前から指摘していますし,そんな事例も実際にちょいちょい出てきています.

大学教員は,どんどん業績をあげ,職場をうつって人材交流をし,ステップアップしていくべきだ!と考えているのであれば,まずはぬるま湯のようなベアをなくしていいと思うのです.

大学経営に参画しその大学からは出て行ってほしくないと思える教授陣を選んでいるという建前で,教授にはベアをおこなっていいとは思います.
しかし,それより下のステップアップするべき研究者たちは,いるだけで給料があがる制度など不要なはずです.

任期制ですと,短期で結果の出る仕事をしなければいけないというデメリットがありますが,ベアなしなら貧乏生活が続くというだけの話です.自分が望む研究にうちこむことも可能です.

大学経営陣にとっても,教員のベアがなければ結構な経費削減になるのではないかと思います.

非人道的な運用を許す隙のある任期制をする前に,まずは大学教員のベア廃止があってしかるべきだと思うのですが,大学教員のベアが話題になっている場面を見たことがありません.

今,フィギュアがかっこよく進化するのは,ルールに逆らっても挑戦する気概のある方々あってのことです.ルールがこのままであれば,進化が止まってしまう可能性も否定できません.

大学教員の任期制も,研究がしたいから,どんなルールでも関係ないぜ!という研究者の気概でクリアされてしまっているような気がします.しかし,ルールによる沈滞や,短期的な仕事へのシフトの可能性は,同様に否定できないと思われます.

大学も,文部科学省が言われた通りにルールをつくる姿勢をあらためて,どうしたいのか,どうなってほしいのかを考えてルールをつくったらどうかなと思いました.

え?
そんなこと言っても,お前の大学だってベアはあるんだろって?
お前ものうのうとその恩恵にあずかっているんだろって?

まあ,今のところは.

理事長さんと任期制について話し合う機会があったので,このアイデアは提案しておきました.もし採用されたら,フラスコのいる大学はあそこだったのか!と特定しちゃってください.

banner←久しぶりに大学教育っぽい

でも,やや風化してるなぁ.
がんばれ,のぶなり.

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この記事へのコメント
ベアと定昇のちがいくらい押さえてから書いた方がいいんじゃないですかね。
Posted by 通りすがりですが・・・ at 2010年03月27日 03:21
ついでに退職金についても任期制導入時に精算させるべき点ですね.任期制導入以降の採用者は,大学を移るたびにリセットされるので,経済的に損をします.
人材流動化をはたすために,公募選抜人事で採用された教員が,業績もなく古くから在籍している教員を経済的にサポートするシステムには,不公平感が強まります.
Posted by 任期制講師 at 2010年03月27日 09:04
任期制の本場(?)で勤めてましたが、任期が終わって次の任期に切り替わる時は昇給のチャンスです。一年任期というのは毎年昇級のチャンスが廻って来るということ、三年任期は三年ごとに昇給のチャンスが廻って来るということ、なんですが、日本の似非任期制には、そういう制度設計がないようですね。
Posted by alchemist at 2010年03月27日 14:04
>通りすがりですがさん
ほんとだ、ごっちゃにしてますね。
エントリの意図に変更はありませんが、ご指摘感謝です。

>任期制講師さん
そうですね。
勤続年数でカウントされますから、退職金制度も、どっかで一本化されるとか、その分を上乗せするとかしてもらわないとやってられませんね。

>alchemistさん
他の職業でも、任期があれば、契約更改で昇給チャンスってのは当たり前なんですけどね。日本の似非任期制には、あるべき姿がないことがよくわかります。
Posted by フラスコ at 2010年03月27日 15:05
ベアと定期昇給は別物ですね。

能力や業績で給与査定するのは評価が容易な分野ならいいんでしょうけど、大学でやる場合には評価する側の能力を問うことや権限を持つ人に責任を取らせたりすることの方が先決でしょう。そうでもしないと能力主義や成果主義は逆選択とレントシーキングの温床以外のなにものでもありません。

教育と研究以外で一日8時間ほどかかるなんて理事や教授がアホな場合には現実的ですし、「研究成果」をマイナス評価する習慣もほぼありませんし、査読プロセスが機能していない学会誌なんてザラだし、違法行為や客(学生)への背信行為に異論をとなえたために嫌がらせを受けることもあるでしょうし。
Posted by 西の年齢不詳 at 2010年03月27日 15:18
全然見当違いのコメントを付けさせて頂きますが、フィギュアスケートと春闘(実質任期制の問題点への指摘)を比喩対象としてつかうことに整合性はありますかね・・・導入としては確かに面白いのですが、途中でも比喩に使うことで、却ってそういうたとえで良いの?と思っちゃいます。

というのは、以前も大学教員の在り方をプロ野球選手の在り方と比較して例えていたことがあって、どうしても後者に引き寄せられてしまって、大学の教員制度の本質的課題を突こうとしているのに、本来的に異なるもので例えることによって厚みを得るどころか、例える側の問題点を疑問視することで、本質側の問題点も疑問視されてしまう、というミスリードになっているような気がしてなりません。

なぁんて、余計なことは置いといて。非常勤にしろ、任期制にしろ、弱いものが声を上げられないという状況がどこかにあるのではないかと思います。(フィギュアでの気概のたとえが、結局はルールやシステムの中で、飲み込まれて仕舞えば元の木阿弥になるように)丁寧な議論を、非常勤や任期制を被っている側が、単に甘受するだけではない、横の繋がりと、縦へと出る杭を、同時に生み出して行かなければなりませんね。

曖昧な物言いなのは、これが正解というコンセンサスをまず求めるのではなく、それを求めるベクトルがまず欠けているということを認識しなければならない、と思ったからです。そういった意味では、このエントリは刺激を受けました。
Posted by R at 2010年03月30日 05:06
フィギュアとベースアップの例えが面白かったです。
昨今の能力主義は経営者からしたら魅力的だけど、
社会全体から見ると失業者の増加といった問題も招くことになり、
終身雇用にはそれなりのメリットがあるという何かの話を思い出しました。
大学の終身雇用とはちょっと問題が違うかもしれませんが、
どちらがいいのか、考えさせられるお話だったと思います。
Posted by 中国語教室@東京 at 2010年04月12日 14:50
文系は、そんな愚かな提案を理事に対して行ったりしません。
理系は、自らの労働条件を切り下げられても、その意味が分からず、結果として、不安定雇用を自分達に対して適用したりします(これは驚くべきことです)。アホウです。文系は、直観的に、自分達の労働条件・生活条件が破壊されることに対して反対できます。いくら、難しい物理や化学が分かったところで、生きるための条件について無知なようでは、話にならないでしょう。理系がいつまでたってもまともな労働者意識をもてず、アホなまま変わらないなら、これからも文系に搾取されつづけ、生涯賃金でも圧倒的に差がついたままでしょう。任期制の導入とは、不安定雇用というかただの派遣社員になるということです。アルバイトといってもいいです。任期を導入すれば、優秀な人から任期のない大学に移ってゆくだけで、あとは残りかすになるだけ。3流大学は、3流学生しかおらず、残りかすの教員で十分というなら、話のつじつまは合っているかもしれませんが。
Posted by 私立大学教員 at 2010年04月19日 23:44
>西の年齢不詳さん
恣意的な査定から完全に逃れる術はないので,なんとか恣意性を薄められるような仕組みが考えられるといいですね.

>Rさん
比喩によりピントがずれてしまった,と思われる点は,おそらく議論の上で大事な点ですので,ぜひご指摘いただければと思います.

>中国語教室@東京さん
社会学の先生の話だと,これ以上の終身雇用制度は無理があるんだとかなんとか.

>私立大学教員さん
文系代表のご意見ありがとうございます.
で,文系理系という愚かな区切りで話をすすめることに意義はありましたか?
Posted by フラスコ at 2010年04月20日 17:08
大いに意義はあります。しかし、理系は、研究対象が人間ではなくモノであるため、人間達が集まって作る社会システムについて教養がない人が多いのも事実です。理系は論文生産の研究面でグローバルに競争しているから、競争を促進するためには、任期制の導入もやむを得ない、というイデオロギーにひっかかって、医学部・薬学部などは大学理事と手を組んで任期制を率先して導入したりします。医学部教員は、医師免許がありますから、任期制を導入して、研究業績がなくて契約更新されなくても痛くも痒くもないでしょう。しかし、他の分野でそのような資格はありませんし、医学系が自分達のことだけ考えて、他の分野のことを考えられないことをみれば、理系が「多数派工作」できないことがわかります。つまり、文系による多数派工作に負けて、結局、企業を含む大半の組織の中では人事権と予算を握ることができず、理系の生涯賃金は低いままなのです。稀ですが、理系でも労働者意識をもっている人はいます。任期制の本質は、不安定雇用の派遣社員になるということです。家庭をもっているフラスコ氏が、少しでもそういう危険な傾向を促進するような意見に加担していることが信じられません。理事と話す機会があるなら、「任期制なんて導入したら優秀な人からもっと条件のよい大学に教員が流出して後はカスだけ残るので、そんな愚かなことは止めた方がいいと思います」と言えばいいのです。小役人が任期制を導入した横浜市立大なんて、その最たるもので、崩壊しました。
Posted by 私立大学教員 at 2010年04月21日 00:55
「大いに意義があります」という文で,理系文系を区別することに意義があるという内容を述べ,そのあとに「理系は、研究対象が人間ではなくモノであるため、人間達が集まって作る社会システムについて教養がない人が多いのも事実です。」と理系文系の区別をすることの具体的な意味を述べていながら,その文章を「しかし」でつなぐことに違和感を感じない文章力ですと読み取っていただけなかったかもしれませんので,あらためて書いておきます.

任期制に賛成したことは,一度たりともありません.
Posted by フラスコ at 2010年04月21日 07:19
理系文系と任期制の問題関係ないでしょ。そもそも理系文系なんて枠で議論するってレベル低すぎですよ。それに「生涯賃金が低いままなのです。」という言葉で所謂『理系人間』を馬鹿にしている文章、品位に欠けます。

大学で教鞭を持つものなら、議論の仕方やマナーくらい身につけていなければならないし、
論理を欠く文章を羅列することを恥ずかしいと感じるくらいの教養は身につけてください。
Posted by 理系ですが? at 2011年09月05日 23:45